更新日: 2023.09.29 セカンドライフ

年金がストップするなら働かないほうが良い? 定年後の働き方について解説

執筆者 : 三藤桂子

年金がストップするなら働かないほうが良い? 定年後の働き方について解説
定年後も働きたいと考えていたAさん。しかし、働くと年金がもらえない・減らされるかもしれないと聞いて「それなら働かないほうが良いのでは?」と心配になりました。どのくらい働くと年金が停止・減額されるのか、年金が停止・減額されても多く収入を得たほうがよいのか、FPが解説します。
三藤桂子

執筆者:三藤桂子(みふじけいこ)

社会保険労務士、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、FP相談ねっと認定FP、公的保険アドバイザー、相続診断士

大学卒業後、公務員、専業主婦、自営業、会社員、シングルマザーとあらゆる立場を経験した後、FPと社会保険労務士の資格を取得し、個人事業主から社会保険労務士法人エニシアFP を設立。

社会保険労務士とFP(ファイナンシャルプランナー)という二刀流で活動することで、会社側と社員(個人)側、お互いの立場・主張を理解し、一方通行的なアドバイスにならないよう、会社の顧問、個別相談などを行う。

また年金・労務を強みに、セミナー講師、執筆・監修など首都圏を中心に活動中(本名は三角桂子)。

https://sr-enishiafp.com/

働きながら年金を受け取るとき(在職老齢年金)

60歳以降、働きながら老齢厚生年金を受給する場合、一定の金額を超えると年金額の一部もしくは全部の支給が停止されることになります。これを在職老齢年金といいます。
 
具体的には、総報酬月額相当額と基本月額が48万円(2023年度)を超えると、超えた額の2分の1の年金額が支給停止されます。これを式にすると以下のとおりです。
 
支給停止額=(総報酬月額相当額+基本月額-48万円) ×1/2
 
総報酬月額相当額は毎月の給与(標準報酬月額)とその月以前 1年間の賞与(標準賞与額)を12で割った額を総報酬月額相当額といいます。
 
基本月額は老齢厚生年金の報酬比例部分を12で割った額であり、老齢基礎年金、経過的加算については含まれません。ただし、厚生年金基金に加入していた期間がある場合、厚生年金基金に加入しなかったと仮定して計算した老齢厚生年金の金額も含めて基本月額を計算します。
 

在職老齢年金の計算、Aさんは一部停止に

現在、Aさんは64歳。60歳で定年でしたが、再雇用制度により65歳まで働くことができ、給与は月50万円(標準報酬月額)で賞与はありません。年金額は特別支給の老齢厚生年金の報酬比例部分が144万円のため基本月額は12万円です。
 
支給停止額=(50万円+12万円−48万円)×1/2=7万円
7万円の年金が支給停止され、12万円−7万円=5万円がAさん1ヶ月の年金額となります。
 
Aさんは、年金を144万円受給できるところですが、一部支給停止されるため受け取れる年金は60万円です。半分以上年金が減額されるなら、働かないほうが良いのではと考える方もいらっしゃるかもしれませんね。
 

自分自身の働き方を考える

前段で半分以上年金が支給停止されるAさんですが、65歳以降も働き続ければ将来の年金額は確実に増えるため、健康で長く働いたほうがお得になります。2つの事例をあげてみます。
 
(1) 70歳まで正社員として働く
Aさんが70歳まで月50万円(標準報酬月額)の給与で働き続けた場合、64歳から6年間で約20万円の年金を増やすことができます。ただし、在職中に受け取る年金は一部支給停止します。
 
(2) 65歳以降、働く日数等を少なくする
64歳から65歳まで月50万円、65歳から70歳まで月20万円で働き続けた場合、6年間で約10万円の年金額を増やすことができます。65歳からの年金は働いていても全額支給されます。
 
年金が減額してまで働きたくない、もしくは体力的に難しいと考えるのであれば、働き方を短時間勤務や日数を減らすなどして、年金が調整(減額)されない金額で働くという(2)の選択肢を選ぶと良いでしょう。ただし、(1)と(2)で働けなくなった時の年金額に10万円の差が生じます。
 
また、(1)は(2)より、年金額が10万円増えますが、繰下げ受給をする場合、支給停止している年金は増額の対象にはなりません。停止額がある人は、思ったほど増えていないと感じる人もいます。配偶者のいる人は加算も含めて、何歳で受給するのが良いか検討することが大切です。
 

まとめ

60歳以降、すでに年金を受給している人が厚生年金保険の適用事業所に勤務している場合は、在職老齢年金が適用されることになります。また、厚生年金保険に加入していない(保険料の負担がない)70歳以上の人も同様に、厚生年金保険の適用事業所に勤務していれば、在職老齢年金が適用となります。
 
支給が停止された部分の年金については、たとえ年金の繰下げ制度を使ったとしても、停止された年金は増額しませんが、年金は高齢期のリスクに備える保険です。一案として、人生100年時代とするなら、働いている時は給与で賄い、年金は働けなくなった時のリスクに備える保険と考えてみてはいかがでしょうか。
 

出典

日本年金機構 在職老齢年金の支給停止の仕組み 〜働きながら年金を受けるときの注意事項〜
 
執筆者:三藤桂子
社会保険労務士、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、FP相談ねっと認定FP、公的保険アドバイザー、相続診断士

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