定年後、再雇用で給与が「月19万円」に下がってしまいました。「高年齢雇用継続給付金」をいくらか受け取れると聞きましたが、実際どのくらい支給されるのでしょうか…?
配信日: 2024.03.06
執筆者:渡邉志帆(わたなべ しほ)
FP2級
60歳以降に給与が下がる人の割合
国税庁の民間給与実態統計調査によると、一般に定年を迎え再雇用となることが多い60歳前後の平均給与の推移は以下のようになっています。
【男性】55歳~59歳:702万円 → 60~64歳:569万円
【女性】55歳~59歳:329万円 → 60~64歳:267万円
男性も女性も60歳以降に約20%給与が下がっていることがわかります。この調査は平均なので、個々のケースによって変わることもあると思いますが、男女ともに再雇用となることが多い60歳を境に給与が下がっています。いきなり給与が下がると生活水準を維持するのが難しいと感じる方も多いでしょう。
高年齢雇用継続給付金とは
定年後に再雇用され給与が下がった人には、条件を満たせば「高年齢雇用継続給付金」が支給されます。具体的には以下の2つに分かれています。
●高年齢雇用継続基本給付金:雇用保険などの基本手当を受け取っていない人が対象
●高年齢再就職給付金:基本手当を受け取った後に再就職した人が対象
どちらも、再雇用によって給与が減少した人を支援するためのものです。受給できる金額や具体的な条件について詳しく説明します。
受給要件
受給できる要件は以下のとおりです。
●賃金が60歳時点の給料に比べて75%未満になった
●60歳~65歳の雇用保険の一般保険者(保険期間が5年以上)である
●高年齢再就職給付金については、再就職する前日基時点で基本手当の残り支給日数が100日以上ある
受給期間
【高年齢雇用継続基本給付金】
60歳に達した月から65歳に達する月までの期間受給できます。ただし、60歳になった時点で受給要件である雇用保険の期間が5年に満たない場合は、5年に達した月から受給ができます。
【高年齢再就職給付金】
基本手当の残り日数によって違いがありますので以下を参照してください。
●残り日数が200日以上:再就職の翌日から2年
●残り日数が100日以上200日未満:再就職の翌日から1年
受給額
受給される金額は、定年後にどのくらい給与が下がったかを示す低下率に対応する「支給率」に再雇用後の給与を乗じることで計算できます。図表1の支給率早見表を使用して計算します。
図表1
厚生労働省 高年齢雇用継続給付の内容及び支給申請手続について
●賃金の低下率が61%以下の場合:支給対象月の賃金×15%
●賃金の低下率が61%超~75%未満の場合:支給対象月の賃金×低下率に応じた支給率
→例:40万円から28万円にさがった場合は、70%低下しているため支給率は4.67%です。28万円に4.67%を乗じた1万3076円が支給されます。
月19万円に下がった場合のシミュレーション
実際に本事案の月19万円に下がったケースで支給要件を満たすのかを計算してみます。まず、60歳時点の給与から75%未満になっていれば支給されますので、以下のように試算しました。
●25万4000円×75%=19万500円
●25万3000円×75%=18万9750円
もともとの給与が25万4000円以上であれば支給要件を満たし、それより少ない場合は支給されません。具体的にいくら支給されるのか、低下率ごとに計算するため図表1の早見表を使って、給与を2パターン想定してシミュレーションしてみます。
●32万円→19万円に低下:低下率約59%→支給率は15%、19万円を乗じた2万8500円支給
●26万円→19万円に低下 :低下率約73%→支給率は1.79%、19万円を乗じた3401円支給
元の給料からの下がり具合が大きいほど支給額は大きくなりますので参考にしてみてください。
まとめ
人生100年といわれる中で定年後も働きたいと考えている人も多いでしょう。一般的には再雇用されると給与は下がることが想定されます。しかし高年齢雇用継続給付金を利用すれば定年後の生活を支えることができます。事前に試算するなどして計画的に再雇用後の生活プランをたてましょう。
出典
国税庁 令和4年分民間給与実態統計調査
ハローワークインターネットサービス 雇用継続給付
厚生労働省 高年齢雇用継続給付の内容及び支給申請手続について
執筆者:渡邉志帆
FP2級