更新日: 2023.12.06 セカンドライフ

定年退職後はできるだけ働きたくありません。でもどのくらいの年収を維持する必要があるのでしょうか?

執筆者 : 菊原浩司

定年退職後はできるだけ働きたくありません。でもどのくらいの年収を維持する必要があるのでしょうか?
老後生活を送るには年金だけでは不足する金額を預貯金や労働による収入で補う必要があります。
 
日本は長寿大国といわれていますが、いつまでも働き続けられるわけではないですし、定年後の再雇用では収入が現役時代よりも減少する傾向もあります。
 
今回は老後の生活資金を取り巻く現状について深堀していきたいと思います。
菊原浩司

執筆者:菊原浩司(きくはらこうじ)

FPオフィス Conserve&Investment代表

2級ファイナンシャルプランニング技能士、管理業務主任者、第一種証券外務員、ビジネス法務リーダー、ビジネス会計検定2級
製造業の品質・コスト・納期管理業務を経験し、Plan(計画)→ Do(実行)→ Check(評価)→ Act(改善)のPDCAサイクルを重視したコンサルタント業務を行っています。
特に人生で最も高額な買い物である不動産と各種保険は人生の資金計画に大きな影響を与えます。
資金計画やリスク管理の乱れは最終的に老後貧困・老後破たんとして表れます。
独立系ファイナンシャルプランナーとして顧客利益を最優先し、資金計画改善のお手伝いをしていきます。

http://conserve-investment.livedoor.biz/

老後の生活資金は自助で備える

マイホームの購入資金や子どもの教育費など人生では多額のお金が必要になるケースは多々あります。
 
これらは労働などで収入を得る力の大きい比較的若い年齢で必要となることが多いですが、住宅ローンや教育ローンなどの金融サービスを利用することもできるので資金不足が致命的な問題とは感じにくい場合があります。
 
しかし、人生の最晩年で生じる老後の生活資金が不足してしまうと家族に金銭的負担を及ぼしてしまう恐れもあるため、老後の生活資金は、人生を通じて考え続けて行く必要のある重要な資金計画といえるでしょう。
 
老後の生活費の資金源というと、まず国民年金や厚生年金といった公的年金制度の老齢年金が思い浮かびます。
 
しかし、老齢年金は現役時代の所得の一部しか代替してくれず、この所得の代替率も今後の少子高齢化などの影響によって段々と低下していくと見込まれています。
 
老後の生活資金は世代を経るにしたがって、自分自身で準備する金額もより大きくなっていくことになります。
 

老後の生活資金の必要額は?

老後の生活資金を年金収入や退職金・預貯金などで賄いきれない場合、就労を可能な限り継続して収入を得続ける必要があります。この際、年収はどの程度を目安とすればいいのでしょうか?
 
統計局が発表する家計収支年報(家計調査編)によると65歳以上の2人以上世帯の消費支出は月額約25万円※1となっています。
 
これに対し、公的年金の老齢年金のモデルケース(夫婦2人の老齢基礎年金+夫の厚生年金)の給付額は月額約22万5000円(2023年度)※2です。
 
これを差し引くと年収30万円程度あれば老後の生活費を賄うことはできますが、病気で働けなくなって収入が途絶したり、配偶者が亡くなって老齢給付額が変動したりします。
 
ギリギリの年収では生活条件が変化した際に生活が立ち行かなくなってしまうかもしれません。老齢年金と給与所得で所得税負担が生じない程度を目安に働き、余剰金を貯蓄に回して万が一の際に備えるとよいでしょう。
 

まとめ~老後の生活費はライフステージによって変化する~

老後の生活資金が不足する場合、定年退職後も就労を続けて不足額を補うことになります。
 
平均的な老後世帯の支出額は月額約25万円でモデル世帯の老齢年金給付額は22万5000円のため、不足額は年間30万円ほどとなります。
 
しかし、老後の生活費は生活水準や所有財産などにより世帯間の差が大きいという性質があります。老後の生活資金の見通しを正確に立てるためには、統計による平均値では実体とかい離してしまう恐れがあります。
 
それを避けるためには、世帯ごとの収入と支出を把握し、さらにライフステージが変化した際に世帯収支がどのように変動して老後の生活費に不足額が生じるか否かを予見できるようにし、できるだけ早期に不足額の資金調達方法を検討できるようにしておきましょう。
 

出典

※1 家計調査年報(家計収支編)2022年(令和4年)結果の概要
※2「令和5年4月分からの年金額等について」(日本年金機構)
 
執筆者:菊原浩司
FPオフィス Conserve&Investment代表

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