更新日: 2024.04.13 セカンドライフ

退職後の人生。退職後のライフプランはまず気持ちの整理をしてから、どうすればいいかを考えるようにしよう!

退職後の人生。退職後のライフプランはまず気持ちの整理をしてから、どうすればいいかを考えるようにしよう!
1971年から1974年の間に生まれた、いわゆる「団塊ジュニア世代(2024年50歳前後の人たち)」が完全に65歳以上の高齢者になる2040年まで、あと16年はかかります。この年は、高齢化社会がさらに深まる節目の年といわれています。
 
この「団塊ジュニア世代」の現在のライフステージは、一般的に「退職準備期」に位置づけられます。おおむね子育てが終わり、親の介護や死に直面するタイミングといえます。また同時に、自分自身の老後を意識しはじめる時期でもあります。
 
そこで今回は、退職後の人生設計(ライフプラン)についてどのように考えればよいかを3つの要点に絞って、簡単に伝えていきたいと思います。
重定賢治

執筆者:重定賢治(しげさだ けんじ)

ファイナンシャル・プランナー(CFP)

明治大学法学部法律学科を卒業後、金融機関にて資産運用業務に従事。
ファイナンシャル・プランナー(FP)の上級資格である「CFP®資格」を取得後、2007年に開業。

子育て世帯や退職準備世帯を中心に「暮らしとお金」の相談業務を行う。
また、全国商工会連合会の「エキスパートバンク」にCFP®資格保持者として登録。
法人向け福利厚生制度「ワーク・ライフ・バランス相談室」を提案し、企業にお勤めの役員・従業員が抱えている「暮らしとお金」についてのお悩み相談も行う。

2017年、独立行政法人日本学生支援機構の「スカラシップ・アドバイザー」に認定され、高等学校やPTA向けに奨学金のセミナー・相談会を通じ、国の事業として教育の格差など社会問題の解決にも取り組む。
https://fpofficekaientai.wixsite.com/fp-office-kaientai

退職後のライフステージをイメージする

図表1は、退職準備期を起点に、いわゆる「老後」をどのように考えればよいかを示した概略図です。ただし、いつからの時期を「老後」と呼ぶかは人それぞれです。このため、「いつ退職(完全リタイア)するか」を基準に、その後の人生設計(ライフプラン)のイメージを自分ごととして膨らませてみてください。
 
図表1

図表1

※筆者作成
 
図表1の年齢は目安であり、ライフステージを厳密に区切る必要はありません。あくまでも「自分の場合、おおむねこうなるだろう」というイメージでかまいません。
 
例えば、いつから退職準備期が始まるかは人それぞれです。退職準備期の終わりが、いわゆる「定年退職」のタイミングになっているだけで、いつから準備を進めればよいかは、自分自身が置かれている環境のなかで決めていけばよいのです。
 
一般的には、おおむね50歳前後が退職準備期の始まるタイミングといえますが、40歳などといった早いタイミングで退職または転職することもあるため、自分自身の労働観に合わせて設定するようにしましょう。
 
退職準備期が終わるタイミングは、いわゆる「定年退職」をする時期です。定年退職の年齢は勤めている会社によって異なりますが、60歳や65歳などと認識している方が多いのではないでしょうか。
 
そして、その後に来るのが「アクティブシニア期」で、おおむね75歳までと設定します。アクティブシニア期は、期間のほとんどが前期高齢者(65歳以上75歳未満)に該当するライフステージです。年金の受け取りが始まる時期と考えると分かりやすいでしょう。ちなみに、定年後に再雇用や再就職などで働くとしても、アクティブシニア期の始まりは定年退職のタイミングに合わせます。
 
そして、アクティブシニア期が終わると、後期高齢者(75歳以上)に該当するライフステージである「終活期」が始まります。終活期は、それまで加入していた公的医療保険制度が、後期高齢者医療制度に切り替わるタイミングといえます。
 
終活期が終わるタイミングは、寿命を迎える時期です。そして天寿を全うしたあとに、「死後」のライフステージが訪れる、と考えます。一般的には、ライフステージの区分に「死後」は含めませんが、国の制度や慣習、風習などを考慮し、あえて「死後」というライフステージを設けます。
 

退職後のライフステージでは、「どのような最期を迎えたいか」という想いを言語化しておく

退職後のライフプランを考える際、最も重要なのは「どのような価値観の下で死を迎えるか」ということです。端的にいえば、退職後どのように生き、どのように死にたいかを、ある程度イメージするということです。このような考え方は「死生観」や「人生観」といえますが、これらをある程度言葉として表現(言語化)し、意識します。
 
例えば、「人生の最期(生物学的な死)は、自宅で家族に見守られながら終えたい」と考えるとします。このような想いはその人の家族観に根差すものですが、心理的には「孤独や不安のなかで死ぬのは嫌だ」という感情の表れかもしれません。
 
また、「家族には迷惑をかけたくないから、人生の最期は病院や介護施設で迎えたい」と考える人もいるでしょう。このような想いも自らの家族観から来ていると考えられます。心理的には、「家族に対して心配をかけたくない」という気持ちと、「本当は、最期を看取ってほしい」という気持ちが入り交じっているのかもしれません。
 
人の想いは人の数だけあります。価値観は、ある意味、感情にも基づくため、気持ちの整理も含め、どのような価値観をもとに死を迎えるかをあらかじめ想像しておくことは、非常に大切なことといえます。
 

人生の最期から逆算して、退職準備期の今、退職後に何をすべきかを考える

退職後のライフステージに通底する価値観をある程度意識することで、どのような人生設計(ライフプラン)を描くかを、初めて想像することができます。例えば前述したような「人生の最期は、自宅で家族に見守られながら終えたい」という想いがある場合、ゴールから逆算して、今は何をすればよいかが少しずつ見えるようになります。
 
例えば、自宅で家族に見守られながら最期を迎えたいわけですから、残りの人生を過ごす環境(住環境)は自宅です。それならば、相続後は自宅を子どもに残すかどうかなどの対策が必要になりますし、生前の医療や介護といった健康面では、訪問医療や訪問介護、デイサービスなどを活用することが考えられるでしょう。
 
また、介護が必要になったときのことを想定し、手すりを付けたり、ドアを引き戸にしたりするといった、自宅をバリアフリーにするためのリフォーム工事をあらかじめ行っておく、などの対策も講じられます。
 
さらに「このようなことが必要になるかもしれない」と考えた場合、家計にどのような工夫をすればよいかも見えてきます。自宅の相続に備えるうえでは、資産全体の把握や管理を行う必要があるでしょうし、医療や介護などの費用がかさむ場合に備えるために定年退職後も働いたほうがよいと思うかもしれません。
 
このような想定は、自分がそれまでの人生経験で獲得した知識(情報)によってもたらされます。書籍を読んだり、専門家などに相談したりすることで知識(情報)量が増し、どのような対策を講じればよいかが分かるようになります。
 

まとめ

今回は「老後に向けて、退職準備期の今は何をどのように考えればよいか」という問題について、概略を伝えました。
 
人生は人それぞれです。こうだという答えはありません。人生設計(ライフプラン)を作る際は、「こうでありたい」という自分自身の気持ち(個人の尊厳)が大切で、それを現実問題として、情報や方法を用いながら、周囲の環境とどう調整させていくか(合理的配慮)が重要な鍵になります。
 
人によっては「まだ早い」と思うこともあるかもしれませんが、何らかの仕事をしている場合、遅かれ早かれ退職の時期は訪れます。退職前に一度、気持ちの整理をしてみるとよいかもしれません。
 
執筆者:重定賢治
ファイナンシャル・プランナー(CFP)

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