更新日: 2023.09.24 セカンドライフ

定年退職後はゆっくりしたいので、あまり働きたくありません。いつまで働くべきですか?

執筆者 : 柴沼直美

定年退職後はゆっくりしたいので、あまり働きたくありません。いつまで働くべきですか?
これまで「夫婦でゆっくり旅行などをしてのんびり過ごす」という生活が、理想の「第二の人生」のように描かれることが多くありましたが、「長寿化」「年金受給額の減少」によって、このような理想像の実現は難しいという認識をお持ちの方もいらっしゃるでしょう。
 
しかし、「そうはいっても、やっぱりゆっくりしたい」というのも本音かもしれません。では、退職後はどのように家計運営を考えればよいのでしょうか?
柴沼直美

執筆者:柴沼直美(しばぬま なおみ)

CFP(R)認定者

大学を卒業後、保険営業に従事したのち渡米。MBAを修得後、外資系金融機関にて企業分析・運用に従事。出産・介護を機に現職。3人の子育てから教育費の捻出・方法・留学まで助言経験豊富。老後問題では、成年後見人・介護施設選び・相続発生時の手続きについてもアドバイス経験多数。現在は、FP業務と教育機関での講師業を行う。2017年6月より2018年5月まで日本FP協会広報スタッフ
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シニア世代の就業率は年々上昇

一般的に、シニア世代(55~64歳)は就労や家計運営をどのように考えているのか振り返っておきましょう。
 
総務省の「労働力調査」などによると、2022年の55~64歳の就業率は上昇を続けています。仕事が見つからない人の理由についても「希望する種類・内容の仕事がない」と回答した人は前年より減少していると示されています。
 
さらに、働く理由についても、厚生労働省の報告書からみると「経済上の理由」が最大ですが、「生きがい・社会参加」や「健康上の理由」を挙げている人も少なからずいます。
 

「働かなければならない」もそうだが「健康寿命を延ばす」目的も

このように、多くの人が年金で賄いきれない生活費を補うために、何らかの形で就労の継続をしている、あるいは検討していることが確認できました。健康上の理由で以前と同じようなペースで就労することは難しくなる場合でも、時間を短くしたり働く日数を減らしたりするなど、負担のかからない方法で働いている方が多いようです。
 
総務省の「統計トピックスNo.138」によると、高齢就業者の働き方としては、役員を除く雇用者が529万人(58.7%)うちパート・アルバイトが278万人(52.5 %)、自営業・家族従業者が263万人(29.2%)、会社役員が109万人(12.1%)となっています。
 
パート・アルバイトの働き方を選んだ理由は、「好きなときに働きたい」とペースダウンした働き方を模索した結果であって、ポジティブな理由だと考えてよさそうです。
 

少しでも「足がかり」を作っておく

一度社会から引退してしまうと、復帰するのに、2倍も3倍もエネルギーを要します。
 
筆者もかつて出産・子育てのために引退した後で社会復帰するとき、「自動化の仕組みやパソコン、アプリケーションが大きく変わってしまったことから、企業ルーティーンを理解するのに時間がかかって苦労した」という経験があります。たとえ手作業の業務であったとしても、定年退職後の再復帰は思った以上に苦労することが予想されます。
 
たとえ1週間に2日だったとしても、1日4時間の短時間就労だったとしても、働くことを継続さえしておけば、職場環境やリズムに乗っていくことはスムーズに進むのではないでしょうか。
 

「本当に動けなくなったとき」のことは常に意識しておく

就労を継続することは、家計運営をラクにすることと健康寿命を延ばすことの利点が考えられますが、それでも加齢によって、以前はすんなりできていたことができなくなることは増えるという認識は常に持っておくべきです。
 
施設入所は考えたくないと思っていても、それ以外に選択肢がない状況が訪れないとはいえません。そうなったときに、最低限の準備は整っている、もし難しいようなら、「どこに」支援を求めればよいかを整理しておく必要はあります。
 

「働き続けること」をネガティブにとらえない

「いつまで働かなければいけないのか?」という問いには、「働くことはネガティブなこと」という前提があります。
 
後ろ向きにとらえるのではなく、そろそろ「働くこと=働けること=ポジティブ」と考え方を前向きにとらえてみるのがよさそうです。
 

出典

総務省統計局 統計トピック No.138 統計からみた我が国の高齢者-「敬老の日」にちなんで- 本文 2 高齢者の就業
総務省統計局 労働力調査
 
執筆者:柴沼直美
CFP(R)認定者

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