更新日: 2023.12.18 その他老後

夫が「退職金800万円で老後資金は足りる」と言い張りますが、本来は2000万円ないといけないんですよね……?

執筆者 : 柘植輝

夫が「退職金800万円で老後資金は足りる」と言い張りますが、本来は2000万円ないといけないんですよね……?
老後は退職金があるから十分。そう考えている方は一定数存在しています。しかし、退職金があっても、その額によっては老後の生活を十分に送れない可能性もあるようです。そこで、退職金800万円の夫婦は老後を過ごせるのか、考えてみます。
柘植輝

執筆者:柘植輝(つげ ひかる)

行政書士
 
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

老後2000万円問題について

過去に「老後資金は2000万円必要」とテレビや雑誌、交流サイト(以下SNS)で大きく騒がれました。2023年現在は当時ほどではないものの、今でも老後は必ず2000万円必要だと思い込んでいる方がいるようです。
 
この話の出どころは、金融庁の「金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書」です。ここに、老後毎月約5万円の不足分が生じると、30年間で約2000万円の取り崩しが必要になるといった旨の記載があります。
 
この一部が切り取られて大きく騒がれたことで、いつしか「老後は、年金とは別に2000万円の老後資金が必要となる」といわれるようになり「老後2000万円問題」は生まれたのでしょう。つまり、老後2000万円問題は毎月約5万円を30年間取り崩すことを前提にしたものであり、全ての方に当てはまる問題ではないのです。
 

800万円の退職金では老後資金が足りるとは限らない

総務省統計局の「家計調査」によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯において、年金など含めた実収入は24万6237円となっています。それに対して、不足分も毎月発生しています。額にして2万2270円です。
 
仮に65歳から30年間、夫婦で生活したとすると、不足する金額の総額は801万7200円となります。つまり、統計上、一般的な夫婦の生活を30年続ける場合でも、退職金800万円ではわずかに不足することが分かります。
 
額にして1万7200円とわずかではありますが、統計を基にしたシミュレーションの段階でも不足が生じています。
 
実際に生活してみると、老後の生活には、病気やけが、子どもや孫への支援などで多くの支出が生じる可能性もあります。その点を考えると、必ずしも2000万円までは必要ではないかもしれませんが、800万円の退職金だけでは心もとないといえるでしょう。
 
また、上記は65歳以降の期間で計算しています。定年退職の年齢が60歳であった場合、そこからの5年間についても考える必要があるでしょう。特に年金を65歳から受け取る場合、60歳からの5年間は毎月25万円近い生活費を年金以外で賄わなければなりません。
 
その場合、800万円の退職金で老後を乗り切るのはほぼ不可能だと考えてもいいでしょう。
 

不足する分をどうするか

老後資金が800万円の退職金だけでは不足すると分かったところで、重要なのはその対策です。それにはさまざまな対策が挙げられます。
 
1つは、退職までに老後資金を貯めることです。節約して意識的にお金を貯めることはもちろん、iDeCoやNISAを使って税制優遇を受けながら、効率よく資産形成することも重要といわれています。
 
また、既に老後が差し迫っている状況であれば、老後は就労することも視野に入れる必要があります。老後資金を短期間で貯めることは困難といえるためです。
 
統計上一般的な生活であれば、800万円の退職金に合わせて月2万円や3万円の収入で生活していくことも不可能ではありません。その程度の不足分を賄うだけであれば、シルバー人材センターなどで紹介される、負担の小さい仕事でも十分稼げるはずです。
 

まとめ

夫婦2人で老後を生活するには、退職金800万円だけでは不足することが予想されます。かといって2000万円といった多大な額の老後資金が必要かといわれれば、必ずしもそうではないようです。
 
もし、夫婦で老後資金の額について意見が一致しないのであれば、一度今の生活費から老後の生活費を予算立てし、退職金と年金で生活できるか確認してみるといいでしょう。
 
そうすることで、老後に向けて必要な準備を、夫婦で協力して行っていけるでしょう。
 

出典

家計調査報告(家計収支編)2022年(令和4年)平均結果の概要
金融庁 金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書
 
執筆者:柘植輝
行政書士

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