更新日: 2024.01.29 定年・退職
勤続15年目で年収350万円ですが、定年後も年金以外の「収入」を得ないときついでしょうか?
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
年収350万円で将来受け取れる年金額はどれくらい?
まずは、年収350万円で受け取ることのできる年金額の試算をしてみましょう。計算には厚生労働省の公的年金シミュレーターを用い、条件は下記のように設定します。
・1985年6月11日生まれ
・20歳から21歳までは学生として国民年金に加入(付加納付有)
・22歳から59歳までは年収350万円で就労し厚生年金に加入
この場合、65歳から受け取ることのできる年金額は年間146万円となりました。月額換算するとおよそ12万2000円です。厚生労働省「令和3年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、令和3年度末の厚生年金受給者の平均額は月額14万4000円のため、これは平均より2万2000円ほど低い額となります。
なお、「勤続年数15年で年収350万円」という収入も、平均より低い額となります。国税庁の民間給与実態統計調査によると、勤務年数15年から19年の場合、男女計での平均年収は528万円となっています。
同世代と比べて収入が限られている以上、年収350万円の方は老後の準備をより念入りに行うことが必要となるでしょう。
12万2000円の年金のみで生活はきつい
定年後、65歳から月換算12万2000円の年金のみで生活することは、そう簡単ではないと考えられます。
総務省統計局の家計調査によると、月々の支出は65歳以上の夫婦のみの無職世帯でおよそ27万円、65歳以上の単身無職世帯でおよそ16万円となっています。
夫婦のみの世帯・単身世帯ともに、12万2000円の年金のみで生活することは厳しいものがあるでしょう。仮に、夫の収入が厚生年金12万2000円、妻の収入が国民年金およそ6万5000円という夫婦の場合、世帯の合計収入は18万7000円となり、平均的な月々の支出27万円には遠く及びません。
年金だけでは厳しくとも、十分な貯金があれば暮らしていけるのでは? と思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、例えば単身世帯で考えた場合、毎月の不足金額はおよそ3万8000円ですが、年間では45万6000円となり、老後の生活が20年間続くと仮定すると総額912万円も必要になります。
このように、年金のみで生活するためには、単身世帯でも1000万円近くの貯金が必要となります。不可能ではありませんが、そう簡単なことでもないでしょう。
定年後の収入は年金以外の何で得るべき?
定年後の収入確保策としては、労働が最も現実的です。勤務先での再雇用や他社への再就職などが有効です。正社員や契約社員であれば、月々15万円以上の手取り収入を得ることも不可能ではないでしょう。
12万2000円の年金に15万円の手取り収入があれば、単身世帯はもちろん夫婦のみの世帯であっても生活していくことができそうです。また、月に10万円程度であれば、時給1000円前後のパートやアルバイトとして無理のない範囲で稼ぐことでも可能でしょう。
なお、定年後は「働かずに不労所得を」などといわれることもありますが、投資や起業などは基本的にリスクの高い行為であり、想定どおりの利回りが得られないことも珍しくありません。
もし、投資での資産運用や不労所得を狙うのであれば、iDeCoやNISAを通じた資産運用程度にとどめておくことをおすすめします。
まとめ
「勤続15年で年収350万円」は、同程度の勤続年数の正社員の平均年収より低く、老後の年金収入も平均より低い12万2000円程度になると推測されます。
統計上の平均的な生活費を踏まえると、年金だけではなく、労働によっても収入を得なければきつい生活となる可能性が高いでしょう。
老後の生活を安定させるためにも、今一度今後の収支を予測し、労働によって収入を得ることも検討してみることをおすすめします。
出典
厚生労働省 公的年金シミュレーター
令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概要
国税庁 令和4年分 民間給与実態統計調査
総務省統計局 家計調査報告(家計収支編)2022年(令和4年)平均結果の概要
執筆者:柘植輝
行政書士