更新日: 2024.01.22 定年・退職

定年後の再雇用で給与が下がるのは「合法」なの?

執筆者 : 柘植輝

定年後の再雇用で給与が下がるのは「合法」なの?
定年後の再雇用で給与が下がった、という話を聞いたことはないでしょうか。実際に勤務先の給与形態がそのようになっており「元上司も再雇用時に給与が下がった」ということを見聞きした方もいるでしょう。
 
そこで、定年後の再雇用で給与が下がるのは有効なのか、考えてみました。
柘植輝

執筆者:柘植輝(つげ ひかる)

行政書士
 
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

定年後の再雇用時は、給与が下がるのが一般的

国税庁の「令和4年分民間給与実態統計調査」によれば、1年を通じて勤務した給与所得者の場合、年齢階層別の平均給与(男女計)は55歳~59歳の時点の546万円がピークになっており、60歳~64歳のときには441万円と、一度ガクッと落ちています。おそらくこれは60歳時に定年を迎え、その後再雇用などを利用した際に、給与が下がってしまうことが原因だと考えられます。
 
また、65歳~69歳において、平均給与は342万円となり、類似した動きで落ちています。こちらも、65歳が定年の会社で再雇用を利用して勤務を続ける方が増えたため、それ以前よりも給与が下がっているのだと思われます。
 
もちろん再雇用以外にも、再就職やキャリアチェンジなどを経て、給与が大きく下がっている可能性もあります。とはいえ、大企業中心に再雇用が積極的に行われている昨今、再雇用も給与低下の理由の一つとして、十分考えられるでしょう。
 

定年後の再雇用で給与が下がることは許されるのか

定年後の再雇用で給与が下がることは珍しくないとはいえ、場合によっては違法となることがあります。
 
定年後の再雇用は、契約社員など有期雇用契約になることが一般的です。すると、正社員と比較した場合「同一労働同一賃金」の問題が発生します。同一労働同一賃金とは、正規雇用であるか非正規雇用であるかに関係なく、同一の業務を行っている場合は同一の賃金を受け取るべきだ、という考え方です。
 
そのため、定年後の再雇用で、仕事内容などが変わらないのに給与が下がる場合は、違法となる場合があります。実際、令和5年7月20日に最高裁で下された判決においても「定年時月額18万1640円だったある職員の給与が、再雇用後は7万4677円まで下がった」というケースが、いわゆる不合理な格差(同一労働同一賃金に違反する)とされています。
 

定年後の再雇用で給与が下がることが、違法でないこともある

先に紹介した判例においては、定年後の再雇用時に給与が下がることが「違法」とされました。しかし、実際にはそれが認められる場合もあります。それは同一労働同一賃金に反しない場合です。
 
同一労働同一賃金は、必ずしも労働条件が同一でなければならないというわけではありません。違いがあれば、それに応じて給与額が異なることは是認されています。
 
例えば、「定年後の再雇用によって責任の程度が軽くなり、職務範囲も変更となった結果、定年前40万円だった給与が20万円に下がった」と考えてみましょう。その待遇が同様の地位で、かつ他の一般従業員と同様であれば、それは同一労働同一賃金に違反せず、認められる可能性が高いと考えられます。
 

まとめ

定年後の再雇用によって給与が下がることは、決して珍しくありません。実際、待遇や責任の程度、職務内容の変更に伴う減額の場合、認められる可能性は十分あります。とはいえ、定年後に給与が下がると一概には言い切れず、ケース・バイ・ケースの判断がなされます。
 
もし、定年後の再雇用時に給与が著しく下がったという場合、労働基準監督署に相談してみることをおすすめします。そうすることで、解決する可能性があるでしょう。
 

出典

裁判所 令和4年(受)第1293号 地位確認等請求事件
国税庁 令和4年分 民間給与実態統計調査
 
執筆者:柘植輝
行政書士