50代後半の会社員、退職金は2000万円の予定です。子どもは独立したので、これだけあれば年金だけで今までと同じような暮らしができますよね?
配信日: 2024.06.25
退職金は試算で2000万円ほど、妻は扶養内でパートをしているし子どもは独立しているので、退職金+年金で夫婦2人これまでと同じような生活ができるだろうと思っています。さて、Aさん夫婦の老後は安泰でしょうか?
男性の平均寿命81歳、女性の平均寿命が87歳として、65歳で定年退職をすると20年以上のセカンドライフを過ごすことになりそうです。主たる収入の年金と老後資金の退職金2000万円で生活が成り立つのかどうか? 検証方法の一例を紹介します。
執筆者:仁木康尋(にき やすひろ)
日本FP協会CFP(R)認定者、国家資格キャリアコンサルタント
人事部門で給与・社会保険、採用、労務、制度設計を担当、現在は人材会社のコンサルトとして様々な方のキャリア支援を行う。キャリア構築とファイナンシャル・プランの関係性を大切にしている。
支出の概算を見積もる
(1) 生活費の実態の把握
月の生活費の実態を把握します。総務省統計局が作成している家計調査年報の2023年の調査結果によると、月の消費額の平均は28万円(表1)となっています。
表1にならって、ご夫婦2人の生活費を集計して実態を把握してみましょう。
(2) 生活費以外の支出見込み額の概算を算出する
生活費以外の支出も洗い出しておきます。大きな支出となる可能性があるものとして、自宅の修繕、家電の買い替え、車の買い替え、海外旅行、施設の入居に伴うものなど、予定されているものや可能性がありそうなものについて、支出の時期と見込み額をセットで把握しておきます。
1. 子どもの結婚費用への援助
2. 孫の出産、進学に伴う支出
3. 自宅の修繕
外壁塗装
屋根の塗装
水回り交換
給湯器交換
4. 家電の買い替え
冷蔵庫
洗濯機
エアコン
5. 車の買い替え
6. 趣味・娯楽
以上で、月々の生活費とそれ以外で将来支出するものを把握することができました。
収入の見込み
つぎは、収入がどのぐらい見込めるかを把握します。
<年金収入>
退職後の生活の主な収入源は年金ですので、老齢年金の見込み額を確認すれば収入の見込みはつかめます。毎年誕生月に日本年金機構から送られてくる「ねんきん定期便」で、老齢年金の見込み額を確認できます。
また、「ねんきんネット」の利用登録をすると電子版で「ねんきん定期便」を見ることができます。ご夫婦それぞれの年金額を確認しておきましょう。
その他、厚生年金基金、確定給付企業年金(DB)、企業型確定拠出年金(DC)、個人型確定拠出年金(iDeCo)がある方はその額も確認をおきます。
検証
(1)月の収入 > 月の生活費 の場合
1. 退職金2000万円 > 生活費以外の支出 …… 問題なし
2. 退職金2000万円 < 生活費以外の支出 …… 生活費以外の支出の見直しを優先し、生活費の改善も検討する
(2)月の収入 < 月の生活費 の場合
1. 退職金2000万円 > 生活費の赤字の補填額累計(※)+生活費以外の支出 …… 問題なし
2. 退職金2000万円 < 生活費の赤字の補填額累計(※)+生活費以外の支出 …… 生活費・生活費以外の支出の双方から見直す必要あり
(※)便宜的に25年間(65歳から90歳まで)の生活費の赤字分の補填額の概算を算出します
まとめ
今回は検証の仕方の一例を紹介しました。年金受給開始の65歳まで働くことを前提にしています。お子さまが独立すると経済的な負担は減りますが、退職後の主な収入源は年金のみとなり、いままでのような生活を続けると収支がマイナスになることも考えられます。
まずは月々の収支は黒字になるように収入に見合った支出を心掛け、老後資金の取り崩しのペースを遅らせることを考えたいです。働く機会をつくって労働により収入を確保することや、老後資金を運用で増やしつつ取り崩す方法も場合によっては考えてもいいでしょう。
また、収入を増やす方法として、老齢年金の受給の開始時期を遅らせる方法もあります。例えば、受給開始を70歳に選択した場合42%増えますので、月の収支が改善されるはずです。ただし、年金を受給する70歳まで働いて生活費分を稼ぐことが前提です。
出典
総務省統計局 家計調査年報(家計収支編)2022年(令和4年)
総務省統計局 2022年(令和4年)家計の概要
総務省統計局 家計調査報告(家計収支編)2023年(令和5年)平均結果の概要
企業年金連合会 企業年金制度
執筆者:仁木康尋
日本FP協会CFP(R)認定者、国家資格キャリアコンサルタント