年金の平均額が月5万円という記事を見ました。定年まであと10年ありますが、貯金を切り崩しても毎月5万円では足りません…。どうすれば余裕のある生活を送れるのでしょうか?
配信日: 2025.01.07 更新日: 2025.01.08
本記事では、「本当に年金の平均額は月5万円なのか?」「余裕のある生活を送るにはどうしたらよいか?」について解説します。記事(インターネット)などの情報で不安になってしまった方でも落ち着けるような内容になっていますので、ぜひ最後までお読みください。
執筆者:中村将士(なかむら まさし)
新東綜合開発株式会社代表取締役 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R)(日本FP協会認定) 宅地建物取引士 公認不動産コンサルティングマスター 上級心理カウンセラー
私がFP相談を行うとき、一番優先していることは「あなたが前向きになれるかどうか」です。セミナーを行うときに、大事にしていることは「楽しいかどうか」です。
ファイナンシャル・プランニングは、数字遊びであってはなりません。そこに「幸せ」や「前向きな気持ち」があって初めて価値があるものです。私は、そういった気持ちを何よりも大切に思っています。
年金の平均額は月5万円なのか?
「年金の平均額が月5万円という記事」の内容は、おそらく「年金受給額の平均は、国民年金のみの場合は月5万6428円」という趣旨のものでしょう。これにより「年金額の平均額が月5万円」と思われたのではないでしょうか。
この金額(月5万6428円)の根拠は、厚生労働省の「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」です。これによると、令和4年度の国民年金で老齢年金受給者の平均年金月額は、5万6428円となっています。しかし、ここで注意しなければならないのは、この金額は「受給資格期間を原則として25年以上有する」方を対象に算出した金額だということです。
令和6年4月分からの老齢基礎年金の満額は、81万6000円(月6万8000円)です。老齢基礎年金は、国民年金保険料の納付済み月数に応じて受給額が異なります。国民年金の被保険者期間(20歳から60歳までの40年間)の保険料を全て納付すると、満額の老齢基礎年金を受け取ることができます。
したがって、「自分は老齢基礎年金をいくら受け取れるのか」を考える際は、先述の平均額(月5万6428円)を参考にするより、ご自身が保険料をどれだけ納付しているかを考慮したほうがよいでしょう。例えば、以下の条件で考えてみます。
●定年まであと10年
●定年を60歳とする
●これまでの30年間の国民年金保険料は全て納付している
このとき、残り10年間の国民年金保険料を全て納付すれば、老齢基礎年金を満額受け取ることができます。一方、仮に残り10年間の国民年金保険料を全く納付しなかった場合、受け取れる老齢基礎年金の額は満額の75%(納付済み月数360月÷加入可能月数480月)になります。
この場合の年金額を令和6年4月分からの年金額に置き換えてみると、61万2000円(月額5万1000円)となります。
余裕のある生活を送るにはどうしたらよいか?
「年金額が月5万円では足りない」というところから、「年金額を増やせないか」ということについて考えてみます。
「老後資金をためるために資産運用をする」ということも考えられますが、「定年まであと10年」であることから、元本割れのリスクをなるべく避けたほうがよいと考え、本記事では取り上げないこととします(資産運用を否定するわけではありません)。
先述のとおり、令和6年4月からの老齢基礎年金は、満額で81万6000円(月額6万8000円)です。したがって、老齢基礎年金の満額を受け取れるようにするだけで、年金額を月5万円から増やすことができます。そのためにすべきことは、国民年金保険料を全て納付することです。
ご自身が会社員や公務員である場合は、老齢基礎年金に加え老齢厚生年金を受け取ることができます。
先述の厚生労働省「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、老齢厚生年金(老齢基礎年金を含む)の受給者の平均年金月額は14万4982円です。
老齢厚生年金の年金額は年収(保険料の納付額)に応じて異なるため、一概に金額を示すことはできませんが、「ねんきん定期便」を参照することで、ご自身が将来どのくらい年金を受け取ることができるかを想定することはできます。
ご自身が国民年金の第1号被保険者である場合、付加年金への加入を検討してみるのもよいでしょう。
付加年金とは、国民年金に上乗せする年金のことで、国民年金の第1号被保険者や任意加入被保険者が加入することができる年金のことです。付加年金に加入した方は付加保険料(月額400円)を納付することにより、付加年金の年金額として「200円×付加保険料納付月数」を老齢基礎年金に上乗せして受け取ることができます。
その他、私的年金制度である個人型確定拠出年金(iDeCo)制度を利用することも考えられます。個人型確定拠出年金の運用に当たっては、ご自身で運用方針・運用商品を選ぶ必要があります。「定年まであと10年」ということを考慮すると、元本保証型商品などリスクの低い商品を選択されるのが無難ではないかと思います。
まとめ
年金の平均額は、確かに月5万円ほど(正確には5万6428円)でした。しかし、この金額は老齢基礎年金において「受給資格期間を原則として25年以上有する」方を対象に算出した金額であり、参考にすべきではないでしょう。
参考にすべきでない理由は、以下のとおりです。
●国民年金が一部未納である方の年金額も計算に含まれている
●厚生年金保険(老齢厚生年金)の金額は含まれていない
年金額を「月5万円以上」にすることも、難しいことではありません。
令和6年4月分からの老齢基礎年金の満額は、81万6000円(月6万8000円)です。満額受け取るために必要なことは、国民年金の被保険者期間(20歳から60歳までの40年間)の保険料を全て納付することです。
厚生年金保険に加入していた期間がある方は、受給要件を満たすことで老齢厚生年金を受け取ることができます。国民年金の第1号被保険者である方は、付加年金に加入することで、将来受け取れる年金額を増やすことができます。その他、個人型確定拠出年金制度を利用することで、老後資金を作ることもできます。
「余裕のある生活」というのは個人の主観なので、本記事で紹介した対策で実現できるかは、正直なところ分かりかねます。しかし、定年まであと10年だとしても、何かしらの対策を取ることは可能です。
「年金の平均額が月5万円」と聞いて不安になった方も、本記事を読むことで少し落ち着くことができたのではないでしょうか。本記事が老後の生活設計の参考になれば幸いです。
出典
厚生労働省 令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況
日本年金機構 老齢基礎年金の受給要件・支給開始時期・年金額
日本年金機構 付加年金
国民年金基金連合会 iDeCo公式サイト iDeCoってなに? iDeCo(イデコ)の特徴
執筆者:中村将士
新東綜合開発株式会社代表取締役 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R)(日本FP協会認定) 宅地建物取引士 公認不動産コンサルティングマスター 上級心理カウンセラー