高齢になると賃貸住宅が借りられないと聞きました。今からどのような対策ができますか?

配信日: 2023.11.30

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高齢になると賃貸住宅が借りられないと聞きました。今からどのような対策ができますか?
高齢者だと賃貸物件の契約を断られることが多いという情報を読んで、老後の住まいのことが心配になった40代会社員からの相談です。今からどのような対策をしておけば困らないのでしょうか。FPがアドバイスします。
伊藤秀雄

執筆者:伊藤秀雄(いとう ひでお)

FP事務所ライフブリュー代表
CFP®️認定者、FP技能士1級、証券外務員一種、住宅ローンアドバイザー、終活アドバイザー協会会員

大手電機メーカーで人事労務の仕事に長く従事。社員のキャリアの節目やライフイベントに数多く立ち会うなかで、お金の問題に向き合わなくては解決につながらないと痛感。FP資格取得後はそれらの経験を仕事に活かすとともに、日本FP協会の無料相談室相談員、セミナー講師、執筆活動等を続けている。

高齢だと本当に借りられない?

相談者の今の年収は約500万円。結婚はしておらずその予定もありませんが、場合によってはマイホーム購入も視野に入れています。まず、不安になった高齢者の賃貸住まいについて、実態を確認します。
 
国土交通省によると(※1)、高齢単身世帯の借家率は2018年で33.5%とあり、決して少なくありません。また、60代で賃貸を選ぶ人の理由トップ3は次のとおりです。
 

(1) 天災時に自家保有だとリスクがある 41.4%
(2) 住宅ローンに縛られたくない 36.1%
(3) 税金が大変だから 26.1%

 
住宅ローンや維持費以上に、「資産を失う」リスクを避ける意識の強いことが分かります。「同じ金額を払うなら、住宅ローンで資産を残したい」とは異なる考え方ですね。他にも、ライフスタイルの変化に柔軟なこと、隣人トラブルなどに転居対応しやすいことなどが挙げられるでしょう。
 
では、貸す側の意識はどうでしょうか。こちらも同じ調査から、大家へのアンケート結果です。
 
図表1


(国土交通省「我が国の居住者をめぐる状況について」から著者作成)
 
入居制限に関する回答のうち、高齢者に関連の強いものを赤字で示しました。賃貸に住みたい単身高齢者の希望に反して、やはり賃貸人側の消極的な意識や入居拒否の実態が分かります。
 

持ち家の最大の強みは「自分の城」

このような実態からは、高齢期に向けた住宅取得は「資産価値を残す」以上に、生活基盤や権利が安定した「終の棲家」を手に入れる目的が切実といえます。
 
高齢期を考慮した住宅であれば、次の条件やケースに応じた中古マンションが候補の中心になるでしょう。40代と高齢期ではライフスタイルや収納量、維持費負担能力が異なりますから、物件の場所や広さは購入・転居時期の判断に大きな影響を与えます。
 
図表2


(著者作成)
 
もちろん、金額が折り合えば新築でもよいのですが、中古物件は築年数が長いほど維持費全体の水準が低く抑えられる傾向があります。年金生活中の固定費抑制において最重要のポイントです。ちなみに、65歳以上の男性の公的年金平均額は月15万円前後(※2)で、相談者の年金額もこれに近いと思われます。
 
手元資金しだいでは、新築あるいは築浅の当面居住する物件を購入し、65歳までにローン完済と同時に売却、老後用の中古マンション購入という流れもあるでしょう。単身前提であれば、間取りと価格両面で選択肢が広がります。
 

賃貸は高齢者向け住宅も検討対象に

一般の物件では拒否感がみられる一方、高齢者向け賃貸住宅は着実に整備されてきています。
 
例えば、サービス付き高齢者向け住宅や自治体の単身高齢者向け公営住宅は、自立生活可能な60歳あるいは65歳以上であることが入居条件(入居期限なし)で、バリアフリーの標準化、緊急時対応サービス等の利用など高齢者仕様の住居なのが特徴です。
 
民間や自治体、UR都市機構の高齢者向け優良賃貸住宅では、収入に応じ家賃の補助制度があり、大阪府の例では比較的築浅の住宅を中心に整備されています(※3)。賃料は、所在地や住宅の種類、設備、築年数等により2~3万円台から20万円以上まで非常に幅が広くなっています。
 
なお、基本的には保証人を求められますし、抽選制で希望が通らなかったり交通が不便な公営住宅もあったりします。それでも上手に見つけられれば、老後の住まいを賃貸にすることも可能です。賃貸住宅であっても、老後の居住不安を拭い、維持費の抑制を図れる仕組みがあるのは心強いものです。
 

何が決め手になるのか

「購入か賃貸か」は、最初に答えがあるのではなく、なじんだ土地や環境から離れたくない、相続するかもしれない実家がある、仕事の都合で定年まで都心住まいが必須条件等々、優先する事情があって、そこから結論が導かれることも多いのではないかと思います。
 
また、最後は施設に入りたいとなると、どちらにしろ80代の頃にはまた住み替えが発生します。購入と賃貸、一般的なメリット・デメリットは理解したうえ、自分は老後にどこでどう暮らしたいのか、将来の暮らしのイメージを重ねて選択することが大切です。
 

出典

(※1)国土交通省 第50回住宅宅地分科会「我が国の居住者をめぐる状況について」2020年2月
(※2)厚生労働省年金局数理課 公的年金受給者に関する分析 – 配偶者の状況と現役時代の経歴(就労状況)からみた年金受給状況 – /「平成29年老齢年金受給者実態調査」について
(※3)大阪府住宅供給公社 スマリオ 高齢者向け優良賃貸
 
執筆者:伊藤秀雄
FP事務所ライフブリュー代表
CFP®️認定者、FP技能士1級、証券外務員一種、住宅ローンアドバイザー、終活アドバイザー協会会員

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