更新日: 2023.12.27 セカンドライフ

現在55歳の会社員です。あと「10年」は働く予定ですが、60歳以降は「月収15万円」でゆるく働きたいです。老後の年金はどれだけ増えるでしょうか?

執筆者 : 御手洗康之

現在55歳の会社員です。あと「10年」は働く予定ですが、60歳以降は「月収15万円」でゆるく働きたいです。老後の年金はどれだけ増えるでしょうか?
定年の延長や廃止など、高齢者の雇用機会を確保する制度の整備が進んでおり、60歳を過ぎても働く人が増えてきました。今後、高齢になっても働く人の割合はさらに増えてくると考えられます。
 
高齢になっても働き続ける元気と働く環境があれば、できるだけ長く働くことをおすすめしますが、実際に60歳以降も働き続ける場合、年金受給額にどれくらい影響するのか気になる人は多いのではないでしょうか。仮に60歳以降は月収15万円になるとして、どれだけ年金額が増えるのかをシミュレーションしてみましょう。
 
※本記事内の計算は簡略化しているため、正確な情報はねんきんネットやお近くの年金事務所などで確認してください。

月収15万円で65歳まで働くと、年間およそ5万円年金額が増加する

60歳の時点で、国民年金(老齢基礎年金)は40年間分を納付済みとする場合、60歳以降に働いた分で増加する年金額は老齢厚生年金部分となります。
 
老齢厚生年金額を大きく分けると以下の計算式となりますが、このうち報酬比例部分が大部分を占めます。経過的加算は「定額部分(定額部分は老齢基礎年金のイメージ)と厚生年金保険加入期間の老齢基礎年金の差額」ですが、さほど気にする必要はありません。加給年金額は家族構成やその年齢などの条件に合致した場合に加算される年金額です。
 
年金額=報酬比例部分+経過的加算+加給年金額
 
2003年4月以降の厚生年金加入期間による年金額は以下のように計算するので、仮に月収15万円で5年間(60ヶ月)働けば、図表1のように増加する年金額はおよそ5万円となります。
 
報酬比例部分=平均標準報酬額(※)×5.481/1000×加入月数
※実際には平均標準報酬額は月収だけでなく賞与も考慮した金額で計算します。
 
例)月収15万円(賞与含む月平均)で65歳まで5年間働いた場合
15万円×5.481/1000×60ヶ月=4万9329円
 
図表1

日本年金機構の情報より筆者作成
 

働く期間を延長できれば、年金の繰下げ受給もしやすくなる

高齢になっても働いた場合、一定の収入があることで年金の繰下げ受給がしやすくなるメリットも生まれます。
 
年金の「繰下げ受給」は、65歳で年金を受け取らずに66歳以後75歳までの間で繰り下げて受給することで、繰下げた月数×0.7%分だけ年金受給額が増額される制度です。死亡するまで増額された割合の年金額を受給できるため、できるだけ受給開始時期を繰り下げたほうが、安全に、かつ効率的に年金受給額を増やすことができます。
 
一方、「繰上げ受給」は、60歳から65歳になるまでの間に繰り上げて年金を受け取ることで、繰り上げた月数×0.4%分、年金受給額が減額される制度です。
それぞれの最大増減率などは図表2の通りです。
 
図表2

※生年月日等により一部異なります
日本年金機構の情報より筆者作成
 
65歳から受給開始した場合、年間200万円の年金を受け取れるとします。仮に年金の繰下げ受給で70歳から年金受給を開始した場合、年間の年金額は284万円まで増やすことができます。
 
例)年間200万円の年金額の人が5年間繰り下げ受給した場合
年金増額割合=0.7%×60ヶ月=42%
受給年金額=200万円×1.42=284万円
 
年金の繰下げ受給をした場合、仮に早い時期(例えば71歳など)に亡くなると、総受取金額は少なくなるので損をしたように感じるかもしれません。ただし、平均寿命は延びてきており、今後何年生きられるかは誰にもわかりません。年金は受取金額を最大にすることが目標ではないので、将来の経済的なリスクを下げるためにも、可能であれば繰下げ受給をしたほうがよいでしょう。
 

できる限り長い期間働ける環境を探すことも重要

大変な環境で働いている人ほど、早い段階で引退したいと考えることが多いのではないでしょうか。そのような環境で老後も働き続けたほうがいいというつもりはありません。
 
近年では在宅ワークを始め、サイドFIRE(一定割合労働しながらも働く時間を減らし、早期リタイアするイメージ)のような働き方も一般的になりつつあります。前記の通り、収入は少額でも、長く働きながら年金受給を繰り下げたり、資産運用したりすれば大きな効果を得ることも可能です。
 
今後、ある程度年齢を重ねてからは猛烈に働くのではなく、ゆるく長くという働き方も増えてきそうです。将来どのように生きていくのか、経済的な不安なく過ごすにはどれだけ働けば大丈夫なのか、早い段階から模索しておくのもよいかもしれません。
 

出典

日本年金機構 老齢厚生年金の受給要件・支給開始時期・年金額
日本年金機構 年金の繰下げ受給
日本年金機構 年金の繰上げ受給
 
執筆者:御手洗康之
AFP、FP2級、簿記2級

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