「おひとりさま」が老後に必要な資金は、1人だから1000万円で足りる?本当に必要な額とは?
配信日: 2023.08.07
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
目次
統計上、おひとりさまの老後資金は1000万円では不足する可能性が高い
総務省の「家計調査報告」によれば、令和4年、65歳以上の単身無職世帯における平均的な1ヶ月の支出額は15万5495円です。年間では、186万5940円となります。
また、厚生労働省の「令和3年簡易生命表」によれば、平均寿命は男性で81.47年、女性は87.57年となっています。今後平均寿命がさらに延びる可能性も考慮し、仮に90歳まで生きると仮定すると、25年間で必要な額は4664万8500円と莫大になります。
とはいえそれら全部を老後資金で賄う必要はなく、実際に必要な額は、年金など社会保障による給付も考慮すると、より小さくなります。65歳以上の単身無職世帯が受け取る1ヶ月の平均的な社会保障給付は、12万1496円となっています。
先の支出額を基に計算すると、1ヶ月で不足する額は3万3999円です。この不足額は年間で40万7988円、25年間では1019万9700円となります。
あくまでも統計上のシミュレーションではありますが、おひとりさまの老後資金は、年金による給付を考慮しても、1000万円では不足する可能性が高そうです。
自分自身に必要な額はどう算出すればいい?
おひとりさまの老後資金は、統計上は「1000万円では不足する」と想定されますが、個別の事情によってはもっと少なくて済むことや、逆にもっと多く必要ということもあるでしょう。
例えば、支出額は同じでも、社会保障給付を老齢基礎年金しか受けられず月額6万円しか収入を得られないという場合、65歳からの25年間で不足する老後資金は、2864万8500円と、3000万円近い莫大な額になります。
そのため、自分にとって本当に必要な老後資金の額は、自分のライフスタイルに当てはめて考えていく必要があります。具体的な方法としては、下記の手順で、自分にとって必要になるであろう老後資金の額を算出します。
・老後のライフスタイルを考える
・それを実現するには1ヶ月にどれくらいの支出が生じるか考える
・年金を何歳から受け取り、その他の収入がいくらかも踏まえ、月々どれくらいの収入が見込めるか考える
・月々不足する生活費について算出する
・何歳まで生きるのか仮定する
・不足する支出額と生きる年数から算出した、最終的に不足する額の合計が、老後に必要な資産額となる
老後資金に関しては上記を参考にし、具体的に考えていきましょう。まず老後のライフスタイルですが、統計よりやや余裕を持つと仮定しましょう。毎月、統計よりややゆとりをもって生活するために、1ヶ月に20万円のお金が必要とします。
自身の年金収入について、老齢基礎年金と老齢厚生年金を合わせて月額10万円が見込める場合、月の不足額は10万円となります。90歳まで生きるには、65歳からの25年間で3000万円が不足する、といった具合です。
必要な額の老後資金をためられそうにない場合は?
必要な額の老後資金をためるのが難しい場合は、繰下げ受給によって年金の受け取り時期を65歳より遅くし、その間働くという方法も有効です。年金は受け取り時期を65歳よりも遅くすると、1ヶ月遅くするごとに0.7%増額された年金を受け取れます。
また、繰下げ受給は最大75歳まで行うことができます。この場合、84%増額された年金を受け取れます。75歳までは就労して貯金をしつつ、繰下げ受給によって年金額を増やすことができれば、老後のために大きな額のお金を確保することも不可能ではないでしょう。
おひとりさまにおける老後資金は必ず試算を!
おひとりさまの老後資金は1000万円で足りるとは限りません。老後に重きを置きたいおひとりさまは、できる限り統計などを基に自身の状況に置き換え、必要な老後資金についてある程度予測し、計画的に準備していくことをおすすめします。
「おひとりさまだから生活費も安く済む」と考えていると、案外生活費が高く、老後資金が不足する、ということも起こってしまうかもしれません。
出典
総務省 家計調査報告(家計収支編)2022年(令和4年)平均結果の概要
厚生労働省 令和3年簡易生命表 主な年齢の平均余命
執筆者:柘植輝
行政書士