更新日: 2024.07.17 介護
夫婦ともに65歳です。そろそろ自分の介護が心配になりましたが、介護保険料を支払えるか心配です。地方移住も検討しています。介護保険料は全国で同じですか?
執筆者:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。
ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
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65歳以上の方の介護保険料の決まり方
介護保険料の財源は、公費(税金)と40歳以上の方が納める介護保険料で賄われています。負担割合は公費50%、40~64歳の方の保険料27%、65歳以上の方の保険料23%となっています。
65 歳以上の方の保険料は、3 年ごとに自治体が定める基準額(=介護サービスの総費用×65歳以上の方の負担分23%÷65歳以上の方の人数)に、所得段階に応じた割合を乗じて決定され、その額は自治体によって異なります。
2024年度より、今後の介護給付費の増加を見据え、65歳以上の方の間での所得配分機能を強化することで、低所得者の保険料上昇の抑制(低所得者の最終乗率の引下げ)を図るしくみが導入されました。
具体的には、国が定める標準段階(所得段階)を9段階から13段階に増やし、増やした段階の乗率を引き上げ、高所得の人の負担を増やしました。これにより、一定以上の所得がある人の介護保険料は今まで以上に引き上げられます。
例えば、第9段階(本人の前年の合計所得金額が320万円以上、410万円未満の方)の乗率は1.7ですが、第13段階(本人の前年の合計所得金額が720万円以上の方)は2.4になります。なお、第6段階以降は、本人が住民税課税の方が前提です。
一方、低所得者の見直し前の乗率は、第1段階(世帯全員が住民税非課税かつ本人の年金収入等80万円以下など)が0.3、第2段階(本人の年金収入等80万円超120万円以下)が0.5、第3段階(本人の年金収入等120万円超)が0.7となっていました。
見直し後は、第1段階が0.285、第2段階が0.485、第3段階が0.685に引き下げられました。なお、第1段階~第3段階は、世帯全員が住民税非課税であることが前提です。
65歳以上の方の介護保険料の平均は
65歳以上が支払う介護保険料は、介護保険制度が始まった2000年度は全国平均で月2911円でしたが、急速な高齢化が進むなか、第9期(令和6~8年度)は月6225円と2倍以上、さらに2040年度には月9000円程度になると推計されています。
ちなみに、第1期は2911円、第2期は3293円、第3期は4090円、第4期は4160円、第5期は4972円、第6期は5514円、第7期は5869円、第8期は6014円と介護保険料は確実に上昇し続けています。
保険者別にみると、保険料基準額の低額保険者は、第1位が東京都小笠原村で3374円、第2位が北海道音威子府村と群馬県草津町で3600円、第4位が宮城県大河原町で4000円となっています。
保険料基準額の高額保険者は、第1位が大阪府大阪市で9249円、第2位が大阪府守口市で 8970円、第3位が大阪府門真市で8749円、第4位が岩手県西和賀町で8100円と、最も高い大阪市と最も安い小笠原村では、最大で月約6000円、年間では約7万円の差になります。
まとめ
このように住む場所によって介護保険料は大きく異なります。介護が必要な高齢者が多く、介護サービスを使う人が多ければ介護保険料は高くなる傾向があります。逆の場合は安くなります。また、過疎地で介護サービスを提供する事業者が少なく、介護サービスを十分に利用できない場合も介護保険料が安くなる場合も考えられます。
もし移住を検討している場合は、単純に介護保険料を比べるのではなく、介護サービスの提供体制をしっかり調べて移住先を考えるとよいでしょう。
出典
厚生労働省 第9期介護保険事業計画期間における介護保険の第1号保険料及びサービス見込み量等について
厚生労働省 介護保険最新情報 Vol.1190
厚生労働省 第108回社会保障審議会介護保険部会の資料について
厚生労働省 介護保険計画課 全国介護保険・高齢者保健福祉担当課長会議資料
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー