更新日: 2023.12.22 その他老後

身寄りがない一人暮らし高齢者の場合、貯蓄は500万円以上ないと生活が苦しくなりますか?

執筆者 : 柘植輝

身寄りがない一人暮らし高齢者の場合、貯蓄は500万円以上ないと生活が苦しくなりますか?
高齢化や核家族化、未婚率の上昇など多くの社会問題の影響から、65歳以上の一人暮らしの高齢者が増えているとされています。そして、特に身寄りのない方の中には、頼る方がおらず将来が不安になり、どれくらい貯蓄があれば老後に困らないのか、悩んでいる方もいるようです。
 
そこで、身寄りのない一人暮らしの高齢者は、貯蓄が500万円以上なければ生活が苦しくなってしまうのか、考えていきます。
柘植輝

執筆者:柘植輝(つげ ひかる)

行政書士
 
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

単身高齢者の毎月の不足額はどれくらい?

まずは高齢の単身者にどれくらいの生活費がかかっているか知っておきましょう。総務省統計局の家計調査によれば、2022年の65歳以上の単身無職世帯の実収入は13万4915円となっています。
 
それに対して支出は、2万580円の不足が生じています。つまり、単身者は老後、毎月15万5495円のお金が必要となることが分かります。特に重要なのは毎月2万580円の不足分が生じているという点です。
 
ここから、老後は年金だけで生活するというのは現実的ではないことが分かります。老後は年金に頼るのではなく、年金以外も活用して生活費を確保する方向で考えるべきでしょう。
 
なお、生活費がどれくらい必要になるかは人によりけりです。人によっては「もっと多く、17万円必要」ということもあれば「もっと少なく、15万円以下で事足りる」という場合もあるかもしれません。そのため、具体的にどれくらいの生活費が毎月不足するのかは、自身の現在の生活費を基に考える必要がある、という点に注意しましょう。
 

平均余命まで生きると不足額の総額は何円になる?

では、仮に毎月2万580円の不足額が生じるとして、老後どれくらいの貯蓄があれば生活していけるのか考えていきましょう。
 
厚生労働省の「令和4年簡易生命表」によれば、0歳児の平均余命は男性で81.05歳、女性で87.09歳になっているようです。仮に、両者のほぼ中間の年齢である85歳まで生きると考えます。
 
この場合、65歳から85歳までの20年間で不足するお金の総額は493万9200円となります。ここから考えると、単身者でも、老後はおよそ500万円の貯蓄がなければ生活が苦しくなることが想定されます。
 
しかし、これはあくまでも85歳まで生きる場合の話です。それ以上に長く生きる場合は、500万円の貯蓄では不足します。例えば、90歳まで生きる場合で考えてみましょう。
 
この場合、5年間で不足するのは合計およそ120万円です。すると、25年間で不足する額は総額で617万4000円と、500万円用意した程度では不足します。そのため、平均寿命を参考に、自分が何歳まで生きるかを想定しながら、その年齢に合わせた貯蓄額の準備が必要になります。
 

500万円以上の貯蓄が用意できない場合はどうするのか

500万円以上の貯蓄が難しいという場合は、老後も働いて、年金と貯蓄で不足分を賄うほかありません。身寄りがいない一人暮らしであれば、全てのことを自力で何とかしなければなりません。手持ちのお金がない以上、働かざるを得ないのです。
 
仮に、月2万580円の不足であれば、時給1000円で働いても、21時間ほどで稼げます。一生働きつづけるのが難しいという場合でも、65歳から10年の間は、毎月42時間ほど働き、4万2000円を稼いで貯蓄しておきましょう。そうすることで、その後10年は働かずとも貯蓄の切り崩しで85歳まで生活していくことができるといえます。
 
なお、「お金がなくて生活できないが、病気やけががあり、生活できるくらいの金額を働いて稼ぐことも難しい」という場合は、生活保護を頼ることになります。
 
生活保護は身寄りのない高齢者も、生活が立ち行かない状況にあれば受給することが可能です。「年金など収入があれば受給できない」と思われているかもしれませんが、実はそうではありません。収入があっても、それだけでは生活できない場合には、生活保護の受給ができます。
 

まとめ

身寄りのない一人暮らしの高齢者の場合、身内を頼ることができず、老後は基本的に自分の力で生きていかなければなりません。そのため、貯蓄は少なくとも、65歳の段階で500万円以上確保をしておきたいところです。
 
もし、65歳時点で500万円の貯蓄が用意できない場合、現実的には老後もできるだけ働きつづけるか、生活保護を受けるかのどちらかになるでしょう。
 
いずれにせよ、身寄りがない一人暮らしの場合、老後の生活を作っていくのは自分自身です。早めに生活費と支出を試算し、老後に備えていくようにしましょう。
 

出典

総務省統計局 家計調査報告(家計収支編)2022年(令和4年)平均結果の概要
厚生労働省 令和4年簡易生命表の概況
 
執筆者:柘植輝
行政書士

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