更新日: 2019.01.10 介護
『相談』夫の死後、のこされた義母の介護をしなければならないの?
介護を押し付けられる不安があるかもしれません。息子の嫁と義父母との法律的な関係はどうなるのでしょうか。
Text:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。
ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
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扶養義務を負うのは誰か?
一定の範囲の親族は互いに経済的に助け合う義務(扶養義務)があります。法律上、扶養義務を負うのは、父母や子などの直系血族及び兄弟姉妹です(民法877条1項)。
ただし、直系血族及び兄弟姉妹以外でも、特別の事情がある場合には、家庭裁判所は3親等内の親族に扶養義務を負わせることができます(民法877条2項)。
3親等内の親族とは、どこまでの範囲の人を言うのでしょうか。まず、親族とは、配偶者・6親等内の血族・3親等内の姻族をいいます。血族は基本的に血で結ばれた関係、姻族は配偶者の血族、および血族の配偶者をいいます。
親等とは、親族関係の距離を表す単位のことで、本人またはその配偶者から見て、1親等は父母、子、2親等は、祖父母、孫、兄弟姉妹、3親等は曾祖父母、曾孫、おじ・おば、おい・めい、となります。
なお、本人と血族関係にある方の配偶者も同じ親等となります(例.本人と血縁関係のあるおい・めいの配偶者は3親等)。
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夫の死後も義母の扶養義務を負う?
夫が死亡しても「姻族関係終了届」を提出しない限り、義母との姻族関係は終了しません(民法728条2項)。しかし、義母とは直系血族ではないので、原則として扶養義務は負いません。
ただし、3親等内の親族関係にあるので、特別の事情が認められれば家庭裁判所により扶養義務を負わされる場合があります。民法のテキストによると、3親等内の親族は広範囲に及ぶので、よほどの事情でない限り、「特別の事情」は認められるべきではないと考えられているようです。
つまり、義母が生活に困り、義母の他の子どもや義母の兄弟姉妹も生活に困窮しているので扶養する能力がなく、一方、義理の娘に経済的な余力があったとしても、それだけでは義母を扶養する義務は課される可能性は低いといえます。
なお、同居の親族については「互いに扶(たす)け合わなければならない」(民法730条)とされていますが、道徳的な意味しかないと解されています。
扶養義務の程度は2つ
仮に、扶養義務が認められた場合、どの程度、義母を扶養しなければならないのでしょうか。
扶養義務の程度には、夫婦間や未成熟の子に対する場合のように、扶養する者の生活と同程度の扶養が求められる場合(生活保持義務)と、自分の生活を犠牲にしない程度に扶養すればよい場合(生活扶助義務)があります。
義母との扶養義務の程度は生活扶助義務です。つまり、余裕のある範囲内で義母の生活を経済的に援助してあげればよいことになります。
介護は扶養に含まれる?
扶養とは、ある人の生活を維持するために、一定の親族からなされる経済的給付をいいます。
介護は経済的給付ではありませんので扶養には含まれません。したがって、扶養義務を負っている人でも介護の義務は課されません。介護を法的に強制することはできないのです。
まとめ
夫の死後、のこされた義母の介護をしなければならない義務はありません。「特別な事情」が家庭裁判所に認められる可能性は低いですが、皆無とは言えません。
これを回避するには「姻族関係終了届」を提出する方法(いわゆる「死後離婚」)があります。これを提出すれば「3親等内の親族」でなくなるからです。
Text:新美 昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー