更新日: 2019.01.10 介護
訪問介護における生活援助に回数制限! 10月からの改正点を予習
Text:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。
ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
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生活援助に回数制限
介護保険の訪問介護サービスには、「身体介護」「生活援助」と「通院等乗降介助」があります。「身体介護」は、入浴・排せつ・食事など、利用者の身体に直接接触して行う介助などをいいます。
「生活援助」は、調理・洗濯・掃除などの家事援助が中心になります。「生活援助」は基本的に同居の家族がいる場合には利用できません。利用者が一人暮らしか、家族等が障害・疾病等のために家事等が困難な場合に利用できます。また、ペットの世話、草むしり、来客の応対など直接、本人の日常生活の援助に属さないと判断される行為は含まれません。
「通院等乗降介助」は、利用者が通院等する場合に訪問介護員が自ら運転する車両(いわゆる介護タクシー)において、利用者の乗り降りの介助などを行います。
このうち、2018年10月から、生活援助サービスについて、利用者に「通常の利用状況からかけ離れた利用」を設定したケアプランについて市区町村への届け出を求めることとしました。事実上の、生活援助サービスに対する利用制限といえます。
具体的には、要介護1は27回、要介護2は34回、要介護3は43回、要介護4は38回、要介護5は31回を1か月あたりの利用回数の上限とし、これを超えて利用する場合には市区町村へのケアプランの届け出が必要となります。
これに関しては「訪問介護における生活援助は、単に家事代行支援をしているのではなく、自宅の環境や調理・洗濯、日々の会話等から利用者の状態の全体像を把握し、状況に応じて適切な支援を判断・提供する非常に専門性の高い支援です。……
また、生活援助と身体介護は一連の流れで提供されるサービスです。それぞれを分けて提供することは、利用者の全体像を把握できなくなることにつながり、適切なサービス提供を行うことが困難になることで重度化を招くことが懸念されます」との意見があります(社会保障審議会介護給付費分科会第147回資料)。
このような視点で生活援助をしてくれれば良いのですが、実際は、専門性の高いヘルパーさんは少ない印象を受けます。単に家事代行支援と同じようなサービスしか提供しないのであれば、今後、介護保険から生活援助サービスは外されていってしまうのではないかと心配します。
「生活援助」は、1割負担の方であれば、1回181円程度(20分以上45分未満)で利用できますが、介護保険が利用できず、民間のサービスを利用すれば大きな負担になります。生活援助外しの流れは変わらないでしょうから、自費負担に備え、民間介護保険などで準備しておくのも良いでしょう。
福祉用具レンタル価格に上限
介護ベッドなどの福祉用具を上手く活用することによって、本人の自立度を高めたり、介護者の負担を軽減したりできます。介護保険でレンタルできる福祉用具は11品目あり、レンタル代の1~3割で利用できます。
改正前は、事業者に価格設定が委ねられ、同じ商品でも事業者によって大きな価格差がありました。国の調査では、全国平均で1,741円の手すりが2万円で取引されている事例もありました。これは、保守点検などにかかる人件費などを事業者が自由に上乗せして価格設定できるためです。
改正法では、福祉用具貸与について、商品ごとの全国平均貸与価格及び貸与価格の上限を設定することになりました。10月以降は、福祉用具専門相談員は利用者に対して、商品の特徴や貸与価格に加えて、当該商品の全国平均貸与価格を説明することとなりました。
なお、商品ごとの全国平均貸与価格及び貸与価格の上限については7月以降厚生労働省のホームページに掲載されていますので見ることができます。10月の貸与分以降、貸与価格の上限を超えた場合は保険の適用外になります。
※2018/09/25 内容を一部修正いたしました。
Text:新美 昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。