60歳定年を過ぎても働きたいです。60歳以降に給与が減ると給付が受けられることがあると聞いたのですが、どのような制度ですか? (2)高年齢雇用継続基本給付金について
配信日: 2024.04.21
前回の(1)では、高年齢雇用継続給付の概要について取り上げましたが、今回はそのうちの「高年齢雇用継続基本給付金」の詳細について取り上げます。
執筆者:井内義典(いのうち よしのり)
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者、特定社会保険労務士、1級DCプランナー
専門は公的年金で、活動拠点は横浜。これまで公的年金についてのFP個別相談、金融機関での相談などに従事してきたほか、社労士向け・FP向け・地方自治体職員向けの教育研修や、専門誌等での執筆も行ってきています。
日本年金学会会員、㈱服部年金企画講師、FP相談ねっと認定FP(https://fpsdn.net/fp/yinouchi/)。
高年齢雇用継続基本給付金の支給要件
高年齢雇用継続基本給付金は、図表1の(1)~(4)の支給要件をすべて満たしている場合に支給されます。
(1)のとおり、失業給付の基本手当を受給していないことが前提で、60歳の定年後も再雇用されて継続勤務し、大幅に給与が下がった人が対象になっているといえます。
(2)の「みなし賃金日額」とはいったい何かというと、実際は離職していないものの、その雇用保険の被保険者の60歳に達した日を離職の日とみなして算定した賃金日額の相当額です。直前の6ヶ月間の総支給額(保険料等の控除前の額で賞与は除外)÷180の額がみなし賃金日額となります。
これに30を掛けることで月額に換算します。60歳に達した日において(4)を満たさず、雇用保険の被保険者であった期間が5年未満であるときは、5年に達した日を離職日とみなして、みなし賃金日額を算出します。
高年齢雇用継続基本給付金が支給される期間と支給額
高年齢雇用継続基本給付金は、雇用保険被保険者が60歳に到達した月から65歳に達する月までの支給対象月に支給されることになっています。支給対象月とは、初日から末日まで、雇用保険の被保険者であり、かつ、介護休業給付、育児休業給付、出生時育児休業給付金を受け取ることができる休業をしなかった月のことを指します。
支給期間の範囲は60歳時点で5年以上被保険者であった期間がある場合は、60歳到達月~65歳到達月が支給期間です。60歳到達後に被保険者であった期間が5年に達した場合は、その5年の到達月から65歳到達月までが支給期間となります。
各支給対象月の高年齢雇用継続基本給付金の額は、支給対象月の賃金に支給率を掛けて算出されます。その支給率については、賃金の低下率によって異なっています(図表2)。
「みなし賃金日額×30」より61%以下まで下がれば賃金の15%が支給され、61%超75%未満であれば、図表2の計算式で計算された支給率となり、それを60歳以降の賃金に掛けて算出します。
賃金が61%以下でも15%支給されないことも
ただし、60 歳到達時等の「みなし賃金日額×30」には上限と下限が設定され、2023年8月以降は上限額が48万6300円、下限額が8万2380円です。基準額は毎年8月に変わります。
「みなし賃金日額×30」が上限額超の人については上限額を基準に、「みなし賃金日額×30」が下限額未満の人については下限額を基準に、支給額を算定されることになっています。
例えば、60歳到達時等の賃金(「みなし賃金日額×30」)60万円が60歳以降に月額30万円に下がった場合、実際には50%まで下がっていることになりますが、48万6300円から30万円へ61.69%になった扱いとなります。
その結果、図表2の計算式で計算すると、(-183×61.69+1万3725)/(280×61.69)×100=14.10(小数点第3位四捨五入)で、支給率は14.1%です。給付金の額は、30万円×14.1%=4万2300円となります。月額の収入は、賃金30万円+高年齢雇用継続基本給付金4万2300円=34万2300円となるでしょう。
再雇用される場合は支給されるか確認を
以上のように、高年齢雇用継続基本給付金は60歳の定年後に再雇用される場合が主な対象者です。60歳以降引き続き勤務する場合は、自身が給付金の対象になるかどうか確認しておきましょう。
出典
厚生労働省 ハローワーク インターネットサービス 雇用継続給付
厚生労働省 高年齢雇用継続給付 介護休業給付 育児休業給付 の受給者の皆さまへ 令和5年8月1日から支給限度額が変更になります。皆さまへの給付額が変わる場合があります。
執筆者:井内義典
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者、特定社会保険労務士、1級DCプランナー