更新日: 2023.11.24 定年・退職
会社を辞めたいけれど、「自己都合」退職だと、「会社都合」退職と比べてどれくらい退職金が減る?
この疑問について、大学卒、事務・技術労働者、総合職相当の方を想定して考えていきます。
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
自己都合退職と会社都合退職との違い
そもそも、自己都合退職と会社都合退職との間には、どのような違いがあるのでしょうか。
まず自己都合退職とは、自らの意思に基づいてしたと思われる退職です。キャリアアップのため、結婚などライフイベントによるもの、そのほか、会社の規律違反による懲戒解雇などが該当します。
一方の会社都合退職は、自らの意思に基づかず、離職を余儀なくされた形の退職をいいます。例えば、会社の倒産や経営不振によるリストラのほか、希望退職に応じた場合があります。
ほかにも、離職の直前 6ヶ月間のうちに3ヶ月連続して 45 時間、1ヶ月で 100 時間、あるいは、 2ヶ月から6ヶ月平均で月 80 時間を超える時間外労働が行われた場合なども同様になります。
自己都合退職と会社都合退職とで、退職金額はどれくらい違う?
では、実際に自己都合退職と会社都合退職とで、どれくらい退職金の支給額が変わるのか、見ていきましょう。
厚生労働省の「令和3年 賃金事情等総合調査」によれば、大学卒、事務・技術労働者、総合職相当の場合、会社都合退職では、勤続3年で69万円(月収2.8ヶ月分)、10年で310万2000円(月収8.8ヶ月分)、20年では953万1000円(18.8ヶ月分)、38年では2528万円(月収44.6ヶ月分)となるようです。
それに対して自己都合退職の場合、勤続3年で32万3000円(1.3ヶ月分)、10年で179万9000円(5.1ヶ月分)、20年で726万5000円(14.5ヶ月分)、38年では2269万2000円(39.9ヶ月)となっています。
このように、基本的に自己都合退職よりも会社都合退職の方が、支給される退職金の金額は大きくなるようです。また、勤続年数が長くなるにつれて、会社都合退職と自己都合退職による差も小さくなっているようです。
とはいえ、実際にどのような金額になるのかは、会社の賃金規程などによって異なります。会社によっては「最低勤続年数10年以上」などと退職金の支給に一定の要件が課されていることもあります。退職金規定が廃止されていること、そもそも退職金の支給規定がないということもあります。
実際に退職金がどれくらいになるのかは、勤務先へ確認してください。
基本手当にも響いてくる
自己都合退職と会社都合退職との違いは、退職金以外にも影響することがあります。その一つが、雇用保険の基本手当です。基本手当は「失業手当」と呼ばれることもあります。基本手当は、離職前に雇用保険に加入していた場合、所定の要件を満たすことで、離職後一定期間受け取ることができます。
この基本手当はすぐには支給されず、「待期期間」があります。会社都合の場合、7日の待期期間のみでよいのですが、自己都合退職の場合、さらにそこに加えて最大3ヶ月間の給付制限がなされます。
そのため、自己都合退職の場合は基本手当を受け取る時期が、長いと3ヶ月以上先になってしまうのです。また、自己都合退職の場合、会社都合退職の場合に比べて、給付日数が少なくなることもあります。
退職を検討している場合は、退職金の額だけではなく、この点についても留意しておくべきでしょう。
まとめ
退職時に支給される退職金は、自己都合退職であるか、それとも会社都合退職であるかによって、支給額が変わるようです。特に勤続年数が短いほど、自己都合退職と会社都合退職による退職金の支給額の差が、大きくなる傾向にあります。
ただし、自己都合退職と会社都合退職とで退職金の額が具体的にどれくらい変わるのかは、会社の規程によって異なります。退職金の支給の有無や条件、その額など個別具体的な状況については、勤務先へ相談してください。
出典
厚生労働省 e-Stat「令和3年賃金事情等総合調査」
執筆者:柘植輝
行政書士