更新日: 2024.04.13 セカンドライフ
55歳になった途端に「課長→平社員」になり、給料が月5万円も下がってしまいました。「役職定年」と言われたのですが、今後どうすれば良いでしょうか…?
本記事では役職定年の概要やポストオフ制度との違い、制度がもたらす弊害や、役職定年間近の人が知っておきたい晩年のキャリアプランの考え方などを解説します。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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役職定年とは
役職定年は俗に「やくてい」とも呼ばれており、企業が事前に設定した年齢に達した社員が部長や課長といった管理職から退く制度のことです。何歳を役職定年にするかは企業によって異なるため、一概にはいえません。一般的には55~60歳で役職定年を迎える企業が多いようです。
役職定年が広まった背景には、定年制度の延長があります。1980年代の定年は55歳が一般的でしたが、1986年には高年齢者雇用安定法が改正されたことで60歳定年が企業の努力義務になり、1994年には60歳未満を定年に設定することが禁止されました。
定年の年齢が引き上げられたことで企業にとって人件費が大きな負担になり、人件費の抑制のために役職定年が導入されました。また、一定の年齢でベテラン社員のポストを空けることによって、若い世代の優秀な人材を管理職に登用することも可能になります。会社の若返りが実現すると同時に若手社員のモチベーションが上がることで生産性の向上も期待できます。
ポストオフ制度との違い
ポストオフ制度とは、人事制度でポスト交代を検討する際に、年齢を判断材料の1つにする制度のことです。事前に設定した年齢に達した時点で管理職から退任する点は役職定年と変わりません。ポストオフ制度では「年齢以外も加味して退任するかを評価する」点が異なります。
管理職としての評価や任期、年齢の観点からポストオフの対象者を列挙し、新しく管理職に登用する候補がいる場合にポストオフを適用するかを判断します。一方の役職定年は管理職の能力などに関係なく、一定年齢に達すれば管理職を退任します。
両者の違いは「管理職を退任した後の待遇」です。役職定年は人件費の削減が目的であり、退任後も会社に在籍する場合は給与が一般職の水準に低下します。一方のポストオフ制度は退任後も給与水準が大きく変わらないのが一般的です。
役職定年の弊害
役職定年は、ベテラン社員のモチベーションが低下するという弊害もあります。能力がある人でも一定年齢に達すれば管理職を退任することになり、これまでのキャリアを生かすことができなくなります。また、退任後は管理職時代よりも給与が下がる点も弊害の1つです。
公益財団法人ダイヤ高齢社会研究財団の調査では、役職定年になった9割以上が年収減になり、さらにそのうち約4割の人が「年収50%未満」まで給与水準が低下しています。
役職定年も踏まえて晩年の働き方を考えていこう
役職定年によって収入が減少するとモチベーションのみならず、年金収入の低下につながることになります。会社員が将来受け取れる年金には老齢基礎年金と老齢厚生年金がありますが、このうち老齢厚生年金の報酬比例部分は以下のAとBを足し合わせて計算されます。
A:平均標準報酬月額×係数(7.125)÷1000×2003年3月までの厚生年金加入月数
B:平均標準報酬額×係数(5.481)÷1000×2003年4月以降の厚生年金加入月数
役職定年で報酬が低下すると将来の厚生年金の受給額が低下するため、老後に生活費が底をつかないような収入プランを考えましょう。例えば、企業の就業規則上、問題がなければ、これまで培った知識や経験が生かせる副業を始めてみるのも1つの方法です。
新しくキャリアをスタートさせることで収入の減少をカバーできるだけでなく、モチベーションの向上にもつながります。
まとめ
役職定年は一定年齢に達することで、能力に関係なく一律で管理職から退任する制度です。人件費の削減や社内の若返りなどが目的ではありますが、管理職だった本人は一般職並みの給与に下がったり能力を生かせなくなったりと、弊害が多い制度でもあります。
単に仕事のゴールとして考えるのではなく、新しいキャリアを積むための区切りと考えて、今後の働き方を見直してみてはいかがでしょう。
出典
公益財団法人ダイヤ高齢社会研究財団 50代・60代の働き方に関する調査報告書
日本年金機構 老齢厚生年金の受給要件・支給開始時期・年金額
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー