更新日: 2024.05.08 定年・退職

早期退職をすすめられましたが、上乗せ額が「年収1年分」でした。定年まで働いた方が「得」ですか?

早期退職をすすめられましたが、上乗せ額が「年収1年分」でした。定年まで働いた方が「得」ですか?
「会社が人員整理のために早期退職者を募集し、その条件が『退職金について、年収1年分を上乗せすること』だった」というように、一見有利な条件で早期退職者の募集がなされることは、少なくありません。
 
そんなとき、定年まで働くべきか悩む方もいるでしょう。そこで、年収1年分の上乗せを条件になされる早期退職が、得であるかどうか考えてみました。
柘植輝

執筆者:柘植輝(つげ ひかる)

行政書士
 
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

前向きな転職ができないのであれば、定年まで働いた方が得である可能性が高い

早期退職をすると、転職するか、早期に老後の生活に入るかを選ぶことになります。
 
その上乗せが「1年分の退職金」ということは、これまでどおり働きつづけた場合と同じだけの総収入を維持するために、1年以内に今と同等の職場を見つけなければなりません。年齢にもよりますが、40代、50代と年齢を重ねてくると、求められるスキルや実績も高くなってくるため、転職が難しくなってきます。
 
そのため、「1年分の退職金が上乗せされるから」と飛びつくと、後悔する可能性もあります。
 
仮に現在の年収が500万円だとすると、上乗せされるお金は500万円だけです。一般的な働き方をした場合の、5年分・10年分の収入になるわけではありません。
 
また、次の転職先が見つかったとしても、年収がダウンすれば損することにもなります。例えば転職先で年収が100万円少なくなってしまえば、6年後には収入面だけで考えれば「転職しない方がよかった」となる可能性もあります。
 
その点を考えると、スキルアップや年収アップ、あるいは「早くに定年後の生活を送り、悠々自適に生活したい」など前向きな目的がない限り、定年まで働いた方が得をする可能性が高そうです。
 

万が一の可能性もあるので、会社の経営状況には注視

会社が早期退職を募る理由はいくつかあります。
 
1つは、特定の社員の退職に期待するものです。例えば、いわゆる「窓際社員」や「社内ニート」など、会社を強制的に辞めさせたいものの、法的にそれが難しい従業員がいるとしましょう。その場合、早期退職者を募って、多少退職金を上乗せしてでも切った方が、会社にとってプラスになります。そのような形で条件を提示するのは、従業員の自主的な退職に期待しているからです。
 
このようなケースであれば、残っても問題ないでしょう。焦点となっているのは、特定の問題社員だからです。
 
一方で大きな問題となるのは「会社の経営が悪く、誰でもいいから取りあえず人員整理をしたい」というような場合です。そういった状況においては、会社が経営を立て直せずに倒産する可能性もあります。
 
「沈みゆく船から早く抜ける」という意味でも、会社の経営が傾いている際の早期退職であれば、応じた方がよい可能性も十分にあります。
いずれにせよ、よく状況を整理し、考えることが大切です。
 

早期退職を拒否するとどうなるのか

基本的に、早期退職をしたからといって、不利益な扱いがなされるわけではありません。法律上、そのような行為は禁止されているからです。そのため、「早期退職を拒否したら不利益に扱われて、会社に居場所がなくなるのでは」という心配をする必要はないでしょう。
 
しかし、自身に問題行動などがあれば、話は別です。会社からの早期退職のすすめは「温情」であり、拒否された場合は解雇されてしまう恐れがあるからです。
 
とはいえ解雇が許されるのは、労働が不可能である場合や、横領などで会社に意図的に損害を与えた場合などです。よほどのことがなければ認められないため、過度に気にする必要はありません。
 

まとめ

早期退職を勧められたとしても、次の職場でも現状と同等以上の条件で働けるなど、前向きな転職につながる可能性が高くない限り、定年まで働いた方が得であることが多いです。
 
とはいえ、実際には早期退職に応じた方が得をする場合もあります。
 
早期退職についての決断は、その後の人生を大きく左右します。悩んだときは、自身のこれまでの勤務実績から会社の経営状況まで、諸般の状況を踏まえ、慎重に決断を下すようにしてください。
 
執筆者:柘植輝
行政書士

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