更新日: 2023.08.03 その他老後
増える「老後おひとりさま」人口。年金は月に15万程度あれば足りる?
65歳以上人口に占める単身者の割合は、2040年には約4人に1人になると推計されていますが、おひとりさまとして老後を生きる場合、老齢年金の平均的な受給額である月15万円程度で生活費は足りるのか、また不足する場合の対応について確認していきます。
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
◆お問い合わせはこちら
https://www.secure-cloud.jp/sf/1611279407LKVRaLQD/
2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
目次
おひとりさまでも月15万円の年金のみでは生活が苦しい
2022年(令和4年)の家計調査報告によれば、65歳以上の単身無職世帯における1ヶ月の平均的な消費支出は14万3139円となっています。加えて非消費支出は1万2356円で、合計すると15万5495円です。
図表
出典:総務省統計局 「家計調査報告(家計収支編) 2022年(令和4年)平均結果の概要」
上記はあくまで平均的な支出を合計した金額であり、消費支出については個人のライフスタイルや居住地などによっても差があると考えられます。
とはいえ、2021年度(令和3年度)末時点での老齢年金の平均額は厚生年金受給者で月額約15万円となっているので、その点を考えると年金のみで余裕がある生活を送ることは難しく、老後も就労するなどして年金以外の収入を確保したり、現役時代に準備した老後資金を切り崩したりして対応することが必要になるでしょう。
年金に加えて必要な老後資金はどれくらい?
統計による65歳以上の単身無職世帯での平均的な支出の合計は月約15万5000円ですが、ここでは老後の最低限の生活費として月16万円、受け取れる年金については前述した厚生年金受給者の平均額から月15万円と仮定します。
年金だけで生活費を賄う場合、毎月1万円が不足することになり、年間の不足額は12万円です。65歳から年金を受け取り、老後を85歳までの20年間と考えた場合、生活費の不足分は総額で240万円、仮に老後を90歳までの25年間とした場合は300万円となります。
老後の収入が月15万円の年金のみであれば、最低限の生活費でも不足が発生することに なるので、それをカバーするための老後資金として少なくとも300万円程度は用意しておきたいところです。
老後の生活が不安なら就労や年金の繰下げ受給も視野に入れる
人によっては65歳までに必要な老後資金の確保が難しいこともあるでしょう。また、おひとりさまとして、老後はある程度のゆとりをもって生活したいと考える方もいるはずです。そういった場合には老後の就労のほか、年金の繰下げ受給を視野に入れる必要もあります。
例えば、時給1000円のパートで1日4時間、週3日働くことで月4万8000円の収入を得られ、15万円の年金と合わせて1ヶ月の収入は約20万円となります。就労によって年金だけで生活する場合の不足分を補てんできるほか、老後のライフスタイルの幅が広がる可能性もあるでしょう。
また、年金の繰下げ受給は、原則の受給開始年齢である65歳から最長75歳までの間で受給する時期を1ヶ月繰り下げることに、受け取れる年金が0.7%増額するというものです。
例えば65歳から70歳までの5年間働き、その期間は年金の受給を繰下げることで年金額は42%増加し、仮に65歳から受け取れる年金が月15万円の場合は21万3000円に増額となります。
受給を繰り下げた時期までは会社員やフルタイムなどの就業形態で働く必要もありますが、受け取れる年金が増額されることで、受給開始後は年金収入だけでもある程度は余裕をもって生活ができるようになるでしょう。
老後の生活費は余裕をもった金額で考えておくべき
65歳以上の単身世帯での平均的な支出からは、月15万円程度の年金収入だけでは老後の生活費が不足することが考えられます。
ただし、具体的な金額は個人のライフスタイルなどによっても異なるため、老後の生活費は余裕をもって考え、将来受け取れる年金額の目安から必要な老後資金を試算した上で、老後の就労や年金の繰下げ受給についても検討することをおすすめします。
出典
内閣府 高齢社会白書
総務省統計局 家計調査報告(家計収支編) 2022年(令和4年)平均結果の概要
厚生労働省 令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況
執筆者:柘植輝
行政書士