更新日: 2019.01.10 介護
重い病気で長期入院 自己負担する金額も高額に・・ 知っておきたい「介護保険負担限度額認定証」
「限度額適用認定証」は、医療費の自己負担額を軽減するしくみですが、「介護保険負担限度額認定証」は介護保険施設などで利用する食費・居住費を負担軽減するしくみです。
Text:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。
ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
http://fp-trc.com/
目次
「限度額適用認定証」とは
重い病気などで病院等に長期入院したり、治療が長引いたりした場合には、医療費の自己負担額(医療費の3割など)が高額となります。そのため、一定の金額(自己負担限度額)を超えた部分が払い戻される高額療養費制度があります。
高額療養費制度では、病院等から請求された医療費の3割などの全額を支払ったうえで申請することにより、自己負担限度額を超えた金額が数か月後に払い戻しされるしくみです。
しかし、一時的にせよ多額の費用を立て替えることは、経済的に大きな負担となります。
70歳未満の方は、あらかじめ「限度額適用認定証」の交付を受けておくと、医療機関の窓口に提示することで、医療機関ごとにひと月の支払額が自己負担限度額までとなります。
「特定入居者介護サービス費(補足給付)」とは
介護老人福祉施設(特養)などの介護施設施設やショートステイを利用した場合、利用者負担は、介護サービス費用の1~3割と、食費・居住費(滞在費)・日常生活費等の合計になります。食費・居住費(滞在費)・日常生活費は全額自己負担になります。低所得の方には大きな負担ですので、食費と居住費(滞在費)の負担軽減のしくみがあります。これを、「特定入居者介護サービス費(補足給付)」といいます。
補足給付の対象となるのは、介護保険施設(介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護療養型医療施設、介護医療院)やショートステイを利用する場合です。
通所介護(デイサービス)、通所リハビリテーション(デイケア)、認知症対応型共同生活介護(グループホーム)は対象外です。
低所得者は3段階に分かれ、それぞれの段階に応じた負担限度額が定められています。
第1段階の方は、世帯の全員(世帯分離をしている配偶者も含む)が市区町村民税を課税されていない方で老齢福祉年金を受給している方、及び生活保護等を受給されている方です。
第2段階の方は、世帯の全員(世帯を分離している配偶者を含む)が市区町村民税を課税されていない方で合計所得金額と課税年金収入額と非課税年金(遺族年金と障害年金)収入額の合計額が年間80万円以下の方です。
第3段階の方は、世帯の全員(世帯を分離している配偶者を含む)が市区町村民税を課税されていない方で上記2段階以外の方です。
例えば、食費の負担限度額(日額)は、第1段階の方は300円、第2段階の方は390円、第3段階の方は650円となっています。居住費に関しては、ユニット型個室の場合、第1段階の方は820円、第2段階の方は820円、第3段階の方は1,310円となっています。
第1~3段階以外(第4段階)の方は、負担限度額はありません。施設と利用者との契約によって決定します。基準費用額(1日当たり)は、食費1,380円、ユニット型個室1,970円です。
第1~3段階の所得要件を満たしていても、預貯金等が一定額を超える方は補足給付を受けられません。一定額は、配偶者のいる方で2,000万円、配偶者のいない方で1,000万円です。
預貯金等に含まれるものは、預貯金(普通・定期)、有価証券(株式・国債・地方債・社債など)、金・銀(積立購入を含む)など、購入先の口座残高によって時価評価額が容易に把握できる貴金属、投資信託、タンス預金(現金)です。借入金や住宅ローンなどの負債は、預貯金等から差し引いて計算します。
一方、預貯金に含まれないものは、生命保険、自動車、腕時計、宝石など時価評価が難しい貴金属、絵画、骨董品、家財などです。
補足給付を受けるには「介護保険負担額限度額認定証」が必要
「特定入居者介護サービス費(補足給付)」の適用を受けるには申請が必要です。お住いの市区町村の介護保険担当窓口に申請します。該当する方には負担限度額が記載された「介護保険負担限度額認定証」が交付されます。
サービスを利用する際に認定証を提示することで、実際に支払う金額が記載されている負担限度額となります。毎年、更新が必要です。
なお、預貯金等及び配偶者の所得については、市区町村の介護保険担当窓口への申告が必要です。市区町村は必要に応じて銀行等に口座情報の照会をします。不正が発覚した場合、それまでに受けた負担額に加え最大2倍の加算金の納付を求められることがありますので留意してください。
第4段階の方でも第3段階の負担軽減を受けられる場合がある
第4段階の方でも以下の要件すべてに該当する方は、申請により、第3段階の負担軽減を受けることができます。
・2人以上の世帯
・世帯の年間収入から施設の利用者負担(介護サービス費の利用者負担、食費・部屋代)の見込み額を除いた額が80万円以下
・世帯の現金、預金等の額が合計450万円以下 等
グループホーム家賃補助制度
自治体の中には、一定の要件を満たす方が、認知症対応型共同生活介護事業所(グループホーム)を利用した際に支払う家賃の一部を助成しているところがあります。
医療費控除を活用する
高所得者の方は、補足給付を受けられませんが、介護保険施設での介護サービス費や食費、居住費は医療費控除の対象となります。確定申告で、所得税や住民税の負担を軽減しましょう。
医療費控除の対象となるのは、介護老人福祉施設(特養)では施設サービス費(食費・居住費を含む)の自己負担額の2分の1に相当する額、介護老人保健施設・介護療養型医療施設・介護医療院では施設サービス費(食費・居住費を含む)の自己負担額全額です。
Text:新美 昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。