更新日: 2023.12.28 セカンドライフ
【老後相談】夫婦ともに非正規雇用です。老後資金が心配なのですが、どのように準備したらよいですか?
執筆者:三藤桂子(みふじけいこ)
社会保険労務士、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、FP相談ねっと認定FP、公的保険アドバイザー、相続診断士
大学卒業後、公務員、専業主婦、自営業、会社員、シングルマザーとあらゆる立場を経験した後、FPと社会保険労務士の資格を取得し、個人事業主から社会保険労務士法人エニシアFP を設立。
社会保険労務士とFP(ファイナンシャルプランナー)という二刀流で活動することで、会社側と社員(個人)側、お互いの立場・主張を理解し、一方通行的なアドバイスにならないよう、会社の顧問、個別相談などを行う。
また年金・労務を強みに、セミナー講師、執筆・監修など首都圏を中心に活動中(本名は三角桂子)。
非正規雇用とは?
非正規雇用とは、雇用契約の中で、有期雇用・契約社員・派遣社員・パートタイマー・アルバイトなどで働く人のことです。正規雇用でない雇用形態で、期間の定めや短時間勤務等、働き方は人それぞれです。
非正規雇用の人は正規雇用の人に比べ、給与や手当、賞与や退職金などが劣ることがあり、さらに、有期雇用であれば、更新の有無で不安になることもあります。
2022(令和4)年賃金構造基本統計調査の概況では、雇用形態別の40~44歳の年齢階級の賃金をみると、男女計で、正社員・正職員347.5千円に対し、正社員・正職員以外217.6千円となっていて、正社員と正社員以外とで129.9千円の差があります。
長く働くことを希望するのであれば、一般的に正規雇用のほうが安心です。正規雇用であれば、雇用期間の定めがないため、 労働者本人が自ら離職するか、業績悪化などの理由で会社が倒産しない限り雇用契約は続くからです。
老後の年金の考え方
老後、すなわち働けなくなった時の備えとなる年金。Aさん夫婦のように保険料を納付し続けていれば、国民年金部分である老齢基礎年金は79万5000円(2023年度満額)と、厚生年金保険に加入している期間は、上乗せの老齢厚生年金を、原則65歳から受け取ることができます。
会社員や公務員などが加入する厚生年金保険部分である老齢厚生年金は、加入期間だけでなく、報酬額(給与)によっても異なります。スキルアップしながら、転職をするのであれば、報酬額も増えるので、老後資金の心配は軽減できると考えられます。
しかしながら、非正規雇用の人は正規雇用の人に比べ、賃金が低額になることが多いため、今後の働き方(雇用契約)を考えることも必要かもしれません。
有期雇用は無期転換に
非正規雇用の中で、有期雇用として働いている人が、長く働くことを希望するのであれば、5年経過で無期転換できるルールをご存じでしょうか。
無期転換ルールとは、同一の使用者(企業)との間で、有期労働契約が更新されて通算5年を超えたときに、労働者の申し込みによって無期労働契約に転換されるルールです。
有期雇用の人は更新の有無などで不安になる人がいます。同じ職場で長く働くことを希望するのであれば、無期に転換するのも一案です。
扶養から外れて自ら社会保険に加入する
Aさんの妻は扶養内でパート勤務していますが、妻自身で社会保険に加入する働き方を選択するのも良いでしょう。
妻自身で社会保険に加入すると実際の手取額は、保険料分が減額(控除)されます。しかしながら、扶養の範囲内で就労調整することなく、働くことができます。また、社会保険(厚生年金保険)に加入することで、妻自身の年金を増やすことができます。
扶養内、すなわち国民年金第3号被保険者の期間の高齢期に受け取る年金は、老齢基礎年金のみとなるため、老後資金として年金を増やすには、妻自身が厚生年金保険に加入することをお勧めします。
現在、適用拡大によって、今までと同じ給与でも会社の規模(被保険者人数)によって、社会保険に加入するように変わっています。
また、社会保険に加入するメリットとして、健康保険の制度では、「傷病手当金」があります。万一、病気やケガで働けない期間の生活保障として、傷病手当金が給与の約3分の2を受け取ることができます。
老後資金にはiDeCoを活用
Aさん夫婦の老後資金の準備としては、今後の働き方を見つめ直してみることをお勧めします。現在、40歳のAさんであれば、定年までの期間が長いため、厚生年金保険に加入し、スキルアップしながら、公的年金を増やすには十分な期間があります。
まずは、終身年金である公的年金(老齢年金)を増やすことを考えとよいでしょう。さらに公的年金に上乗せ老後資金として準備するなら、私的年金であるiDeCo(個人型確定拠出年金)の加入を検討します。
iDeCoは、老後の資産形成を目的とした年金制度です。さらに、現役世代から、税制の優遇が受けられるメリットがあります。
Aさん夫婦は、将来に向かって、働き方、資産形成の両方について、夫婦で話し合い、検討してみてはいかがでしょうか。
出典
厚生労働省 無期転換ルールについて
厚生労働省 令和4年賃金構造基本統計調査の概況
執筆者:三藤桂子
社会保険労務士、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、FP相談ねっと認定FP、公的保険アドバイザー、相続診断士