更新日: 2023.12.27 介護

介護保険料の支払いは40歳から生涯続く… 介護保険制度について見てみよう!

介護保険料の支払いは40歳から生涯続く… 介護保険制度について見てみよう!
介護保険は健康保険などと同様に、介護にかかる負担を、個人や家族だけでなく社会全体で支える制度です。
 
厚生労働省の調査によると、要介護の認定率は、65~69歳で2.8%ですが、80~84歳では26.4%、85歳以上では57.8%と、加齢とともに急速に高まります(「令和4年版 厚生労働白書-社会保障を支える人材の確保-」より抜粋)。
 
40歳になると介護保険に加入し、介護保険料を生涯負担することになりますが、この制度は要介護(要支援)の状態になったときに頼りになります。本記事で、介護保険の内容について見ていきましょう。
水上克朗

執筆者:水上克朗(みずかみ かつろう)

ファイナンシャルプランナー、CFP(R)認定者、1級ファイナンシャルプランニング技能士、DC(確定拠出年金)プランナー

介護保険の第2号被保険者(40~64歳)と第1号被保険者(65歳以上)との違い

40歳から64歳までの間は、介護保険の「第2号被保険者」となります。
 
第2号被保険者のうちは、保険料を支払っていても、介護保険による介護サービスを利用できるのは「加齢に伴って生ずる心身の変化に起因し要介護状態の原因である心身の障害を生じさせると認められる疾病(初老期における認知症・脳血管疾患など「16種類の特定疾病」)」に該当したときのみとなっています。
 
しかし、65歳からは「第1号被保険者」となり、各種介護サービスの対象となります。
 
また、介護保険料は、第2号被保険者の場合は、健康保険料と一緒に納めます。会社員や公務員の場合は給与から天引きされ、自営業などの場合は、支払う国民健康保険料に上乗せされます。
 
一方、第1号被保険者の場合は、「介護保険料」として単独で支払うことになります。具体的には、年金額が年18万円以上の人は年金から天引き、年18万円未満の人は納付書を使って支払います。
 


厚生労働省「介護保険制度の概要 1. 介護保険とは」より筆者作成
 

介護サービスは介護認定を受けることで利用できる

介護サービスを利用するには、市区町村の窓口で要介護認定(要支援認定)の申請を行う必要があります。市区町村に申請すると、職員からの聞き取り調査や主治医の意見書をもとに、可否も含め要介護度が判定されます。そうして、要支援1・2、要介護1~5の7段階の要介護度に認定されます。
 
介護サービスは、介護保険施設等の施設に入所しサービスを受ける「施設系・居住系サービス」と、通所介護(デイサービス)や訪問介護(ホームヘルパー)など、自宅にいながら介護保険のサービスを受ける「在宅系サービス」があります。
 
その利用限度額は、要介護度に応じて決められます(図表2参照)。要介護度が高いほど、利用限度額も高額になります。また、自己負担額の割合は、利用者の所得によって決まります。この割合は通常1割ですが、所得が多い人は2割・3割負担となります。
 


厚生労働省「介護事業所・生活関連情報検索 サービスにかかる利用料」より筆者作成
 
ちなみに、利用者負担割合の判定基準は、年金収入などが463万円以上(夫婦世帯の場合。単身世帯は340万円以上)の場合「3割」、346万円以上(上に同じ。単身世帯は280万円以上)の場合「2割」、これ以外は「1割」となっています。
 
また、介護サービスを利用した1ヶ月の自己負担額が一定の上限額を超えた場合に、その超えた部分が払い戻される「高額介護サービス費」という制度もあります。
 
これは介護費用の負担を一定の上限額までにできる、ありがたい制度です。負担限度額(図表3参照)は、例えば「住民税課税~課税所得380万円(年収約770万円)未満」の場合で、月額4万4400円になります。
 

厚生労働省「令和3年8月利用分から高額介護サービス費の負担限度額が見直されます」より筆者作成
 

介護保険料は増額される見通し

第1号被保険者の介護保険料は、市区町村ごとに決められ、3年ごとに改定されています。所得によって9段階前後に分けられ、負担する保険料が異なります。2021~2023年度の第1号介護保険料の平均は月額6014円ですが、今後高齢者が増えることによって、介護保険料は増額される見通しです。
 
第2号被保険者の介護保険料は、月給と賞与に、加入している公的医療保険制度ごとに定められた保険料率をかけた額です。会社員や公務員の1人当たりの保険料率は、健康保険組合連合会(けんぽれん)で平均1.78%、全国健康保険協会(協会けんぽ)で1.82%となっています。
 
この保険料は原則として勤務先と被保険者が折半して負担し、月給や賞与から天引きされたうえで、介護納付金として国に納付されます。
 
40歳以上の医療保険被保険者の被扶養者(会社員や公務員の妻など)の保険料は、原則として別途納付する必要はありません。
 
自営業者など国民健康保険の加入者の場合は、本人の所得等に応じて市町村が定め、国民健康保険料に上乗せして徴収します。公益財団法人生命保険文化センターの統計によれば、市町村国民健康保険の介護納付金分の平均月額は約6310円(2020年度概算)で、そのうち半額は公費負担です。
 

まとめ

介護保険料の支払いは、満40歳に達したときから、生涯続きます。将来介護になった場合、重要なセーフティーネットになりますので、忘れず支払いましょう。
 

出典

厚生労働省 令和4年版 厚生労働白書-社会保障を支える人材の確保- 図表2-1-4 年齢階級別の要介護認定率
厚生労働省 介護保険制度の概要
厚生労働省 特定疾病の選定基準の考え方
日本年金機構 Q 年金から介護保険料・国民健康保険料(税)・後期高齢者医療保険料・住民税を特別徴収されるのはどのような人ですか。
厚生労働省 介護事業所・生活関連情報検索 サービスにかかる利用料
厚生労働省 給付と負担について(参考資料)
厚生労働省 令和3年8月利用分から高額介護サービス費の負担限度額が見直されます
 
執筆者:水上克朗
ファイナンシャルプランナー、CFP(R)認定者、1級ファイナンシャルプランニング技能士、DC(確定拠出年金)プランナー

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