更新日: 2023.08.02 その他老後

50代で熟年離婚しても、いくら稼いでいれば、老後は「おひとりさま」でもやっていける?

50代で熟年離婚しても、いくら稼いでいれば、老後は「おひとりさま」でもやっていける?
熟年離婚をためらってしまう理由のひとつとして、その後の生活の問題が挙げられます。仮に熟年離婚をしても、その後「おひとりさま」として生活するに当たり、いくら稼いでいれば老後を安心して過ごせるのでしょうか。今回は、50代で熟年離婚を検討している女性に向けて考えてみます。
柘植輝

執筆者:柘植輝(つげ ひかる)

行政書士
 
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

まずは老後必要な生活費を知るところから

まずは一般的な統計から、最低限必要な老後の生活費について確認してみましょう。総務省の「家計調査報告」によれば、令和4年度の高齢(65歳以上)単身無職世帯の場合、1ヶ月当たりの平均支出額は15万5495円となるようです。熟年離婚をしても、老後にも16万円ほどの収入を確保できれば、ある程度安心して過ごすことができそうです。
 

老後に受け取れる年金はどれくらい?

厚生労働省の「厚生年金保険・国民年金事業の概況」によれば、令和3年度、離婚に当たり配偶者から年金分割を受けた方の平均年金受給額は8万5394円となっています。
 
年金分割とは、婚姻期間中の配偶者の年金記録を分けてもらう仕組みのことです。これまで専業主婦(夫)であった人や、婚姻中に扶養内でパートをしていた人の場合、将来の年金額が少ないことが問題視されていました。それがこの仕組みによって、受け取る年金額を増やすことができるようになります。
 
ただし、配偶者の年金の加入状況によっては、年金の額が8万円未満の金額となる可能性もあります。配偶者の年金記録は確認しておくべきでしょう。
 

財産分与について

もうひとつ考えておきたいものに、財産分与があります。財産分与とは、婚姻中に築いた財産を夫婦で離婚時に折半するものです。多くの場合、財産分与の割合は2分の1ずつとなります。対象となる財産は家や預貯金など、婚姻中に築いたとされる幅広い財産です。
 
車や家などは世帯によっては保有していないことも珍しくないため、ここでは貯金など金融資産を例に考えます。
 
令和4年度の「家計の金融行動に関する世論調査」によれば、世帯主が50代の2人以上世帯における金融資産保有額の中央値は、350万円となっています(金融資産非保有世帯も含む)。
 
単純に半分と考えると、財産分与によって175万円の財産を得ることができます。とはいえ、この点も世帯の資産や離婚理由などによって、大きく変動することが想定できます。離婚前には、資産の額の確認は必須でしょう。
 

就労での収入はどれくらい必要?

これまで確認した平均的な額の年金を65歳から受け取り、平均的な支出で生活した場合と仮定すると、年金だけで不足する生活費は、毎月7万101円となります。厚生労働省の「令和3年度簡易生命表」によれば、女性の平均寿命は令和3年時点では87.57年となっています。余裕を持たせ90歳まで生きるとすると、25年間で不足する生活費は2100万円程度となります。
 
この金額を熟年離婚から65歳で年金受給開始時期までにためられる程度稼げば、熟年離婚をしても「おひとりさま」として生活していくことができる可能性が高いでしょう。
 
仮に、55歳で離婚、節制して65歳までの10年間、高齢単身者無職世帯と同等の生活をして支出15万5495円の生活を続けるとすれば、毎月17万99円稼ぐことで、老後は「おひとりさま」でも生活していくことができるでしょう。そうすることで、毎月1万4604円の貯金をし、65歳になるころには90歳になるまでに必要な貯金を用意できるからです。
 
なお、財産分与で得た財産については、家を出る際の初期費用や、万が一の病気やけがに備えるためのお金として考え、老後の生活費としては考えない方がよいでしょう。「おひとりさま」の場合、何かあっても基本的に自分自身で全て解決していく必要があるため、ある程度の貯金があると安心できるからです。
 

熟年離婚をするなら老後の生活費までしっかり試算することが必要

熟年離婚をするのであれば、老後の生活費がどれくらいになりそうで、年金がいくら受け取れそうか、それを踏まえて、どれくらい稼ぎ、貯金をしていくことが必要なのか、十分に考える必要があります。見切り発車で熟年離婚をしてしまうと、その後「おひとりさま」としての生活が成り立たない場合もあるでしょう。
 
もし、熟年離婚を考えており、その後の生活が不安という場合、ファイナンシャルプランナーなど専門家に相談して、検討することをおすすめします。
 
※2023/8/2 内容を一部修正いたしました
 

出典

総務省 家計調査報告(家計収支編)2022年(令和4年)平均結果の概要

厚生労働省 令和3年度厚生年金保険・国民年金事業の概況

知るぽると 家計の金融行動に関する世論調査(二人以上世帯調査) 各種分類別データ(令和4年)

厚生労働省 令和3年簡易生命表を公表します

 
執筆者:柘植輝
行政書士

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