更新日: 2023.12.25 その他老後

50代で「おひとりさま」の場合、老後働かなくていいのは現役時代の年収が560万円から!?

50代で「おひとりさま」の場合、老後働かなくていいのは現役時代の年収が560万円から!?
「現役時代の年収がどれくらいあれば、老後は働かなくて済むのだろうか」という問題は、誰もが1回は考えたことがあるでしょう。特に50代で、老後に関心の高い「おひとりさま」であればなおさら、この点については気になるのではないでしょうか。
 
そこで、この記事では「おひとりさま」が老後に働かずに済むには、現役時代の年収がどれくらいあればよいのかを考えていきます。
柘植輝

執筆者:柘植輝(つげ ひかる)

行政書士
 
◆お問い合わせはこちら
https://www.secure-cloud.jp/sf/1611279407LKVRaLQD/

2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

まずは老後の生活費と年金額から考えていく

まずは、老後にかかる生活費から考えていきましょう。老後にかかる生活費が少ないほど、老後に働かず過ごすことのハードルも低くなるからです。
 
参考までに、総務省統計局の「家計調査(2022年)」によれば、65歳以上の単身無職世帯における月々の支出は、15万5495円となっています。
 
続いて、現役時代の年収がどれくらいあれば、十分な年金を受給できて、働かなくてよくなるのかを考えていきましょう。将来受け取る年金(厚生年金と共に受け取る国民年金も含む)の支給額は、おおむね現役時代の収入に比例します。先の支出を踏まえると、取りあえず月々16万円の年金を得られれば、働かずに生活していくことができそうです。
 
月々16万円の年金を得られるように、厚生労働省の「公的年金シミュレーター」にて「1970年6月30日生まれ」「20歳から59歳まで厚生年金に加入して就労」という条件で試算すると、現役時代の平均年収は、おおよそ560万円必要になることが分かります。おひとりさまは生活費を比較的少なく抑えられるとはいえ、年金だけで老後に働かず生活することは、簡単ではなさそうです。
 

資産の総額からも考えていく

「老後は働かずに過ごそう」と思ったら、老後資産も重要です。令和4年度において、50歳の方の平均余命は、男性で32.51歳、女性で38.16歳(令和4年簡易生命表の概況「主な年齢の平均余命」参照)となっていることを踏まえ、83歳までは生きると仮定して、いくら必要になるかを考えてみます。
 
60歳で定年を迎えて、そこから83歳までの23年間は年金を使用せずに、資産の切り崩しだけで生活しようと思ったら、毎月15万5495円で生活するにしても、23年間でおよそ4300万円が必要になります。これだけの額を準備できる人は、おひとりさまでもそう多くはないでしょう。そこで「年金とあわせて、足りない部分を資産から切り崩す」という方法を考えていきます。
 
前出の「家計調査(2022年)」によれば、単身・勤労者世帯の平均年収は、443万円程度とされています。仮に年収400万円として、20歳から59歳まで働いたとすると、得られる年金は、年間160万円、月々およそ13万3333円です。
 
すると、65歳から83歳までの18年間で得られる年金は、2880万円になります。23年間の生活費総額である4300万円には、1400万円程度不足しているものの、堅実に生活してきたおひとりさまであれば、50代の時点では、たまっていてもおかしくはない金額でしょう。
 
堅実に貯金などの資産形成をしていることが前提にはなりますが、おひとりさまであれば、年収400万円程度でも、老後は働かずに済む可能性が十分あります。
 

現実的には働くことも検討するべき

すでに50代で老後が差し迫っている場合は、そこから、老後は働かなくても済むようにすることは難しいでしょう。10年足らずの間に、多くの人が数十年かけて行う老後の準備を済ませることは、容易ではないからです。
 
そこで、年金額や保有している資産からシミュレーションして、老後に働かないことが難しそうだと判断したら、逆算して、何時間働く必要があるかを考えていくほうが現実的です。
 
例えば、50代時点で老後資金が600万円しかなく、将来の年金も月々10万円程度しか受け取れないという場合、老後の支出については、65歳から83歳までの年金だけで2160万円、総額2760万円までしか賄うことができません。
 
老後の支出は、60歳から83歳までにおよそ4300万円になると考えると、不足するのはおよそ1540万円であり、月換算すると毎月5万6000円ほどになります。時給1000円で働いても、月56時間ほどの就労で稼ぐことができます。週に3日、4時間から5時間程度になります。まったく働かないわけにはいきませんが、ごく少ない労働時間に抑えることが可能になります。
 

まとめ

いくら、老後は比較的少ない生活費で暮らすことができる「おひとりさま」とはいえ、老後は働かないで生きようとするならば、平均年収が560万円程度必要になるなど、簡単ではなさそうです。年金と老後資産を合わせて生活するにも、ある程度は、老後資金の準備が必要になります。
 
50代と老後が差し迫っている段階ならば、老後は働かずに済む方法を考えるよりも、「老後でも多少は働くもの」と考えて、自身の希望により近い形で、将来に向けて準備をしていくほうがよいのかもしれません。
 

出典

総務省統計局 家計調査年報(家計収支編)2022年(令和4年)家計の概要 図2 65歳以上の単身無職世帯(高齢単身無職世帯)の家計収支 -2022年-(18ページ)、Ⅱ 総世帯及び単身世帯の家計収支  (2) 単身世帯の消費支出は実質1.3%の増加となり、2年連続の実質増加 (14ページ)
厚生労働省 公的年金シミュレーター
令和4年簡易生命表の概況 表1 主な年齢の平均余命
 
※2023/12/25 記事を一部修正いたしました。
 
執筆者:柘植輝
行政書士

PR
FF_お金にまつわる悩み・疑問 ライターさん募集