更新日: 2023.12.27 セカンドライフ

世帯年収1500万円の「公務員」夫婦は、年金と退職金だけで老後に「余裕な暮らし」ができる?

執筆者 : 柘植輝

世帯年収1500万円の「公務員」夫婦は、年金と退職金だけで老後に「余裕な暮らし」ができる?
安定して収入が増加していく公務員夫婦であれば、世帯年収が1500万円を超えることもあります。世帯年収がそれだけあれば、老後は退職金と年金だけで、余裕のある暮らしができると思っている方もいるでしょう。
 
そこで、世帯年収1500万円の公務員夫婦は、実際にそのような暮らしができるのか考えてみました。
柘植輝

執筆者:柘植輝(つげ ひかる)

行政書士
 
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

公務員の退職金はどれくらいになる?

まずは、公務員に支給される退職金の額が、どれくらいになるのか確認してみましょう。
 
総務省の「令和3年 地方公務員給与の実態」によれば、25年以上勤めた場合における退職金等の支給総額は、全地方公共団体の全職員の平均で、2180万4000円となるようです。
 
夫婦同額として合わせると、なんと4360万8000円になります。老後資産として、仮に65歳から90歳までの25年間でこの額を切り崩した場合でも、年間でおよそ174万円もの額を使うことができます。
 

年金はどれくらいもらえる?

公務員も一般的な会社員と同じく、国民年金と厚生年金に加入しており、65歳からそれらを受け取ることができます。仮に標準報酬月額の平均を40.6万円とし、40年加入した場合、厚生年金の報酬比例部分だけでも106万8137円受け取ることができます。
 
また、令和5年度の国民年金(79万5000円)も合わせると、年金の総額は1年で186万3137円となります。さらに、公務員独自の給付である終身年金と有期年金とを合わせると、受け取れる年金総額は200万円以上になります。夫婦合わせると、合計で400万円以上を受け取れることになります。
 
世間では「現役世代にしては普通くらい」といわれることもある400万円以上の収入を年金だけで得られていることから、世帯年収が1500万円ある公務員世帯は、一般的には老後を過ごすのに十分な額の年金を得られると想定されます。
 

老後破産には注意

退職金は4360万円超、年金は年間で400万円超と、非常に余裕のある暮らしができるのが公務員世帯の強みです。
 
しかし、老後破産をしないように注意が必要です。世帯年収が1500万円もあると、仮に老後は年金と退職金とで年換算500万円程度の消費を行えるとしても、現役時代ほど多くのお金は使えません。
 
例えば現役時代に年間800万円の消費をしていた場合、老後も同じ生活をしていれば年間で300万円の赤字が生じることになり、15年足らずで老後資金を食いつぶしてしまい、老後破産することにもなりかねません。
 
仮に、夫婦で90歳まで生きるとすると、年間で使用できる年金と退職金の額は、約586万円となります。参考までに、総務省統計局の「家計調査年報(家計収支編)2022年(令和4年)結果の概要」によれば、2022年における夫婦高齢者無職世帯の支出は26万8508円となっています。年換算で322万2096円です。
 
一般的な生活に比べて余裕のある暮らしができる反面、現役時代ほどの収入も得られず退職金にも限りがあるため、老後破産をする可能性があることも確認しておくべきでしょう。
 

まとめ

世帯年収1500万円の公務員夫婦であれば、退職金と年金だけで、一般的な夫婦と比べて老後は余裕のある暮らしができることが分かりました。
 
しかし、それも「一般的な世帯と比較した場合」という話であり、「老後は自由に散財しても老後破産をする心配がない」というわけではありません。現役時代の収入がいくら高くても、年金と退職金だけでは、老後に現役時代と同じだけの生活を続けていれば、いずれ破産する可能性が高いです。
 
老後の生活を考えるに当たっては、余裕のある暮らしをすることよりも、老後資金を最大限活用できるよう、堅実な生活をするようにした方がよいかもしれません。
 

出典

総務省 令和3年 地方公務員給与の実態 第9表の1「団体区分別、職員区分別、退職事由別、年齢別退職者数及び退職手当額」
地方公務員共済組合連合会 共済組合員の皆さんへ 年金払い退職給付制度に係る付与率・掛金率等について
日本年金機構 令和5年4月分からの年金額等について
総務省統計局 家計調査年報(家計収支編)2022年(令和4年)結果の概要
 
執筆者:柘植輝
行政書士

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