更新日: 2023.08.26 介護

有料老人ホームへの入居は現場を見て決めるのが鉄則! 後悔しない確認ポイントは?

有料老人ホームへの入居は現場を見て決めるのが鉄則! 後悔しない確認ポイントは?
高齢になると体の衰えや認知症の発症など、健康に対する不安材料が増えてきます。特に家族の介護を受けられない方は、より真剣に考える必要があります。もし比較的費用の安い公営の特別養護老人ホームに入居できない場合は、民間の有料老人ホームが選択肢となります。その際、どのような点に注意したらよいでしょうか。
黒木達也

執筆者:黒木達也(くろき たつや)

経済ジャーナリスト

大手新聞社出版局勤務を経て現職。

中嶋正廣

監修:中嶋正廣(なかじま まさひろ)

行政書士、社会保険労務士、宅地建物取引士、資格保有者。

長野県松本市在住。

拙速で選ぶと後悔することも

有料老人ホームへの入居を考える際に、事情が切迫して十分に検討しないまま入居してしまう方もいらっしゃるでしょう。急な骨折などで自立した生活ができなくなる、これまで介護をしていた家族が病気になる、配偶者が亡くなり一人で生活できない、などの事情となると詳しく調べずに、とにかく入居可能な施設を急いで選ぶことになります。
 
公営の特別養護老人ホームと異なり、民間の有料老人ホームの場合は経営主体もさまざまで、入居金などの条件も施設により異なります。そのため、費用はどのくらいかかるか、経営状態は健全か、職員の配置は充足しているか、といったことを、事前に調べておくことが大切です。
 
入居を急ぐあまり、こうした点を見落としていると、入居後に後悔するかもしれません。多額の入居金を要することもあり、特に資金が足りずに自宅を売却して入居した方は、老人ホームの経営の行き詰まりによる、退去を余儀なくされる事態はぜひとも避けなければなりません。
 
そのためには、入居を希望する老人ホームの経営状態について、事前に確認することが不可欠です。老人ホームを実際に見学することで、施設の雰囲気、職員の人数は充足しているかなどは、ある程度は分かりますが、経営状態の把握は難しいかもしれません。
 
最近は人手不足が深刻なため、介護施設が倒産してしまうケースもあり注意が必要です。もし経営母体が上場企業であれば、企業業績などは容易に調べられますので、問題ある場合は、入居の見直しを考えましょう。行政の窓口など中立的な機関で、介護施設の情報提供も受けたいものです。
 

入居費用について確認する

有料老人ホームは、民間による運営が多いため、公営の特別養護老人ホームに比べ費用は高額です。
 
公営の特別養護老人ホームは、入居希望者が多く入居待ちの施設も多いために、民間の有料老人ホームを選択する方もいらっしゃるでしょう。自分自身があと何年生きられるかは計算できませんが、現在時点での資産保有額や年金額などを念頭に、少なくとも10年程度は資金繰りが問題ないとの計算が必要になります。
 
資金的に厳しい場合は、より費用の安い施設を選ぶことが求められます。同じ経営母体の施設でも、郊外にある施設を選べれば、東京などの大都市よりも安い費用で入居可能な場合があります。特に入居後に面会者が少ないと想定される方の場合などは、郊外の施設を選ぶのも選択肢です。
 
費用面で気を付けたい点は、入居の際に「入居一時金」が必要な施設と、不要な施設があることです。入居一時金は施設使用料(家賃にあたる)を一括前払いする方式で、これが不要な施設は、月々の支払いに家賃分が加算される方式のため、入居一時金を支払う方式より、毎月の支払金額は高くなります。
 
希望の施設がどちらを採用しているのか、あるいは入居希望者が支払い方法を選択できるのかの確認をしましょう。どちらを選ぶかは、一般的には想定入居期間で決まります。比較的健康で、入居期間が長期と予想できる場合は、入居一時金を支払う方式が有利といえます。
 
反対に重い病気などにかかっているなどで、長期の入居が想定しにくい方の場合は、入居金不要の方式を選んだほうがよいでしょう。ただし入居一時金を採用している施設でも、入居期間が短い場合には、期間に応じて入居金の一部を返却してもらえます。
 
また、金額が不明な経費も確認したいものです。日用品の購入費、提携医療機関にかかる医療費の目安、追加の介護を受けた場合の費用など、入居前の資料や説明では不十分と思われる経費についても確認します。特に最近は、日用品などの価格上昇が進んでおり、こうした経費の今後のトレンドについて説明を受けましょう。
 

実際の見学で実情が理解できる

それぞれの事情で入居を急いでいても、実際に現場を見学して分かることが結構あります。入居予定者自身が実際の施設を見られればよいのですが、その方の見学が無理な場合は、家族などが出向き実情を確認したいものです。
 
実際に現場を見学することで、施設の雰囲気などはよく分かります。特に食事時間に訪問すれば、職員が入居者にどのように接しているか、提供される食事はどのようなものか、全体の職員数が充足しているのか、などを把握できます。
 
また入居者の顔つき・表情を観察することで、施設が明るい雰囲気かどうかも知ることができます。近年は介護業界自体の人手不足が深刻化しており、実際の現場を見ることで行き届いたケアができているかを確認でき、入居を判断する材料になります。
 
また最も大切なのは、介護と医療の体制のチェックです。特に入居時は問題ない状態でも、入居期間が長くなるにつれ病気の発症などにより、医療や介護を受ける機会が増えてきます。職員の人員配置は十分か、提携している医療機関は安心できるか、夜間の見回り体制はどうか、などを見学時に質問し確認しましょう。
 
さらに、認知症などの症状が重くなったときに対応してもらえるか、病院への入院や施設退去についての基準があるのか、最後のみとりまで対応してもらえるか、といった将来予想される入居者の変化についても確認しておきましょう。これらの説明を受けておくことで、ムダな準備をしなくて済みます。
 
どんなに早い入居を希望していても、少なくとも複数の施設を見学し、入居予定者に最もふさわしい施設を選びたいものです。
 
執筆者:黒木達也
経済ジャーナリスト
 
監修:中嶋正廣
行政書士、社会保険労務士、宅地建物取引士、資格保有者

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