夫と歳の差が20歳あり、まもなく夫が「年金生活」に入ります。私は扶養を超えて働きたいのですが、夫の「介護」に備えた方がよいですか?
配信日: 2024.05.30
そこで、年齢差が大きく、働き方や介護に悩む夫婦に向けて、今後の働き方と介護について、どうすべきか考えていきます。
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
今はまだ介護に備えて働くべきといえる
確かに、介護に備えておくことは大切ですが、今すぐ介護が必要というわけでもないのであれば、まだ扶養を超えてフルタイムで働くのもよいでしょう。
介護には多額のお金が必要になります。実際に介護が必要になるまでは、バリバリ働き稼いで貯金を殖やすことも、立派な介護への備えです。むしろ今後の生活を考えると、万が一夫が亡くなった後も、妻はできる限り働きお金をためておく方がよいでしょう。
公益財団法人生命保険文化センターの調査によれば、介護費用の平均は月8万3000円(過去3年間に介護経験がある人の平均)です。介護期間の平均がおよそ5年であることを考えると、介護費用としては少なくとも500万円程度必要になる可能性が高いです。その点を考えると、やはり扶養を超えて働くべきでしょう。
税金関係の問題はどうなる?
このケースにおいて、妻がこれまで働き方を扶養内に抑えていた理由は、夫の税金面の問題でしょう。
扶養から外れることで夫の収入にかかる税金が上がり、手取りが減ってしまうので、妻はそれを防ぐために扶養内で働いていたはずです。しかし、夫が年金生活に入った後、扶養について考える必要性は、大幅に低下することが予想されます。
年金収入は令和4年度厚生年金受給者の平均でも、1月当たりおよそ14万5000円で、年換算ではおよそ174万円です。65歳以上で公的年金のみが収入の方は、158万円以上の年金収入が生じた場合に、所得税が発生します。
とはいえ諸条件によっても異なりますが、扶養を抜けて税金が発生しても、それを上回る金額分を稼ぐことはそう難しくはないでしょう。また、国民年金のみの加入者であれば扶養内に収まる可能性が高いため、他に収入がなければ所得税について気にする必要はありません。
これらを考えると、よほど高額な年金を受け取っている方や、他に収入のある方でない限り、無理に収入を扶養内に収めつづける必要はないと考えられます。
介護への一番の備えはお金の確保
正直なところ、介護に対する一番の備えはお金でしょう。介護施設を利用したり、ヘルパーの助けを借りたりすることも容易になります。
一方でお金が不足する場合は、どうしても自身が対応しなければならないことも増え、心身の負担も増加し、共倒れとなることや、利用できる介護の方法に制限がかかることもあります。
また、年金生活に入ったらすぐに介護が必要になるわけではありません。介護の準備は他にも、本人へ希望する介護方法の確認をしておくこと、利用する介護施設や医療機関の選定をすることなどがありますが、それらは仕事をしながらでも十分可能です。
それらを考えると、介護を気にしており、かつ、扶養を超えて働きたいと考えているのであれば、なおのこと扶養を超えて働く方がよいでしょう。
まとめ
夫と妻との年齢差が20歳となると、介護が不安になるかもしれません。しかし介護問題は事前に、お金の面と実際の介護の面のそれぞれから準備していくことで、乗り切ることができます。
また、介護にはお金が非常にかかります。夫の年金生活を機に、妻が扶養を超えて働きたいと思っているのであれば、将来のためにも扶養を超えて働くことをおすすめします。
出典
公益財団法人生命保険文化センター リスクに備えるための生活設計「公的年金の税金(所得税)はどうやって計算される?」
公益財団法人生命保険文化センター リスクに備えるための生活設計「介護にはどれくらいの費用・期間がかかる?」
厚生労働省 令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況
執筆者:柘植輝
行政書士