更新日: 2024.10.31 定年・退職
夫が定年で「退職金2000万円」を手にしました。「銀行で投資で増やすようすすめられた」と言っていますが、大丈夫なのでしょうか? 貯めておくほうが安全ではないのですか?
しかし、多くの人にとっては、このような大金を一気に手にする機会はあまりないため、どのように使っていいのか悩ましいものではないでしょうか。金融機関などから投資を進められると、さらに迷ってしまう人もいるかもしれません。
そこで本記事では、60歳で退職金2000万円が支給された際に、投資に回すべきなのか解説します。また、2000万円の使い道の例についても紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
執筆者:松尾知真(まつお かずま)
FP2級
退職金2000万円は投資に使うべきなのか?
退職金2000万円を投資に使うかどうかは、老後資金の準備状況や今後の働き方、予定される年金受給額、思い描く老後の生活など、個人の資産状況や生活の趣向によって変わります。
また、退職金のうちどれくらいを投資に充てるかについても、一概には結論づけられません。退職金を原資とした投資に失敗すると、若い人に比べ損失を取り戻す時間が少なく、老後の生活への影響が大きくなってしまいます。
一方、投資や資産運用をおこなわないことにもリスクがあります。例えば、退職金を全て貯蓄に回せば、元本割れしないかわりにインフレなどで実質の資産価値が下がり、資産が目減りしてしまうリスクがあるでしょう。
十分な老後資金を確保し、生活費を上回るような年金を受給できる人は別ですが、老後資金に不安があれば、資産を長持ちさせるため投資が必要かもしれません。多くの人が年金だけでは生活費を賄えず、インフレが顕在化している昨今の状況を考えれば、投資を含めた資産運用の重要性はさらに増すとも考えられます。
退職金を投資に回す場合は、長期・分散・積立の手法を基本としつつ、資産全体では預貯金や債券といった安全資産の比重を増やすなど、リスクを抑えた運用が必要です。60歳だと長期の投資は難しいと考えがちですが、認知症リスクを考慮しても75歳ぐらいまで15年程度の投資期間は確保できるのではないでしょうか。
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退職金2000万円の使い道は?
では、退職金はどのように使われているのでしょうか? 一般財団法人投資信託協会が2022年に行った「60歳代以上の投資信託等に関するアンケート調査」から、退職金がどのように使われているか見てみましょう。
まず、退職金の使い道を見ると、預貯金が59.3%、日常生活費への充当が25.6%、旅行等の趣味21.7%、住宅ローン返済20.8%、金融商品購入が20.3%などとなっています。この結果を見ても分かるように、預貯金に充てる人が圧倒的に多いものの、住宅ローンなどの負債を先に解消する人に加え、金融商品などで投資している人も一定数はいるのです。
また、購入した金融商品(購入予定も含む)の内訳を見ると、主なもので株式59.5%、投資信託57.8%、外貨建て商品19.5%、国内債券19.3%となっています。
一言で投資といっても、図表1のとおり金融商品の中には安全性が高いものから、比較的リスクが大きいものまで、数多くの商品があり、バリエーションも豊富です。
図表1
金融庁 資産形成の基本
そこで退職金の使い道の例として、2000万円のうち月4万円×12ヶ月×15年=720万円を原資にして、NISA口座も活用しリスク資産の投資信託で15年間の積立で投資してみましょう。残りは安全性を重視し、個人向け変動10年国債で500万円運用し、65歳までは再雇用で働く前提で、780万円を65歳以降の生活費と年金の差額の補填(ほてん)用に貯蓄しておきます。
まず、NISA口座での積立投資は、5%の利回りで運用できれば、図表2のとおり720万円の元本に349万円の運用益が加わり、75歳時点の運用資産額は1069万円です。
図表2
金融庁 つみたてシミュレーター
500万円の個人向け国債は、現状は年間2万円程度の利子しか受け取れませんが、今後金利が上昇し利子が増える可能性もあり、普通預金利息に比べれば小遣い稼ぎ程度にはなるでしょう。このように、貯蓄だけで一切投資しない場合よりも、投資によって資産を長持ちさせたり、有効に活用したりすることは可能です。
ただし、これは1つの運用例に過ぎず、利回りが想定に届かなかったり、元本割れしたりするリスクはあります。いずれにしても、貯蓄と投資などで資産のバランスを取り、リスクも考えて効率的に組み合わせ、退職金などの資産寿命をできるだけ長く維持することが大切です。
まとめ
60歳で退職金が2000万円支給された人が、退職金を投資に回すべきか、退職痕はどのように使われているかや使い道の例を紹介しました。多額の退職金が手に入ったからといって、年齢やリスクを考慮せず投資するのは危険です。一方で、貯蓄だけだと資産が目減りしてしまうリスクも無視できません。
退職金を投資に回すかどうかは、各家庭の資産状況や投資のリスクを把握し、老後の生活設計も踏まえて考えることが大切です。まずは、老後の暮らしを想像した上で、投資が必要かどうか考えてみてはいかがでしょうか。
出典
金融庁 投資の基本
金融庁 つみたてシミュレーター
一般財団法人投資信託協会 60歳代以上の投資信託等に関するアンケート調査報告書-2021年(令和3年)
執筆者:松尾知真
FP2級