更新日: 2024.03.22 定年・退職
もうすぐ定年の夫婦2人、世帯年収は「420万円」です。毎月ギリギリで貯金「350万円」くらいですが、退職後「老後破産」したらと不安です。今からでも対策できることはあるでしょうか…?
本記事では、老後破産の実態と原因、さらに老後破産を回避するためのポイントについて解説します。
執筆者:根本由佳(ねもと ゆか)
FP2級、中小企業診断士
高齢者の破産の実態
日本弁護士連合会、消費者問題対策委員会の「2020年破産事件及び個人再生事件記録調査」によると、破産債務者の約25.72%が60歳以上で、全体の4分の1を占めています。特に70歳以上は約9.35%で、17年調査時(約7.51%)から大幅に増加しており、1997年の調査開始以来最大値となっています。
破産の理由としては、1位が「生活苦・低所得」で61.69%、2位が「病気・医療費」で23.31%と、「ギャンブル」(7.18%)や「浪費・遊興費」(11.37%)などよりも大きな割合となっています。
老後破産というと「現役時代の感覚でお金を使ってしまった」「退職金が入ったから贅沢をしてしまった」という理由を考えがちですが、暮らしていくのに必要なお金を使っていたら破産した、という状況の方が多いのかもしれません。
年金はほぼ生活費・それ以外は貯蓄や退職金から
高齢者の主要な収入の一つは、原則65歳以降に受け取れる年金です。今回のケースの夫婦がどれくらいの年金額をもらえるか計算してみます。
現役時代、夫婦で年収450万円(夫が年収370万円の会社員、妻がパート勤務で年収80万円)であったと仮定して、65歳以降に受け取れる月額の年金を試算すると、夫婦合わせて20万3651円となります。(2人分の基礎年金+夫の厚生年金、国民年金の加入期間40年・令和5年度の満額79万5000円、厚生年金は年収÷12×5.769/1000×加入期間月数480月で計算)
高齢者の支出に関して、総務省の「家計調査年報(家計収支編)2020年(令和2年)」によると、65歳以上の夫婦で無職の場合の平均消費支出は1ヶ月当たり22万4390円となっています。
年金収入が20万3651円、支出が22万4390円なので、毎月2万739円の赤字となります。さらに病気になったときの医療費などがかさめば、赤字幅はもっと広がります。赤字部分は、個人の貯蓄や退職金などから補填する必要があります。
定年退職時に受け取る退職金についても確認しておきましょう。
東京都産業労働局の「中小企業の賃金・退職金事情(令和4年版)」によると、定年時に受け取るモデル退職金は、高校卒で約994万円、大学卒で約1092万円となっています。仮に大学卒相当の退職金をもらえるとして、現在の貯蓄である350万円を合算すると、老後資金としての貯蓄総額は約1442万円です。
老後を約30年と仮定して、毎年同額取り崩していくとすると、1年分は約48万円、1ヶ月分は約4万円となります。これによって毎月の赤字幅は何とか補填できるという計算になります。
上記はあくまで試算であり、具体的には個別の状況に合わせて算出する必要があります。しかし長い老後をよりよく暮らすためには、対策を講じておく方が良いと言えます。
老後破産を回避するための対策
老後破産を回避するための対策として、今からできることを解説します。
計画的な貯蓄と資産運用
現在の収入と支出を把握し家計管理を徹底して、わずかな額でも貯蓄に回すようにします。貯蓄は定期預金だけでなく、投資信託やiDeCoなどの運用も検討します。
健康維持と社会とのつながり
老後破産の理由の2位である「病気・医療費」を減らすため、日頃から健康維持に努めます。家族や友人との交流を大切にする、地域活動に参加するなどして、社会とのつながりを保つことで、心を健全にして孤立を防ぎます。
専門家に相談
老後の不安やお金に関する問題を抱え込まずに、ファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談することをおすすめします。専門家のアドバイスによって具体的かつ効果的な対策を立てることが期待できます。
まとめ
老後破産は、決して他人ごとではありません。将来の不安を解消し、安心して老後を迎えるためには、早いうちから対策を始めることが重要です。今回紹介した対策を参考に、自分に合った方法で老後の準備を進めていきましょう。
出典
日本弁護士連合会 2020年破産事件及び個人再生事件記録調査
総務省 家計調査年報(家計収支編)2020年(令和2年)
日本年金機構 令和5年4月分からの年金額等について
東京都産業労働局 中小企業の賃金・退職金事情(令和4年版)
執筆者:根本由佳
FP2級、中小企業診断士