更新日: 2023.10.02 定年・退職

必死に働いて「退職金2000万」をもらっても、定年後の生活は苦しい? 60歳以降かかるお金とは?

執筆者 : 柘植輝

必死に働いて「退職金2000万」をもらっても、定年後の生活は苦しい? 60歳以降かかるお金とは?
2021年に実施された日本経済団体連合会の退職金・年金に関する実態調査結果によると、勤続年数や勤務先の条件などによって、退職金の額は2000万円前後に及ぶこともあるようです。
 
しかし、老後不安が叫ばれる昨今、退職金があっても定年後の生活は心配、という方もいらっしゃることでしょう。そこで今回は、仮に退職金を2000万円もらっても定年後の生活は苦しくなってしまうのか、60歳以降にかかるお金について考えてみました。
柘植輝

執筆者:柘植輝(つげ ひかる)

行政書士
 
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

60歳以降にかかる一般的な支出はどれくらい?

統計上の数値となりますが、総務省統計局の令和4年家計調査によれば、65歳以上の世帯の支出は、単身無職世帯で年間およそ187万円、夫婦2人の無職世帯で年間およそ322万円となっています。
 
仮に60歳で定年退職し、90歳で亡くなるとして、定年後の生活が30年続くと考えると、単身者なら5610万円、夫婦なら9660万円ほどの支出が生じると想定されます。
 
ただし、ライフスタイルなどによっては、この数値と大きくかけ離れる可能性もあります。
 
実際の支出額がどのくらいになるかは、上記の数値を参考にしつつ、現在の自分の支出を基に考えてみることが必要です。
 

退職金が2000万円あっても定年後の生活は苦しい?

退職金が2000万円もあれば、定年後の生活もだいぶ楽になるのでは? と思われる方もいらっしゃるかもしれません。前述の調査結果を踏まえると、2000万円という額は単身者なら10年分以上、夫婦でも6年分以上の生活費に該当します。決して小さな存在ではありません。
 
とはいえ、それだけでは定年後の生活に十分な金額とはいえません。年金の受給額次第では、定年後の生活が苦しくなる可能性もあり得ます。
 
参考までに、令和3年度の年金受給額の平均は、厚生年金受給者の場合で年間およそ175万円、国民年金のみ受給者の場合で年間およそ64万円です。仮に65歳から90歳までの25年間受け取ったとすると、総受給額は厚生年金でおよそ4375万円、国民年金でおよそ1600万円となります。
 
単身者で平均的な額の厚生年金を受け取れる場合や、夫婦で厚生年金を受け取れるような場合はともかく、厚生年金の夫と国民年金のみの妻などの夫婦世帯では、退職金が2000万円あってもカツカツになりそうです。
 
この場合、定年後の支出を9660万円と考えると、退職金2000万円と2人分の年金5975万円を合わせても1500万円以上の不足が生じることになってしまいます。
 
いずれにせよ、退職金がいくらなら安心、あるいは生活が苦しくなる、と単純に決まるわけではありません。受給する年金額や老後の支出額、そして何歳まで生きるかによっても変わってくるということを覚えておきましょう。
 

定年後は就労によって生活を楽にすることができる

退職金が2000万円あっても生活が苦しくなりそうだという場合は、体調面に問題がなければ、定年後の就労も検討しましょう。
 
元の勤務先での再雇用以外でも、別の会社への再就職や、パートやアルバイトとして働くなど、自身のキャリアや体調面、ライフプランに応じた方法で働くことで、定年後も必要なお金を稼ぎ続けることは可能です。
 
80歳、90歳まで働くことは大変かもしれませんが、65歳や70歳くらいまでであれば、仕事内容次第では十分働くことができるでしょう。
 

退職金2000万円もらっても条件次第では生活が苦しいこともある

「退職金2000万円」は非常に大きな金額です。しかし、年金など他の収入や準備した老後資金次第では定年後の生活が苦しくなることも予想されます。
 
定年後の生活については、退職金だけに頼らず、年金やこれまで蓄えてきた資金も考慮に入れ、必要に応じて就労することも選択肢に含め、考えていくべきでしょう。
 
もし、大きな額の退職金をもらっても定年後の生活が心配という場合は、一度、定年後の生活の収支をシミュレーションし、じっくり考えてみることをおすすめします。
 

出典

一般社団法人日本経済団体連合会 2021年9月度 退職金・年金に関する実態調査結果
総務省統計局 家計調査年報(家計収支編)2022年(令和4年)Ⅱ 総世帯及び単身世帯の家計収支
厚生労働省 令和3年度厚生年金保険・国民年金事業の概況
 
執筆者:柘植輝
行政書士

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