更新日: 2023.11.27 セカンドライフ

定年を機に熟年離婚を考えている60歳男性。「熟年離婚」の注意点はありますか?

執筆者 : 柘植輝

定年を機に熟年離婚を考えている60歳男性。「熟年離婚」の注意点はありますか?
定年退職を機に、新たな人生のステージに立つことを考えている方から熟年離婚についての相談を受ける場合があります。
 
熟年離婚が増えているといわれている現代だからこそ、今回は熟年離婚を考える際に重要なお金に関する注意点について、男性側の視点から解説します。
柘植輝

執筆者:柘植輝(つげ ひかる)

行政書士
 
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

離婚をすると財産分与が発生する

離婚を考えている場合、まず避けては通れないのが財産分与です。財産分与とは、夫婦が婚姻中に形成した財産について、離婚時または離婚後に分け合うことです。
 
財産分与の金額は、当事者間での協議によって決めることになります。協議がまとまらない場合などは家庭裁判所での調停、審判の申し立てが可能ですが、財産分与の請求は離婚から2年が期限となっています。
 
財産分与については、夫だけが働き、妻が専業主婦であったケースでも、婚姻中に財産を築くことができたのは夫婦の協力によるものと判断されます。家庭裁判所での審判では、夫婦間に収入差がどれだけあっても一般的に財産を2分の1ずつ分けるケースが多くなっています。
 
例えば婚姻期間が30年、夫が年収1000万円、妻が専業主婦であった夫婦で、離婚時に2000万円の自宅と1000万円の預貯金を合計して3000万円の財産あったとします。2分の1の割合で財産分与が行われた場合、夫婦それぞれの財産は1500万円ずつになります。
 
なお、財産分与においては基本的に自宅などが夫の名義になっていても、夫婦の財産と考えます。熟年離婚ともなれば、それまでに多くの財産を夫婦の協力で築いている場合もあるので、財産分与については離婚前にしっかりと話し合って金額を決定すべきです。
 

退職金も財産分与の対象

定年退職を迎える場合、勤務先によっては退職金が支払われることもあります。「令和3年賃金事情等総合調査」の結果によると、大学卒で勤続年数35年の男性の場合、調査産業計での平均的な退職金の支給額は約1900万円となっています。
 
退職金をすでに受け取っている場合、手元に残っている金額が財産分与の対象となります。それに対して、まだ支払われていない場合は個別の状況によって異なります。
 
参考までに、例えば結婚前から勤続しており、定年後(退職金は支給済み)に離婚したケースでは、退職金のうち、結婚から定年退職時までの期間に応じて相当する金額が財産分与の対象になります。
 
簡単にすると、統計の平均を基に勤続35年で退職金が1900万円、婚姻中の共同生活が30年という場合では、目安として1628万円(退職金×婚姻生活÷勤続年数で算出)ほどが財産分与の対象となる可能性があります。
 
なお、退職金を受け取る前に離婚しても、財産分与の期限である2年以内に支給されることが見込まれているなど、タイミングによっては退職金も財産分与の対象となる場合もあるので注意が必要です。
 

年金の分割についても考えなければならない

年金分割とは、離婚した夫婦のどちらか一方または双方の請求によって、婚姻期間中における厚生年金の加入記録を当事者間で分割できる制度です。年金分割には、当事者間での合意や裁判手続きによって分割割合を決める合意分割と、専業主婦など国民年金第3号被保険者であった方から請求する3号分割があります。
 
合意分割なら最大で2分の1を上限に夫婦で分割割合を決められます。一方、3号分割での分割割合は2分の1です。なお、年金分割も財産分与と同じく、請求の期限は離婚から2年以内となっています。
 
とはいえ、年金分割の対象はあくまでも婚姻期間中の厚生年金の加入記録だけで、国民年金(老齢基礎年金)は対象外です。例えば、離婚した相手からの3号分割の請求によって自身の厚生年金記録を2分の1ずつ分割したからといって、将来の年金額が半分になるというわけではありません。
 
また、iDeCoなどの個人年金や企業年金については年金分割の対象となりませんが、財産分与の対象にはなり得ます。
 
分割後の年金の見込み額などについては、最寄りの年金事務所でご確認ください。
 

まとめ

定年を機に熟年離婚を考えている場合、特にお金まわりについてはさまざまなことに配慮する必要があります。
 
財産分与や年金の分割など、離婚によって金銭面でどのような影響があるのか確認し、夫婦間でしっかりと話し合うことはもちろん、状況によっては弁護士への相談なども行っておきましょう。
 

出典

中央労働委員会 令和3年賃金事情等総合調査(令和3年退職金、年金及び定年制事情調査 調査結果の概要)
法務省 財産分与
日本年金機構 離婚時の年金分割
 
執筆者:柘植輝
行政書士

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