夫婦で「2000万円」を老後資金として貯めました。今後の余剰資金は趣味などで「ぜいたく」して大丈夫でしょうか?
配信日: 2023.08.02 更新日: 2023.08.08
本記事では、一般的な老後の収支を参考に、老人ホームの利用も含めてシミュレーションしながら、必要な老後資金を解説します。将来の収支をしっかりイメージすることにより、今を楽しむお金の使い方を考えてください。
執筆者:入船みみ(いりふね みみ)
FP2級
老後の年金収入は毎月どれくらい?
厚生労働省による令和3年度の調査によると、「夫婦2人、会社員と専業主婦(夫)世帯」の場合、平均的な年金受給額は月約20万円です。
なお、自身の年金額は、厚生労働省が提供する「公的年金シミュレーター」を使って簡単に試算できるので、平均より多いのか少ないのか比較のために一度計算してみると良いでしょう。
老後の支出を把握する
次に、老後の支出を確認します。今の暮らしの延長線上であれば、毎月どれくらいの支出になるかイメージがつきやすいですが、老人ホームに入居した場合はどうでしょうか。統計から分かる65歳以上の平均支出のほか、老人ホームに入居した場合の支出も確認してみましょう。
65歳以上の平均支出はどれくらい?
総務省の家計調査(2022年)によると、「65歳以上、2人以上の世帯」の月平均支出は約25万円です。現在の支出と比べていかがでしょうか。毎月の支出は50代をピークに年代が上がるにつれ減少する傾向にあります。
今の生活水準で毎月どれくらいの支出が想定されるか、把握しておくことをおすすめします。
老人ホームに入居した場合の支出はどれくらい?
一方で、老人ホームに入居した場合については、現時点で具体的支出を描きにくいのではないでしょうか。施設の種類により大きく変わりますが、平均的な月の総額費用は以下のとおりです。
●介護付き有料老人ホーム
平均約25万円
●特別養護老人ホーム(要介護5の場合)
平均約10万~14万円
特別養護老人ホームに夫婦で入居した場合であれば、「65歳以上、2人以上の世帯」の支出約25万円と大きな違いはありません。しかし、介護付き有料老人ホームは2倍の費用が必要です。介護付き有料老人ホームへの入居を考えるのであれば、貯蓄面での備えが重要であることが分かります。
老後資金の具体的なシミュレーション
老後の年金収入と想定される支出から、年金で不足する金額をシミュレーションします。夫婦2人世帯の平均支出をベースに、65歳で定年を迎え、86歳から老人ホームに入り、90歳まで生きるケースで考えてみましょう。
平均支出の場合および85歳から特別養護老人ホームの場合
月の収支:年金収入20万円-支出25万円=マイナス5万円
不足額:5万円×12ヶ月×26年=1560万円
※特別養護老人ホームの費用も2人で月25万円として試算
平均的な収入・支出の場合、2000万円の貯蓄があれば特別支出も含めてじゅうぶん足りることが分かります。ただし、特別養護老人ホームは入居希望者が多く、希望したタイミングで夫婦同時に入ることはかなり難しいといわれています。別の施設を利用することも想定しておくと安心です。
86歳から介護付き有料老人ホームを利用した場合
月の収支(65歳から85歳):年金収入20万円-支出25万円=マイナス5万円
月の収支(86歳から90歳):年金収入20万円-支出50万円=マイナス30万円
不足額:5万円×12ヶ月×21年+30万円×12ヶ月×5年=3060万円
老人ホームの種類が変わることで、必要額が約2倍に跳ね上がりました。2000万円の貯蓄では不足してしまうため、さらに1000万円の準備が必要です。
老後収支を想定して、今このときの充実を
年金の収入や老後の毎月の支出、老人ホームの選択の3点を具体的に想定することで、老後のために準備しておく資金が明確になります。自らが考える老後の生活を実現できる金額を定め、それを超える余剰資金については、今このときを楽しむための趣味や旅行に使ってよいでしょう。
反対に、年を重ねてから生活レベルを少し下げることを前提に、体力のある現在にお金を使う選択肢もあります。退職後のありたい生活を考えることからスタートしてみましょう。
出典
厚生労働省年金局 令和3年度厚生年金保険・国民年金事業の概況
総務省統計局 家計調査報告[家計収支編]2022年(令和4年)平均結果の概要
※2023/8/8 記事を一部修正いたしました。
執筆者:入船みみ
FP2級