更新日: 2023.08.22 セカンドライフ

老後、「月12万円」の年金だけでは暮らせません。貯蓄も「700万円」しかないため、一生働くべきでしょうか?

執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部

老後、「月12万円」の年金だけでは暮らせません。貯蓄も「700万円」しかないため、一生働くべきでしょうか?
年金だけで老後の生活を送りたいと思っていても、実際には難しいケースは少なくありません。不足分は貯蓄でまかなうのが一般的ですが、不足金額によっては収入がなければ生活が困難になってしまうため、一生働き続けなければならない人もいるかもしれません。
 
そこで本記事では、年金が月12万円で貯蓄が700万円の人を例に挙げ、老後の経済的な事情や対策について紹介します。
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65歳以上単身世帯の平均支出はどれくらい?

年金だけで暮らせるのか判断したいなら、老後の支出について予想しなければなりません。そこで役に立つのが、総務省が公表している家計調査です。令和4年版の65歳以上の単身無職世帯の平均支出に関するデータを見ると、消費支出は14万3139円で、最も金額が大きいのは3万7485円の食費です。住居費は1万2746円となっているため、賃貸住宅に住む場合にはもっと上がります。
 
例えば共益費込みで月々の家賃が6万5000円のアパートで暮らしていると、さきほどの住居費より5万2254円も高くなり、トータルの消費支出は19万5393円で、平均の約1.4倍という状況になります。
 
さらに、非消費支出が加わることも忘れてはいけません。これは社会保険料や各種税金に関する出費で、平均の金額は1万2356円です。前述のアパート暮らしの場合、消費支出と合算すると20万7749円になるため、少なくとも月20万円程度の出費を見込んでおく必要があります。
 

年金だけで生活できるのか?

次に、老後に受け取る年金だけで、支出をカバーできるのか検討しましょう。前述の計算に基づき、月20万円程度の出費が生じるケースを想定します。年金が月12万円ほどの場合、1ヶ月ごとに約8万円の赤字が発生し、1年に換算すると100万円に近い金額が不足してしまいます。
 
その対策の一つとして考えられるのが、貯蓄を切り崩して補う方法です。700万円の貯蓄があるなら、年金以外の収入がない場合でも、7年間は赤字分を貯金で補填しながら生活することができるでしょう。
 
しかし厚生労働省が発表した令和4年の簡易生命表によると、平均寿命は男性約81歳、女性約87歳で、年金を受け取る65歳から7年間が過ぎて貯金が底を尽きれば生活が立ちいかなくなってしまいます。仮に平均寿命まで生きる場合に必要な貯蓄の金額は、男性が65歳から81歳までの16年間×年100万円で1600万円、女性が65歳から87歳までの22年間×年100万円で2200万円です。
 

労働や年金の繰下げ受給による対策

前述の状況で貯蓄が700万円しかない場合、働いて収入を得ることも考えなければなりません。平均寿命まで生きると仮定すると、男性は必要な1600万円のうち700万円の貯蓄分を差し引いた900万円、女性は2200万円からの差額である1500万円の収入が必要です。
 
それを65歳から平均寿命までの年数で割ると、男性は約56万円、女性は約68万円なので、それぞれ月に4万7000円と5万7000円ほどの稼ぎが求められます。
 
ただし、これはあくまでも亡くなるまで働くという想定の計算です。月々の収入を増やして前倒しで900万円と1500万円を得て生活設計に不安がなくなれば、それ以降は仕事のリタイアも考えられます。
 
また、年金の繰下げ受給を申請するという方法もあります。これは受給のタイミングを遅らせることで年金を増せる制度です。定年後も70歳くらいまで働いて、退職後に受給を開始すれば生活にゆとりが生まれやすくなります。70歳まで遅らせた場合、受給額がアップする割合は42%です。
 
本来の年金が12万円なら17万400円に上がり、年間の受給額は約60万円増の204万4800円になります。平均寿命まで生きると、男性は11年間、女性は17年間の受給が可能で、受給総額はそれぞれ約2244万円と約3468万円となります。
 

不足分の予想と効果的な対策が必要!

年金だけで生活できそうにないなら、不足分を補う手段について検討が不可欠です。まずは将来の支出を予想したうえで、どれだけの赤字になるのか計算する必要があります。もし貯蓄でカバーしきれないのなら、働いて収入を得ることや年金の繰下げ受給も視野に入ってくるかもしれません。いずれにせよ老後を迎えてから慌てないように、できるだけ早い段階で対策を講じておきましょう。
 

出典

総務省統計局 家計調査年報(家計収支編)2022年(令和4年)結果の概要
厚生労働省 令和4年簡易生命表の概況
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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