定年後に「1000万円」の老後資金があれば「老後破産」を防ぐことはできますか?

配信日: 2024.02.20

この記事は約 3 分で読めます。
定年後に「1000万円」の老後資金があれば「老後破産」を防ぐことはできますか?
日々変わりゆく社会制度もあり、現役世代の多くが老後に不安を抱えています。しかし、実質賃金の伸び悩みも続くなか、簡単に必要な老後資金を確保できる方ばかりではありません。
 
そこで、「老後資金として必要である」とよくいわれている「2000万円」の半分、1000万円であれば用意できると仮定して、老後破産を防ぐことができるか考えていきます。
柘植輝

執筆者:柘植輝(つげ ひかる)

行政書士
 
◆お問い合わせはこちら
https://www.secure-cloud.jp/sf/1611279407LKVRaLQD/

2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

1000万円でも老後資金はこと足りる可能性が高い

まずは統計上一般的な生活において、老後資金1000万円を使って老後を過ごしていくことができるか考えていきましょう。
 
総務省統計局の「家計調査報告(家計収支編)2022年(令和4年)平均結果の概要」によれば、65歳以上の夫婦のみの無職世帯においては、毎月2万2270円もの不足が生じています。年間では、26万7240円です。
 
そして「何歳から老後に入り、何歳まで生きるのか」という点も重要です。ここでは仮に老後の生活が、一般的に年金を受け取りはじめる65歳から90歳までの、25年間続くと仮定します。すると、25年間での不足額は668万1000円となります。1000万円あれば統計上だと十分に生活していくことができそうです。
 
では続いて、単身者の場合で見ていきましょう。65歳以上の単身無職世帯においては、毎月2万580円の不足が生じています。夫婦の場合と同様に、老後は25年間生きると考えてみると、不足額は617万4000円です。
 
夫婦であっても単身者であっても、上記調査のような生活水準であれば、老後資金は1000万円あればこと足りそうです。老後資金について、かつては「2000万円問題」が騒がれた時期もありますが、老後は1000万円でも堅実に生活することができれば、老後破産は十分防ぐことができそうです。
 

統計はあくまでも「統計」と考えなければならない

ここまで見ると、定年後も1000万円あれば、老後破産をすることはなさそうだと思えそうです。しかし、統計についてはあくまでも「統計」として考え、1000万円あれば大丈夫だと思ってはいけません。統計の数字はあくまでも平均的な数値であり、万人に当てはまるわけではないからです。
 
先に見た統計上の夫婦は、年金などの社会保障給付を主とした24万6237円の収入を毎月得ています。これは、少なくとも夫婦の一方が厚生年金へ加入していることを前提にしています。自営業者であるなど厚生年金に加入していた期間が短い方、あるいは全くないような方の場合、老後資金が1000万円では足りない可能性もあるといえます。
 
老後における収支の状況は人によって異なります。そのため「統計上大丈夫だから」と考えるのではなく、今の生活水準と統計上の生活水準を照らし合わせて、本当に老後資金が1000万円で足りるのか、改めて考えることが必要です。
 

老後破産の原因は?

老後破産を防ぎたいのであれば、老後資金を殖やすことと同じくらい、老後破産の原因について知ることも大切です。老後破産の原因としては、次のようなものが考えられます。
 

・そもそも老後資金が不十分
・現役時代から生活水準が落とせない
・時間が余り、ついお金を使ってしまう
・病気やけがで医療費がかさむ
・自宅のリフォームや修繕にお金を使った

 
このように、さまざまな理由が考えられます。そのため老後資金を1000万円用意しようが、2000万円、3000万円と用意しようが、お金について意識しなければ、老後破産してしまう可能性は十分にあります。「お金だけ用意すれば老後破産はしないだろう」という考えはすべきではないでしょう。
 

まとめ

統計上のデータを参考にする限り、基本的に老後資金が1000万円あれば、老後破産を防げる可能性があります。しかし、これはあくまでも統計上のデータであり、全ての方が1000万円の老後資金で老後破産を防ぐことができるわけではないようです。
 
老後破産を防ぎたいのであれば、老後資金を確保するだけでなく、老後破産の原因を知り、そうならないように対策していくことが大切でしょう。
 

出典

総務省統計局 家計調査報告(家計収支編)2022年(令和4年)平均結果の概要
 
執筆者:柘植輝
行政書士

PR
FF_お金にまつわる悩み・疑問 ライターさん募集