更新日: 2024.04.22 セカンドライフ
60歳定年を過ぎても働きたいです。60歳以降に給与が減ると給付が受けられることがあると聞いたのですが、どのような制度ですか? (4)年金との調整を確認
これらの高年齢雇用継続給付を受け取る人が年金も受け取れるようになると、年金の支給が停止されることがあります。最終回の今回は、高年齢雇用継続給付と年金の調整について取り上げます。
執筆者:井内義典(いのうち よしのり)
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者、特定社会保険労務士、1級DCプランナー
専門は公的年金で、活動拠点は横浜。これまで公的年金についてのFP個別相談、金融機関での相談などに従事してきたほか、社労士向け・FP向け・地方自治体職員向けの教育研修や、専門誌等での執筆も行ってきています。
日本年金学会会員、㈱服部年金企画講師、FP相談ねっと認定FP(https://fpsdn.net/fp/yinouchi/)。
高年齢雇用継続給付受給により調整される年金
年金を受給しながら引き続き会社に勤務している人(厚生年金被保険者となっている人)が、高年齢雇用継続給付を受け取ると、高年齢雇用継続給付はその全額が受給できる一方、年金は支給停止となることがあります。
調整され支給停止となる年金は、図表1のとおりです。まず、60歳台前半の特別支給の老齢厚生年金(特老厚)が調整の対象となります。こちらは生年月日によって支給開始年齢や支給の有無が決まる年金です。特老厚が支給されない世代の人は65歳から老齢基礎年金と老齢厚生年金の受給となるでしょう。
ただし、本来65歳から支給される老齢厚生年金を繰上げ受給した場合は、当該老齢厚生年金が調整されることになります。もっとも、高年齢雇用継続給付は65歳までしか支給されませんので、65歳になるまでが調整の対象です。
一方、65歳からの老齢基礎年金を65歳前に繰上げ受給中の場合、老齢基礎年金については調整されません。
つまり、60歳台前半で厚生年金を受給する場合が対象になるといえるでしょう。
調整される年金額の計算方法
標準報酬月額は、年金の計算で用いる月給の額といえるものです。高年齢雇用継続基本給付金を受給する人については、「みなし賃金日額×30」に対する60歳以降の標準報酬月額の割合で年金の支給停止額が決まります。一方、高年齢再就職給付金は「みなし賃金日額×30」ではなく「賃金日額×30」が基準です。
年金の支給停止額は図表2の計算式のとおりですが、賃金の15%を高年齢雇用継続給付として受け取ると、年金(特老厚あるいは繰上げ受給の老齢厚生年金)は標準報酬月額の6%が支給停止となる計算です。
もし、60歳以降の賃金・標準報酬月額が30万円で、高年齢雇用継続給付の支給率が15%だった場合、4万5000円(賃金30万円×15%)の高年齢雇用継続給付が支給される一方、1万8000円(標準報酬月額30万円×6%)の年金が支給停止となる計算です。
なお、「標準報酬月額+高年齢雇用継続給付」が支給限度額(37万452円。2023年8月以降の場合)を超える場合、支給停止額は(支給限度額-標準報酬月額)×6/15になります。支給限度額については、毎年8月に変わります。
年金の調整制度について確認を
厚生年金被保険者であることが雇用保険との調整の前提条件なので、厚生年金被保険者でない場合は年金の調整はありません。また、高年齢雇用継続給付の支給がされない場合も、年金は調整されません。
ただし、厚生年金被保険者である場合、いわゆる「50万円基準」(2024年度の場合)による在職老齢年金制度での支給停止がされることがあります。
今回取り上げた高年齢雇用継続給付受給による支給停止と「50万円基準」による支給停止、両方対象になることもあれば、片方だけ対象になることもあります。60歳以降年金が受けられるようになる人で、引き続き働く場合は、いずれの確認も忘れないようにしておきましょう。
出典
厚生労働省 Q&A~高年齢雇用継続給付~
日本年金機構 失業給付・高年齢雇用継続給付の手続きをされた方へ 雇用保険の給付を受けると年金が止まります!
日本年金機構 年金の繰上げ受給
厚生労働省 高年齢雇用継続給付 介護休業給付 育児休業給付 の受給者の皆さまへ 令和5年8月1日から支給限度額が変更になります。皆さまへの給付額が変わる場合があります。
日本年金機構 在職老齢年金の支給停止の仕組み
執筆者:井内義典
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者、特定社会保険労務士、1級DCプランナー