更新日: 2024.01.18 セカンドライフ
定年までに「2000万円」貯める予定です。これで老後は安泰でしょうか。
そこで、定年までに老後資金として2000万円を貯めれば老後が安泰するのか、考えていきます。
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
老後2000万円問題の根拠
老後2000万円問題にもきちんと根拠はあります。その一つが、金融審議会で提言された「金融審議会市場ワーキング・グループ報告書」内での報告です。
その中では、平均的な夫婦の老後の収支をモデルケースに挙げ、老後の年金収入などだけでは不足する部分について「保有する金融資産から取り崩していくこととなる」とし、毎月約5万円の赤字が発生すると試算しています。それが30年続くと、約2000万円の資産の取り崩しが必要となると考えられています。
ここから、世間の「老後2000万円問題」の考え方には、重大な見落としがあることが分かります。それは、誰でも2000万円の老後資金が必要であるとは限らないという点です。今回の報告書内では、あくまでも月5万円の不足が30年続いた場合で試算されています。
人によっては5万円の不足が40年続く可能性もありますし、10万円の不足が30年続くかもしれません。
このように、老後2000万円問題を考えるにあたっては「誰でも老後は2000万円が必要だ」と固定観念を持っていると、老後資金として過剰な額を用意してしまったり、逆に2000万円用意しても老後資金が不足したりする可能性があります。
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実際にどれくらい必要なのか
これまで見てきたように、定年までに2000万円貯めたとしても、老後の生活が安泰であるとは限りません。まずは直近の状況から見ていきましょう。
総務省統計局の2022年度「家計調査」によれば、65歳以上の夫婦のみの無職世帯においては、収入額に毎月2万2270円の不足が生じています。
こちらを基に、仮に老後の生活が30年続くと仮定すると、必要な不足額はおよそ800万円です。金融審議会においては2000万円もの額が必要と試算されていましたが、平均的な生活を送るだけであれば、実際にはそこまでの額が必要というわけではないのです。
しかし、毎月の不足額が3万円になれば、30年で不足する額は1080万円になります。これが6万円となれば2000万円を超えます。
なお、上記の仮定には注意点があります。それは突発的かつ大きな支出が考慮されていない点です。こういった統計は、ある世帯の一定の時期を切り取り、それを集計して試算しています。そのため、平均的な日常の支出こそ分かるものの、突発的な支出については反映されていません。
家族が病気やけがをしたり、車の買い替えや家のリフォームが必要になったりするなど、人生においてお金のかかる出来事は多くあります。そういったことを踏まえると、日々の生活に必要な不足額は800万円程度でも、突発的な支出が生じた場合、2000万円では足りない可能性も十分あります。
2000万円で足りない部分はどうするか
どうしても老後を安定させたいというのであれば、2000万円を定年までに普通貯金だけで貯めるのではなく、投資信託などで資産形成をするのもいいでしょう。老後へ向けた資産形成の手段としては、iDeCoやNISAがあります。
例えば、毎月6万円を30年間貯金すると2160万円になります。貯金額が2000万円を超えた場合、人によっては安泰な生活ができるかもしれませんが、病気やけがで医療費がかさむなど場合によっては老後資金が尽きる可能性もあります。
しかし、その6万円を年利5%で30年間運用しつづけることができれば、運用益が2800万円を超え、元利合計で5000万円近い額の老後資金を確保できます(金融庁の資産運用シミュレーションにて計算)。
まとめ
定年までに2000万円貯めると、一般的な生活費と比べれば、老後資金としては安心できる額になります。
しかし、2000万円貯めれば必ずしも老後の生活が安泰になるわけではなく、統計から外れた収支であったり、何らかのイベントが起きたりすれば、老後資金が不足する可能性もあります。
定年後にいくらあれば安泰な生活をすることができるかは、個別の事情によって変わります。2000万円とはいわず、一度自身のライフプランを想定し、必要な資金を試算してみることをおすすめします。
出典
金融庁 金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」
金融庁 資産運用シミュレーション
総務省統計局 家計調査年報(家計収支編)2022年(令和4年)家計の概要
執筆者:柘植輝
行政書士