年齢が上がるほど高リスク! 認知症高齢者のお金のトラブルに備える3つの制度

配信日: 2023.09.22

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年齢が上がるほど高リスク! 認知症高齢者のお金のトラブルに備える3つの制度
日本は、世界トップクラスの長寿国です。令和4年の簡易生命表(厚生労働省)によると、平均寿命は、男性81.05歳、女性87.09歳となっています。長生きは喜ばしいことですが、年齢が上がるほど認知症のリスクが高まります。
 
首相官邸が公表している「認知症年齢別有病率の推移等について」によると、認知症有病率は、75~79歳が11.7%、80~84歳が16.8%、85~89歳が35.0%、90~95歳が49.0%です。
 
認知症になるとお金の管理ができなくなり、トラブルも増えます。本記事では、認知症高齢者のお金のトラブルに備える、「日常生活自立支援事業」「成年後見制度」「認知症に備える保険」について、ポイントを解説します。
新美昌也

執筆者:新美昌也(にいみ まさや)

ファイナンシャル・プランナー。

ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
http://fp-trc.com/

日常生活自立支援事業の概要

判断能力が低下すると、お金の計算ができなくなったり、ATMを使えなくなったりと財産管理が難しくなります。家族がフォローできればよいのですが、“いつも”というわけにはいきません。親と離れて暮らしている場合はなおさらです。
 
このようなときは、社会福祉協議会の「日常生活自立支援事業」を利用しましょう。生活支援員がお金の管理を手伝ってくれます。お金の日常的な管理のほか、介護保険など福祉サービス利用の手続きの支援もしてくれます。また、通帳や印鑑、重要な書類の管理も頼めます。
 
さらに、元気で暮らしているかなど生活支援員が定期的に訪問し、生活状況の変化などの見守りをしてくれます。ただし、医療行為同意や施設に入所する際の身元引受人や保証人にはなれません。
 
契約締結前の初期相談等に係る経費や生活保護受給世帯の利用料については無料ですが、福祉サービス利用手続き、金銭管理などのサービスは有料です。1回1200円程度です。
 
支援を受けるためには、お住まいの市区町村にある社会福祉協議会と契約を締結する必要があります。専門的な知識を持った担当者(専門員)が自宅や施設、病院などを訪問して打ち合わせをします。
 
困っていることについて一緒に考え、支援計画をつくります。契約内容に間違いがなければ、利用者と社会福祉協議会で利用契約を結びます。申し込み後から利用開始まで、3ヶ月以上かかります。
 

成年後見制度の概要

日常生活自立支援事業を利用するには、利用者が契約内容を理解できることが必要です。したがって、障害、認知症などにより、ご本人に社会福祉協議会と契約できるだけの判断能力がない場合には、この事業は利用できません。
 
判断能力が低下すると悪徳業者の餌食になり、不要な高額商品を売りつけられたり、不当なリフォーム契約を締結させられたりするなどの被害に遭う可能性があります。このようなときに備えるために、「成年後見制度」があります。
 
成年後見制度は、障害や認知症などで判断能力が低下した人が、悪徳商法によって不当な契約を結ばされたりした場合に、本人に代わって契約を取り消したり、介護認定の申請などの支援を行ったりする制度です。
 
つまり、判断能力が不十分になった方の療養看護と財産管理を支援する制度です。なお、医療行為同意や施設に入所する際の身元引受人や保証人にはなれません。
 
この制度は大きく分けて2つあります。判断能力が低下した人を支える「法定後見制度」と、将来、判断能力の低下時に備えて判断能力があるときに契約する「任意後見制度」です。
 
法定後見制度は、本人の意向にかかわらず、家庭裁判所が後見人等を選ぶのに対して、任意後見制度は自分で将来の後見人を選ぶことができます。また、任意後見制度では、将来の後見人にお願いする内容も自分で決めることができるのが特長です。また、任意後見制度には以下の特徴があります。


・任意後見契約は公正証書で作成する
・任意後見契約の効力は、家庭裁判所で任意後見監督人が選任されてから生じる
・任意後見契約の締結や契約の効力が生じたことなどは登記事項である

など

申し立てにかかる費用や成年後見人等の報酬額の目安については、東京家庭裁判所のホームページに詳しく掲載されていますので、ご参照ください。
 

認知症に備える保険

認知症に備える保険には、大きく2つのタイプがあります。
 
介護費用に備える民間介護保険や認知症に特化した認知症(予防)保険と、他人に損害を与えたときの損害賠償責任に備える認知症保険(個人賠償責任保険)です。
 
個人賠償責任保険は、認知症高齢者が線路内に侵入して列車にはねられ死亡した際に、遺族が鉄道会社から監督責任を問われ、多額の損害賠償を請求された事案をきっかけに、一部の保険会社で物理的損害を伴わない電車等の運休・遅延による損害賠償責任を補償範囲に追加しています。
 
すでに個人賠償責任保険に加入している方は、ご自身の保険の補償範囲について確認してみましょう。また、この事案を契機に、認知症の人の事故を補償する個人賠償責任保険への加入支援を行っている自治体もありますので調べてみるとよいでしょう。
 

出典

厚生労働省 令和4年簡易生命表の概況
首相官邸 認知症年齢別有病率の推移等について
厚生労働省 日常生活自立支援事業
厚生労働省 成年後見はやわかり 成年後見制度
裁判所 申立てにかかる費用・後見人等の報酬について 東京家庭裁判所後見センター
 
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー。

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