地域で高齢者を見守る施設 「地域包括支援センター」とは? どんなサポートが受けられるの?

配信日: 2024.04.24

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地域で高齢者を見守る施設 「地域包括支援センター」とは? どんなサポートが受けられるの?
高齢者が介護サービスの受け方や老人ホームへの入居方法を考えた際に、相談に行ける施設が「地域包括支援センター」と呼ばれる組織です。
 
聞き慣れない方も多いかと思いますが、市区町村が運営主体で、比較的歩いて行ける距離にあります。高齢者にとっては大切な組織ですので、ご自分の住んでいる地域のどこにあるかを確認しておきましょう。
黒木達也

執筆者:黒木達也(くろき たつや)

経済ジャーナリスト

大手新聞社出版局勤務を経て現職。

中嶋正廣

監修:中嶋正廣(なかじま まさひろ)

行政書士、社会保険労務士、宅地建物取引士、資格保有者。

長野県松本市在住。

地域包括支援センターとは

この施設は、高齢者の種々の悩みに対応するために行政がつくった地域の拠点となるセンターです。運営の主体は、国や都道府県ではなく、市区町村が担当している組織です。公立中学校の学区ほどの規模のエリアに設置されており、その地域に住む高齢者の相談に応じられるようスタッフが配置されています。
 
地域のニーズを吸い上げるため、きめ細かく担当地域を回る出張相談会を行っている自治体もあります。
 
また組織の名称が、いかにも「お役所的」でわかりにくい、という声も多いため、地域によっては「あんしんすこやかセンター」「熟年相談室」「お年寄り相談センター」などの名称を使い、利用目的に沿った表現にしている自治体もあります。
 
とくに最近では、高齢者からの要望として、介護保険に関する相談、認知症のケアに関する相談、老人ホームへの入居相談などが寄せられるため、それに対応できる専門家が配置されています。
 
具体的には、保健師、看護師、社会福祉士、ケアマネジャー(介護支援専門員)といった専門知識を持つ方で、各種の相談に応じています。運営の主体は市区町村ですが、社会福祉法人などの団体が自治体から委託を受け、実際の運営を担っているケースも、かなり見られます。
 

介護保険の利用法に関する相談

センターに寄せられる最も多い相談が、介護保険の利用法です。比較的健康で日常生活を送っていた方が、骨折などの事故や病気などにより、体の自由が利かなくなった際に申請をすることで、介護保険が利用できます。
 
その際に申請方法がわかららないと、まずセンターを訪れ、介護認定を受けるための相談ができます。家族がいる方は家族と一緒にセンターに出向き、センターの職員の方にサポートを受け申請書類をつくります。
 
その書類を役所の窓口に持参し申請します。申請の手続きをすると、後日判定員が自宅を訪れ、その方の障害の程度を認定します。
 
「要支援」「要介護」といった基準に沿って具体的に介護認定がされると、その方の介護認定のレベルに応じて、介護保険が利用できます。比較的安い料金で、家政婦さんの派遣やデイサービスの利用などが受けられます
 
この一連の介護保険の利用手続きは、かなり手間もかかります。日常生活が1人でできない程度はどのくらいか、介護士などの介助を受けられるかの判断基準を、センターが説明してくれます。
 
例えば「要介護1」の判定の方に対しては、ケアプランの作成を実施するほか、家政婦さんの派遣やデイサービスの利用手続き、それぞれのサービスを受けるための経費などを細かく計算してもらえます。センターで作成したプランに沿って、選択した介護サービスを受けることができます。
 

病気への対応と介護予防の援助

高齢の方ほど、病気の症状が急激に悪化することがあります。また自分の健康状態を「まだ大丈夫!」として、医者の診察を受けたがらない方も結構おられます。とくに家族が近くにいる方は、センターがその家族と協力し、症状に応じた専門医や総合病院を必要に応じて紹介、治療のサポートを行います。 
 
介護をなるべく受けなくて済むために重要な「介護予防」の相談にも応じています。具体的には、介護予防教室などを紹介し、そこへ出向くことで、介護を受ける時期をなるべく遅くするプログラムを受けることができます。
 
単身の高齢者はどうしても1人でいる時間が長く、孤立することで認知症の発症リスクも高くなります。認知症の予防のためには、孤立した生活を送らないことが大切になります。できる限り、合唱や習字、手芸など趣味サークルの照会や、老人同士が集まり話し合いの機会を提供し、そこへの参加を促したりします。
 
不幸にして認知症を発症して判断力が衰えてしまった場合、預貯金の引き出しなどの財産管理が困難になります。親族が近くにいないときでも、相談者の立場で「成年後見人」制度が利用できるようサポート業務も行います。
 

地域の気になる高齢者を見守る

それぞれの地域で、高齢でひとり暮らしの方などが、もし病気になったとしても見落としてしまうかもしれません。また家族による虐待などが起こるかもしれません。そのためセンターが中心となり、地域の住民、商店街の役員、民生委員、交番の警察官、消防署員などの協力を得て、気になる高齢者の見守りを実施しています。
 
さらに、ひとり暮らし世帯や高齢者のみの世帯を対象に、「高齢者登録制度」をつくり、地域全体で高齢者のケアを制度化している地域もあります。
 
高齢者がこの制度に登録することにより、自宅で急病などの事態が発生した際、専用の通報ボタン操作で、担当者の派遣、救急車の手配、親族への連絡などを行ってもらえます。定期的に電話をかける安否確認業務も行っています。
 
この高齢者登録制度と配食サービスを組み合わせることで、高齢者の安否確認をすることも可能です。配食サービスのメリットは、持病を持っている方でもそれに沿ったメニューを選択でき、その都度、比較的安い料金で配達してもらえることです。
 
その際、注文をした高齢者本人への直接手渡しが原則のため、このことで安否確認が可能になります。登録制度を実施している地域に住み対象となっている高齢の方は、登録しておくといざというときに役に立つでしょう。
 
執筆者:黒木達也
経済ジャーナリスト
 
監修:中嶋正廣
行政書士、社会保険労務士、宅地建物取引士、資格保有者。

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