更新日: 2019.06.28 介護
働けなくなった場合の備えとは?医療・介護・障害の公的扶助について
亡くなる寸前まで元気でいることは理想ですが、理想の形から外れてしまった場合、収入は減少し、医療・介護費に大きな費用が必要となります。
このような事態に備える公的扶助として、公的介護保険や健康保険の高額療養費制度が有名ですが、そのほかにはどのような制度があるのでしょうか。万が一の際に安心して治療に専念できるよう、利用できる公的扶助を紹介させていただきます。
執筆者:菊原浩司(きくはらこうじ)
FPオフィス Conserve&Investment代表
2級ファイナンシャルプランニング技能士、管理業務主任者、第一種証券外務員、ビジネス法務リーダー、ビジネス会計検定2級
製造業の品質・コスト・納期管理業務を経験し、Plan(計画)→ Do(実行)→ Check(評価)→ Act(改善)のPDCAサイクルを重視したコンサルタント業務を行っています。
特に人生で最も高額な買い物である不動産と各種保険は人生の資金計画に大きな影響を与えます。
資金計画やリスク管理の乱れは最終的に老後貧困・老後破たんとして表れます。
独立系ファイナンシャルプランナーとして顧客利益を最優先し、資金計画改善のお手伝いをしていきます。
代表的な公的扶助の種類について
病気やけがによる収入途絶や就業不能は人生における大きなリスクです。
代表的な公的扶助として、健康保険、介護保険、障害認定、障害年金などがあります。年齢や加入している健康保険の種類によって利用できる公的扶助が異なりますので、これらの制度と特徴について把握することが大切です。
・公的医療保険
日本では皆保険制度が採用されており、国民健康保険や健康保険、75歳に達した場合は後期高齢者医療制度などの医療保険制度に加入することとなります。
医療保険は通院・治療などの定められた治療行為に関し、自身や世帯の収入に応じて治療費の自己負担額に上限が定められています。しかし、差額ベッド代などの対保険対象外となる費用や、業務に起因する事故(労災事故)や交通事故などの第三者に起因するけがや、喧嘩などの犯罪行為によるけがに関しては利用することができません。
・公的介護保険
65歳以上の場合は原因を問わず利用することができますが、40歳以上65歳未満は、加齢に起因する特定疾病(末期がん・脳血管疾患など)によって、独力では日常生活を送ることが困難となった場合にのみ利用することができます。
要介護・要支援の等級に関しては市町村へ申請のうえ、被保険者・主治医への面談などを経て決定されます。おおよそ30日程度の日数を要するため、早目の申請が大切です。
介護の内容は、被保険者の状況によって個人差が大きくあります。症状に合わせたケアプランを作成し、特養老人ホームなどの施設サービスと訪問介護・リハビリテーションなどの居宅サービスについて、公的医療保険制度と同様に自己負担額の上限を定めることができます。
・障害者手帳の取得
病気やけがなどにより一定の身体・精神状態となった場合に、市町村に申請・認定を受けることにより障害者手帳の交付を受けることができます。
障害者手帳は、税金の軽減や公共交通機関の割引のほか、障害者枠で雇用される際には必須となります。経済的負担を減らし、生活を立て直す大きな原動力となりますが、介護保険の介護・支援認定よりも認定基準が厳しく、介護保険の要介護者となっていても申請が却下されることもあります。
・障害基礎年金など
国民年金や厚生年金の被保険者が、原則として初診日から1年6ヶ月を経過したとき、厚生労働省が定める障害等級1級と2級(障害厚生年金の場合は3級を含み、またそれ以下の等級の場合でも一時金を受け取れる)に認定された場合に、給付を受けることができます。
ただし、両目の失明や胸部・腹部の臓器に常時介護が必要な障害を負う必要があるなど、認定はさらに厳しくなっています。確実に認定を得るためには、専門家である社会保険労務士を介在させることをお勧めします。
給付金額に関しては認定される障害等級などによって異なりますが、一例として2018年の障害基礎年金2級の場合は、年額77万9300円+18歳未満の子の加算となります。
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医療費と介護費の合算制度
医療費と介護費には、それぞれの保険制度によって自己負担上限額が定められています。
しかし、病気と介護状態が長期化してしまった場合、この自己負担額の上限額でも大きな経済的負担となります。こうした場合に備え、被保険者が同一世帯で同一の医療保険であれば「高額医療・介護合算制度」を利用することができます。
課税所得が156万円~370万円の世帯であれば、合算後の上限額が年間56万円となります。仮に1年間の医療費の額が57万2400円、介護費が53万2800円の合計110万5200円であった場合、本制度を利用できれば56万円-110万5200円=-54万5200円となり、還付を受けることができ、長期の介護・療養に関する経済的負担を軽減することができます。
まとめ
医療技術の発展により、以前であれば助からなかったような病気やけがを負っても、社会復帰できることが多くなってきました。それと同時に、医療制度に関する知識と、必要な資金の確保の重要性は増してきています。
今回紹介した代表的な公的扶助制度を踏まえたうえで、その不足分を、貯蓄や民間の医療保険で補えるよう準備していきましょう。
執筆者:菊原浩司(きくはらこうじ)
FPオフィス Conserve&Investment代表