【公的介護保険】払った介護費用を取り戻せるって本当?
配信日: 2023.08.07
この負担を軽減する制度として、高額サービス費があります。
執筆者:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。
ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
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高額介護サービス費とは
高額介護サービス費とは、公的介護保険の1ヶ月間の自己負担額の合計が所得に応じた上限額を超えた場合に、その超過額について払い戻しを受けられる制度です。
所得に応じた上限額は、世帯や個人の所得によって段階が分かれています。所得が一定以下の世帯は上限額も低く設定されています。現役並みの所得がある人がいる世帯の自己負担の上限額は4万4400円~14万100円、住民税非課税世帯の自己負担の上限額は1万5000円~2万4600円となっています。
たとえば、夫婦で介護サービスを支給限度額の範囲内で利用しているケース(1割負担)で確認してみましょう。
夫は要介護2で自己負担額1万9000円、妻は要介護1で自己負担額が1万6000円とします。世帯合計では3万5000円です。夫も妻も住民税非課税とすると、1ヶ月あたりの自己負担の限度額は2万4600円ですので、上限額を超える1万400円が申請により払い戻されることになります。
留意点
高額介護サービス費の対象となるのは、介護費の1~3割の自己負担額の範囲内です。公的介護保険はサービスメニューや支給限度額の制限があります。サービスメニューにないサービスを利用した場合や、支給限度額を超えて利用した場合の超過分は対象外です。
また、福祉用具購入費や住宅改修費、施設サービス等の居住費(滞在費)、食費や日常生活費、個室代等も、高額介護サービス費の支給対象とはなりません。
申請方法
高額介護(介護予防)サービス費の対象となる方には、サービス利用月からおおむね2~3ヶ月後に市区町村から通知がありますので、申請書に記入して役所に忘れずに返送してください。
後日、指定した口座に上限額を超えた分が振り込まれます。なお、1回申請すれば次回からは自動的に振り込まれます。
申請期間は、介護サービスを利用した月の翌月1日から起算して2年ですので留意しましょう。
医療費控除と高額介護サービス費
訪問看護など医療系のサービス、医療系サービスと併用する場合のみ対象となる訪問介護などの福祉系サービスや施設サービスの対価の自己負担額は、医療費控除の対象です。
特別養護老人ホームの施設サービスの対価(介護費、食費および居住費)に関わる自己負担額として支払った金額の2分の1に相当する金額が医療費控除の対象です。
それ以外の介護保険施設は、施設サービスの対価(介護費、食費および居住費)に関わる自己負担額として支払った金額が医療費控除の対象となります。
高額介護サービス費を払戻しした際は、医療費から高額介護サービス費を引いたうえで、医療費控除の金額を算出します。
なお、特別養護老人ホームの施設サービス費において、自己負担額に対する高額介護サービス費は、その金額の2分の1に相当する額を医療費から引いたうえで、医療費控除の金額を算出します。
以上のことに留意して、ご自身のケースについては自治体等に確認しましょう。
出典
東京都福祉保健局 介護保険制度パンフレット
国税庁 介護保険サービスの対価に係る医療費控除に関する研修資料について
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー。