更新日: 2024.02.08 その他老後
「公的年金だけでは不十分」79.4%の結果に…本当に老後資金は「2000万円」で足りるのか
過去には「老後2000万円問題」が大きな話題となりましたが、こういった調査結果を見ると、本当に老後資金は2000万円で足りるのかと心配になる方もいるでしょう。そこで、老後資金についてあらためて考えてみます。
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
老後2000万円問題とは? その根拠は?
老後2000万円問題は、金融庁の金融審議会 市場ワーキング・グループが2019年に公開した報告書「高齢社会における資産形成・管理」の内容に端を発しています。
この報告書では、高齢夫婦無職世帯の平均的な収支では毎月約5万円の不足が生じ、それを補てんするために老後の30年では約2000万円の金融資産の取り崩しが必要になると試算されています。
しかし、老後2000万円問題は断片的に報道され、多くの場合は試算の条件などの詳細は明示されず、単に老後資金として2000万円が必要だという内容が世間に広く浸透することになりました。
その結果、2000万円あれば老後は安泰かと思う方も出てくるようになりました。しかし、実際には2000万円ではまったく足りないという世帯もあるでしょう。
老後資金が2000万円では足りないのはどんな世帯?
老後2000万円問題の発端となった金融庁による試算は、1ヶ月の平均的な実収入が約21万円、実支出が約26万円で、赤字額が5万円となるという夫婦2人の無職世帯での想定です。
老後に公的年金だけで夫婦2人世帯が月21万円以上の収入を得るには、会社員として平均的な収入で40年間就業した夫と専業主婦の妻が受け取る標準的な年金額が必要です。
また、自営業などで夫婦ともに国民年金のみ加入という世帯では、2人分の満額の老齢基礎年金を受け取っても令和6年度で月13万6000円(1人当たり月6万8000円)です。
こちらの場合、老後2000万円問題で試算の基となっている平均支出に対し、毎月13万円近くの不足が生じ、単純計算では30年間での総額は2000万円どころか、倍以上の金額が不足することになります。
ただし、老後の収入や支出の目安としては、総務省の最新の家計調査の結果も参考にする必要があるでしょう。
2022年度(令和4年度)の家計調査年報によると、65歳以上の夫婦のみ無職世帯での1ヶ月の平均的な実収入は24万6237円、実支出は26万8508円となっており、毎月の不足額は約2万2000円です。
また、老後資金がどれくらい必要なのか試算するために、将来受け取れる年金の見込み額も把握しておきましょう。年金の見込み額については、年に1回送られてくる「ねんきん定期便」のほか、マイナポータルから「ねんきんネット」を利用して確認することができます。
公的年金だけでは不十分と感じたときは?
老後資金が実際に不足するのか、その場合に不足額はどの程度となるのかは世帯によっても異なりますが、近年は物価高が続いているほか、賃金の伸び悩みなどもあり、冒頭の調査結果のように老後の生活に対して公的年金だけでは不十分と感じるのは珍しいことではありません。
公的年金だけでは老後の生活が不安だと考えている場合は、例えば以下のような対策を検討してください。
●iDeCo(個人型確定拠出年金)やNISA(少額投資非課税制度)を始めて、老後に向けた資金形成を行う
●収入を増やす、または支出を減らし、その分を老後資金として貯金しておく
とはいえ、既に50代後半や60代前半など老後の生活が目前に迫っている場合は、上記の方法では間に合わない可能性もあるでしょう。そういったケースでは老後も可能な範囲で就労を続け、年金以外に収入を得ることを考えておく必要があります。
まとめ
老後2000万円問題が一時期に話題となりましたが、実際には2000万円以上の老後資金が不足することもあることが分かりました。
そのため、2000万円あれば老後は大丈夫と安心せず、年金の見込み額や老後の生活費の目安から、どれくらい老後資金が必要になりそうか試算しておくことが大切です。
公的年金だけでは不十分と感じるなど、老後の生活に不安がある場合、早めの対策のほか、老後の就労なども検討することをおすすめします。
出典
公益財団法人 生命保険文化センター 老後の生活にどれくらい不安を感じている?
金融庁 金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書 「高齢社会における資産形成・管理」
厚生労働省 令和6年度の年金額改定についてお知らせします
総務省 家計調査年報(家計収支編)2022年(令和4年) 結果の概要
執筆者:柘植輝
行政書士