更新日: 2024.02.22 その他老後

独り身なので「認知症」になったときに代わりに手続きをしてくれる人がいません。安上がりなサービスはあるでしょうか?

執筆者 : 小山英斗

独り身なので「認知症」になったときに代わりに手続きをしてくれる人がいません。安上がりなサービスはあるでしょうか?
認知症を発症すると記憶や思考に影響が及び、日常生活に支障が出てきます。特に独り身の人は、自分の状態を客観的に見ることができなくなる可能性が高まり、生活が立ち行かなくなる恐れがあります。本記事では、独り身の人が認知症に備えるためにできることを解説します。
小山英斗

執筆者:小山英斗(こやま ひでと)

CFP(日本FP協会認定会員)

1級FP技能士(資産設計提案業務)
住宅ローンアドバイザー、住宅建築コーディネーター
未来が見えるね研究所 代表
座右の銘:虚静恬淡
好きなもの:旅行、建築、カフェ、散歩、今ここ

人生100年時代、これまでの「学校で出て社会人になり家庭や家を持って定年そして老後」という単線的な考え方がなくなっていき、これからは多様な選択肢がある中で自分のやりたい人生を生涯通じてどう実現させていくかがますます大事になってきます。

「未来が見えるね研究所」では、多くの人と多くの未来を一緒に描いていきたいと思います。
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認知症とは?

認知症とは、さまざまな脳の病気によって脳の働きが徐々に悪くなり、記憶や判断力といった認知機能が低下し、生活に支障が出ている状態(およそ6ヶ月以上継続)を指します。
 
内閣府の「平成29年版高齢社会白書」によれば、2012年時点で65歳以上の高齢者の約7人に1人(有病率15.0%)が認知症であり、2025年には約5人に1人が認知症になると推計されています。
 
認知症は65歳以上から発症率が上がりますが、若い人でも認知症になることもあり、65歳未満で発症する認知症は「若年性認知症」と呼ばれています。
 
一方で、高齢になれば新しいことを覚えるのが難しかったり、思い出したいことがすぐに思い出せなかったりといった「加齢によるもの忘れ」もありますが、認知症はこのような加齢によるもの忘れとは違います。図表1は、その違いの一例です。
 
図表1

図表1

出典:政府広報オンライン 知っておきたい認知症の基本
 

独り身の人が認知症に備えるためにできること

認知症を発症したとき、身近な家族がいればサポートを受けられるかもしれません。しかし、独り身の場合だと、認知症の進行具合によっては生活が立ち行かなくなる恐れがあります。そのため、独り身の人は認知症になる前にできる準備をしておくことが大切です。
 

相談先を見つける

自分が認知症かなと思ったときに相談できる場所を、前もって確認・準備しておくことは安心につながるでしょう。相談先としては、図表2のようなものがあります。
 
図表2

地域包括支援センター 介護サービスに関わる相談を受けてくれる公的な機関。保健や介護分野に特化し、高齢者の健康相談や介護サービスの利用などの相談に専門家が対応してくれる。
民生委員 民生委員法に基づいて厚生労働大臣から委嘱された非常勤の地方公務員。特定の区域を担当し、福祉に関するさまざまな相談や支援を実施している。
身元保証センター 独り身で保証人を頼む人がいないような場合に、医療機関や介護施設に入る際の費用の支払いなどを保証してくれる。民間企業やNPO法人などが行っている。

筆者作成
 
地域包括支援センターや民生委員についての詳細は、住んでいる地域の役所にお問い合わせください。
 

利用できる制度を確認する

認知症に備え、独り身の人が利用できる制度の確認もしておきましょう。料金の負担が生じる場合もありますが、手続きには時間を要することが多いため、認知症になる前に確認・準備をしておくことで生活の安心感を高めることができます。
 
図表3

介護保険サービス
(認知症対応型通所介護・
認知症対応型共同生活介護)
介護を必要とする人の生活を援助するためのサービス。サービスの利用には、市区町村の介護保険窓口に申請書と介護保険被保険者証を提出する必要がある。主治医の意見書や訪問調査をもとに要介護度が判定される。要介護度によって利用できるサービスは異なるが、自己負担額は原則として1割。
認知症対応型通所介護・認知症対応型共同生活介護は認知症の利用者を対象にした専門的なケアを提供するサービス。
任意後見制度 本人(委任者)と受任者(保護人または任意後見人)が契約を結び、将来的に認知症などで自分の判断力が低下した際に、受任者に療養看護などの契約事務の代行(身上監護)や財産管理を行ってもらうことができる制度。任意後見人は身内に限らず、成人していて定められた欠格事由に該当しない人であれば誰でもなれる。
日常生活自立支援事業 判断能力が低下しているが、支援してもらえれば自立した生活ができる場合に利用できる制度。具体的な支援内容は、福祉サービスの利用や年金をもらう手続きの援助、日常生活に必要なお金の管理、大切な書類の保管など。申請手続きは市区町村の社会福祉協議会で行う。契約締結前の相談は無料だが、生活支援員による直接の支援は有料。

厚生労働省ホームページより筆者作成
 
なお、任意後見制度は「成年後見制度」における制度の一つです。成年後見制度にはほかにも、認知症などですでに判断が不十分な状態の場合に手続きを開始する「法定後見制度」があります。
 
法定後見制度では、家庭裁判所によって選出された成年後見人など(成年後見人・保佐人・補助人)が、本人の利益を考えながら契約などの法律行為の代理をします。また、本人が自分で法律行為をするときに同意を与えたり、本人が同意を得ないで行った不利益な法律行為を後から取り消したりすることで、本人を保護・支援します。
 

まとめ

認知症になると、自分の考えをうまく相手に伝えられなくなったり、自分のやりたいことが思うようにできなくなったりします。そのため、独り身の場合、認知症になってしまったときに頼れる人がいないという不安を抱える人も少なくないでしょう。
 
だからこそ、早めの備えや事前準備が必要です。「認知症になっても、自分以外の頼れる人や場所がある」という安心感を持つことが大切です。
 

出典

政府広報オンライン 知っておきたい認知症の基本
横浜市 認知症とは?
内閣府 平成29年版高齢社会白書 第1章 高齢化の状況(第2節 3)
厚生労働省 介護サービス情報公表システム
厚生労働省 介護事業所・生活関連情報検索 サービス利用までの流れ
厚生労働省 任意後見制度とは(手続の流れ、費用)
厚生労働省 日常生活自立支援事業
厚生労働省 法定後見制度とは(手続の流れ、費用)
 
執筆者:小山英斗
CFP(日本FP協会認定会員)

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