更新日: 2024.08.17 セカンドライフ
60歳会社員です。65歳で定年ですが、夫婦の「年金約25万円」で暮らしていけますか?年金暮らし世帯の生活費の目安を教えてください
執筆者:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。
ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
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統計で見る夫婦高齢者無職世帯の家計収支
総務省統計局「家計調査年報(家計収支編)2022年(令和4年)」の、65歳以上の夫婦のみの無職世帯(夫婦高齢者無職世帯)の家計収支を見てみましょう。
実収入(主に年金)が24万6237円(可処分所得 21万4426円)、消費支出は23万6696円となっています。つまり、毎月2万2270円(可処分所得−消費支出)の赤字です。この赤字は貯蓄から補てんしています。
実収入の約9割は年金などの社会保障給付です。この実収入から非消費支出(税金・社会保険料)を差しい引いたのが可処分所得です。
消費支出(生活費)の内訳を見ると、食料(28.6%)、住居(6.6%)、光熱・水道(9.6%)、家具・家事用品(4.4%)、被服および履物(2.1%)、保健医療(6.6%)、交通・通信(12.2%)、教養娯楽(9.0%)などとなっています。
年金で足りない分は30年間で800万円
前述のとおり、65歳以上の夫婦のみの無職世帯(夫婦高齢者無職世帯)の家計収支は、毎月2万2270円の赤字になることが予想されます。年間26万7240円、30年間では801万7200円が不足することになります。つまり、年金だけで老後を安心して暮らすことは難しそうです。
なお、データの消費支出については、老人ホームなどの介護費用や住宅リフォーム費用などの特別な支出を含んでいないことに注意してください。これら特別な支出を別途用意する必要があります。
また、今後はインフレ率も考慮に入れることが大切です。65歳時の800万円と30年後の800万円とはお金の価値が違うからです。
インフレが続けば、お金の価値は下がります。たとえば、平均インフレ率が2%と仮定すると、30年後の元本の実質的価値は約442万円です。インフレを考慮すると65歳以降に運用しないと仮定した場合、65歳時に約1449万円の金融資産を用意しておく必要があります。
ただし、同調査年報(貯蓄・負債編)によると65歳以上世帯のうち「2人以上世帯」の貯蓄額平均は2359万円となっていますので、平均的には、そんなに心配する必要はないかもしれません。
統計データは目安にすぎない
総務省統計局「家計調査年報(家計収支編)」を見ると、調査を行う時期によって、不足額が異なります。
夫婦高齢者無職世帯の家計収支(毎月)は、2017年度は5万4519円(赤字)、2018年度は4万1872円(赤字)、2019年度は3万3269円(赤字)、2020年度は1111円(黒字)、2021年度は1万8525円(赤字)、2021年度は2万2270円(赤字)となっています。
2017年度の不足分と2022年度の不足分とでは3万2249円の差があります。30年間では約1161万円の差になります。
まとめ
老後の生活が不安に思う方は、貯蓄、退職金や年金がいくらもらえるのかわからない、毎月の支出の内訳を知らない、という方が多い印象を受けます。
大切なことは、わが家の実際の資産額や家計収支を明らかにすることです。収入(年金)は、ねんきん定期便でわかります。生活費は、家計簿ソフトなどで支出項目と金額を入力し現状を確認しましょう。固定費を中心に無駄な項目があればメスを入れて、家計をスリム化することをおすすめします。
年金収入の範囲内で支出を賄えられれば、退職金を介護など特別な支出のためにとっておくこともできます。赤字が出ても心配いりませんが、年金や貯蓄の範囲内で生活できない場合は働くことも検討しましょう。
出典
総務省統計局 家計調査年報(家計収支編)
金融庁 金融審議会 「市場ワーキング・グループ」報告書の公表について
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー