更新日: 2023.12.28 セカンドライフ
老後資金、「年金」だけに依存するとあぶない?
公的年金は最低限の生活資金
私たちの受け取れる年金は、少なくとも65歳から、そして終身受け取ることができる生活資金です。会社員や公務員が加入する厚生年金は、自営業や専業主婦(夫)が加入する国民年金よりは多くの金額を受給できます。年間の受取金額も、厚生年金で350万円、国民年金(基礎年金)で75万円前後が一般的な水準です。
生活費が食費だけの場合は、厚生年金の金額で生活できるかもしれませんが、家賃などの住居費、病気やけがの際に支払う医療費、お付き合いに必要な交際費などが、まったくなくなるわけではありません。介護保険料や健康保険料も、多くの場合は天引きされています。国民年金の受給だけの方は、さらに厳しいことになります。
そのため高齢になる前に、年金収入だけに頼らない生活設計ができるかがポイントになります。年金以外に収入や貯蓄を増やしておく努力が必要になります。特に現役時代の消費生活を定年後もそのまま継続していると、多少の収入があっても、「老後破綻」を迎えることになるかもしれません。
退職後を見据え金融資産を保有
会社員の方は、定年退職する時点で、多少の預貯金や有価証券などの金融資産を保有することができれば、老後の生活資金として利用できます。
例えば、退職時点で、できる限り住宅ローンなどは完済しておくことが望まれます。退職金でローンなどを完済し、残った分は老後資金として確保しましょう。どのくらい老後に向けた金融資産の保有が求められるかは、その方のライフスタイルによっても異なると思います。
さらに定期収入がどのくらいあるかも問題になりますが、少なくとも1000万円から2000万円の金融資産があれば、老後の生活ができるかもしれません。
最近では、少額投資非課税制度(NISA)や個人向け確定拠出年金(iDeCo)といった、現役時代から税制優遇を受け個人の資産形成を支援する仕組みもいくつか導入されています。定年退職を迎え、「さあどうする?」と考えるのではなく、比較的収入が安定している時期に、老後資金の準備をすることが求められます。
また無理のない範囲で賃貸不動産などを所有していれば、退職後も一定の金額が入ってくるため、老後の資金としては役立ちます。ただし、どのような物件を所有するかは慎重に選ぶ必要があります。
価格の安い賃貸アパートに飛びつき購入したとしても、入居者が入らず老後資金に寄与するどころか、維持費がかかり収支が赤字になっては元も子もありません。また不動産購入のための大型ローンを組むことも控えるべきでしょう。
可能であれば勤務を続ける
現在は多くが65歳定年となっているようですが、身分が嘱託などに変わり給与が下がったとしても、勤務をすれば一定の収入は確保できます。収入を得るための手段と割り切ることが大切です。
いままで勤めていた企業に継続して残れる制度があれば、これも重要な選択肢になります。自分の部下だった人間の下で働くのは嫌だ、といった不満は封印すべきです。また給与が下がったとしてもそれを受け入れ、過去の栄光を捨て自分の能力を過大評価しない姿勢が求められます。
また、自分のこれまで培ってきたキャリアを生かし転職も選択肢になります。ここ数年は人手不足が深刻なため、これまでのキャリアを生かした就職先はかなりあると思います。
同じ企業で働くことで、これまでのしがらみから逃げられないと思う場合は、転職により新たな職場を見つけ、気持ちよく仕事ができるかもしれません。場合によっては、厚生年金に加入することも可能になります。そうなれば、就労の延長と年金受給の増額という双方を享受できます。
年金受給の繰り下げを行う
65歳になれば受給できる老齢年金をすぐには受給せずに、将来を見据えた繰下げ受給も1つの選択肢になります。とくに定年退職後、なんらかの仕事に就き収入が得られる場合、例え5年間であっても繰下げ受給を選択すれば、65歳受給に比べ多くの年金額を得ることができます。
金融資産などの保有が十分でない方は、少なくとも再就職により収入を得られるならば、年金をすぐに受給せずに「繰下げ受給」を選択することをおすすめします。多少お小遣いが増える、旅行や外食などに使える、と考え年金をすぐに受け取ることは控えたほうがよさそうです。
年金の受取金額は、受給を1ヶ月遅らせるとごとに0.7%増える計算です。5年受給を遅らせることにより、年金の受取額は、通常に比べ42%増になります。これはかなりの収入増です。再就職先で雇用関係が解消した時点で、年金受給を開始することで、老後の生活も少しは楽になるはずです。
また、国民年金だけに加入されている自営業者やフリーターの方には、独自に積立ができる「国民年金基金」という仕組みがあり、NISAの活用と平行して利用することで老後資金を増額することもできます。以上のような選択肢のなかから、自分に合った制度の活用も検討してみましょう。
執筆者:黒木達也
経済ジャーナリスト
監修:中嶋正廣
行政書士、社会保険労務士、宅地建物取引士、資格保有者。