更新日: 2024.01.05 定年・退職

59歳会社員。もうすぐ定年退職なのですが、退職金の「1500万円」は手取りでどれだけ残りますか? 一括で受け取って大丈夫でしょうか?

執筆者 : 御手洗康之

59歳会社員。もうすぐ定年退職なのですが、退職金の「1500万円」は手取りでどれだけ残りますか? 一括で受け取って大丈夫でしょうか?
経済財政運営と改革の基本方針2023(いわゆる骨太方針)の中で、退職所得課税制度の見直しが取り上げられていることが注目されました。
 
現行制度では、同一企業で働く期間が長いほど税負担が軽くなるため、転職への意欲を阻害しているという指摘から改革が模索されているそうです。今後どのようになるのかは未定ですが、これから退職を迎える人にとっては、今後受け取る退職金が減ってしまうのか気になるニュースでしょう。
 
退職金といっても、すべてを手取りとして受け取れるとは限りません。実際に退職金がどれだけの金額が手取りで残るのかを確認してみましょう。

退職金の受け取り方法による違い

退職金の受け取り方法は大きく分けると以下の3つに分けられます。お勤めの会社によって可能な受け取り方法は異なりますので、詳しくはお勤めの会社で確認してください。

●一時金(一括)で受け取る
●年金払いで受け取る
●一時金と年金払いを併用して受け取る

退職金にかかる税金は、受け取り方法によって計算方法が変わります。受け取り方法として多くの人がイメージするのは一時金として受け取る方法ではないでしょうか。これは所得税などを計算するときに10種類に分けられている所得の区分のうち、「退職所得」にあたるものです。冒頭で紹介した退職課税制度の見直しも退職所得に関連する部分を示しています。
 
一方、年金払いで受け取る退職金は「雑所得」に該当するものです。公的年金なども雑所得の所得となります。退職金の受け取り方法として、一時金受取と年金受取のどちらが優れているということはありません。
 

退職金1500万円だと勤続年数20年と40年では手取り額に約100万円の違いが

一時金として受け取る場合、退職所得の控除額および課税金額は以下のように計算します。
 
退職所得課税金額=(退職金-退職所得控除額)×1/2
 
図表1 退職所得控除額の計算

国税庁 退職金と税から抜粋
 
勤続年数が20年までは毎年40万円分が控除される計算です。20年以上の場合はそれ以降毎年70万円に増額されます。

例)勤続年数による退職所得控除額の違い

(1)勤続年数39年3ヶ月の人の場合
勤続年数40年(1年未満は切り上げ)
退職所得控除額=800万円(40万円×20年間)+70万円×20年間=2200万円
 
(2)勤続年数18年10ヶ月の場合
勤続年数19年
退職所得控除額=40万円×19年=760万円

つまり、タイトル通り1500万円の退職金であっても、その人の勤続年数によっても手取りで残る額は変わるということです。仮に(2)の場合、税金を考慮した手取り額の概算は約1400万円となるので、勤続年数が20年と40年では同じ退職金の額面でも、手取りでは100万円以上の差がでます。

課税所得:(1500万円-760万円)×1/2=370万円
所得税:370万円×0.2(20%)(※1)=74万円
復興特別所得税:74万円×0.021(2.1%)≒1.6万円
住民税:370万円×0.1(10%)(※)=37万円
退職金手取り:1500万円-74万円-1.6万円-37万円≒1387万円

※1.所得税の税率は課税所得によって異なります
※2.住民税は10%として計算

 

手取りの額だけでなく、使い道も検討すべき

一般的には、一時金として受け取ったほうが退職所得控除額は大きく、手取りとして有利になるといわれています。また、ローンの繰上げ返済に退職金を利用するといったように、計画的に活用することは効果的な退職金一時金受け取りの使い道だといえます。
 
ただし、一時金として受け取る場合、一時的にお金に余裕ができることから、無駄な出費が増えやすいといったリスクがあります。手取りの金額は意識しながらも、どのように受け取るのが自分にとってよいのか、退職金の使い道を事前にじゅうぶんに検討しておくことも重要だと覚えておいてください。
 

出典

内閣府 経済財政運営と改革の基本方針2023
国税庁 退職金と税
国税庁 No.2260 所得税の税率
 
執筆者:御手洗康之
AFP、FP2級、簿記2級

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