更新日: 2023.08.28 その他老後

【お墓の問題】62歳男性、妻が他界…。夏休みが気持ちを伝えるチャンスかも!?

執筆者 : 宮﨑真紀子

【お墓の問題】62歳男性、妻が他界…。夏休みが気持ちを伝えるチャンスかも!?
8月のお盆時期が過ぎ、9月になるとお彼岸を迎えます。ご先祖さまに思いをはせると同時に、お墓問題が気にかかる方もいらっしゃるのではないでしょうか。夏休みは親子で話す絶好のチャンスかもしれません。
宮﨑真紀子

執筆者:宮﨑真紀子(みやざき まきこ)

ファイナンシャルプランナーCFP(R)認定者、相続診断士

大阪府出身。同志社大学経済学部卒業後、5年間繊維メーカーに勤務。
その後、派遣社員として数社の金融機関を経てFPとして独立。
大きな心配事はもちろん、ちょっとした不安でも「お金」に関することは相談しづらい・・・。
そんな時気軽に相談できる存在でありたい~というポリシーのもと、
個別相談・セミナー講師・執筆活動を展開中。
新聞・テレビ等のメディアにもフィールドを広げている。
ライフプランに応じた家計のスリム化・健全化を通じて、夢を形にするお手伝いを目指しています。

選択肢やアドバイスが多いと、悩みは倍増

子どもが成長し進学や就職で自宅を離れると、親子でゆっくり話す機会はめっきりと少なくなります。一緒に暮らしていると、日常会話の端々に親の考え方などをくみ取る機会もありますが、生活が変わって価値観にズレが生じていても気づかないこともあります。
 
終活を進めるうえで、家族の話し合いは大切です。相続のこと、自宅のこと、お墓のこと、思いはそれぞれですが、まず自分の気持ちを伝えることがスタートになります。
 
田中さん(仮名62歳)は、昨年奥さまを亡くされました。一周忌に納骨をしたいと考え、お墓の準備もしたそうです。長男と長女、2人のお子さんはすでに社会人です。長男は就職して東京在住で、田中さんと長女は地方都市に住んでいるとのことです。
 
お墓はいろいろ悩んだ結果、自宅近くのお寺に建てることにしたそうです。この寺院を選んだ理由は、将来永代供養に移行する相談にも応じてもらえるからとのことです。お墓の後継者問題について関心が高い方もいるでしょう。田中さんは知人からは「子どもの負担を考えると、永代供養墓で良よいのでは?」というアドバイスを受けたそうです。
 
奥さまが50代の若さで他界されたため、突然の死を受け入れられないこともあり、始めから他人の遺骨と合祀を前提にすることには抵抗があったそうです。永代供養墓も納骨堂やロッカー式など、お墓の様式もあります。
 
これらは駅近の便利な立地であることが多く、将来のお墓参りには好都合かもしれません。しかし選択肢が増えたとはいえ、田中さん自身はやはり旧来の一般墓が望ましいという結果になりました。
 

費用がかかっても気持ちが優先

田中さんが今回のお墓に決めた理由のひとつは、親戚とのバランスなどもあるようです。田中さんは長男ではないので、お墓が必要です。本家のお墓があり、親戚のお墓も旧来の形です。田中さんの周りには、いまだに一般墓が当然という空気があるそうです。
 
決め手となった理由は、他にあります。子どもたちが巣立ち、「これからの20〜30年は夫婦2人で生活を楽しもう」と思い描いていたところに、不幸はやってきました。旅行の行き先をいくつもリストに書いて、定年後の生活を計画していたそうです。それが一転してしまった今、「最終的な理由は自分の気持ち」と話されていました。
 
「家のことを任せっぱなしにしてきて反省が多いので、できることをしてあげたい」とも。62歳という年齢を考えると、長い人生が残っています。墓前で奥さまに相談することもあるでしょうし、ご本人にとって、お墓を守ることが生きる糧になるかもしれません。
 
永代供養墓のバリエーションが増えたことで、その費用もさまざまです。例えば、樹木葬で50万〜100万円程度。納骨堂のタイプは立地や施設のグレードによって幅がありますが、150万円が目安のようです(費用は筆者取材)。費用面を考えると一般墓は高額ですし、何よりも「守っていく」ことは大変です。
 
「自分がどういう気持ちでこのお墓を選んだのか」「だからといって、このお墓にこだわる必要はないこと」「自分が亡くなった後のお墓に関しては、兄妹で自由に決めてほしいこと」、これらを子どもたちにもしっかり伝えたいと話されていました。
 

将来、空き家問題に発展しないように

実は以前、田中さんからはこのような相談もありました。「借家でなく、持ち家があったほうが子どもたちのためにもよいだろうと思って家を購入したけれど、この自宅が子どもの重しになっていないだろうか」と。
 
東京に行きたい気持ちを引き留めているのではないか、というのです。同居している長女も、数年後には東京で働くことを希望しています。一方で長男は、将来実家に戻るつもりでいるそうです。先のことは誰にも分かりません。「時々に、自分の希望を伝えることを怠らない」これが終活全般を通じての良策かもしれない、と筆者は感じました。
 
執筆者:宮﨑真紀子
ファイナンシャルプランナーCFP(R)認定者、相続診断士
 

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