老後破綻の記事を読み「自分は大丈夫か?」と心配になりました。定年まで残り3年、老後の備えとしてできることはありますか?

配信日: 2025.02.20

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老後破綻の記事を読み「自分は大丈夫か?」と心配になりました。定年まで残り3年、老後の備えとしてできることはありますか?
会社勤めで定年が間近になると、いよいよ老後の生活が現実味を帯びてきます。問題なく暮らしていけるのか、不安になる人もいるかもしれません。定年後の暮らし方は人それぞれですが、本記事では老後に向けて最低限確認したい、もしくは考えておきたい、3つの点を提案します。
小山英斗

執筆者:小山英斗(こやま ひでと)

CFP(日本FP協会認定会員)

1級FP技能士(資産設計提案業務)
住宅ローンアドバイザー、住宅建築コーディネーター
未来が見えるね研究所 代表
座右の銘:虚静恬淡
好きなもの:旅行、建築、カフェ、散歩、今ここ

人生100年時代、これまでの「学校で出て社会人になり家庭や家を持って定年そして老後」という単線的な考え方がなくなっていき、これからは多様な選択肢がある中で自分のやりたい人生を生涯通じてどう実現させていくかがますます大事になってきます。

「未来が見えるね研究所」では、多くの人と多くの未来を一緒に描いていきたいと思います。
https://miraiken.amebaownd.com/

1. 家計状況を定期的に確認する習慣をつける

現在の家計状況が把握できていないなら、収支と資産を洗い出すことから始めましょう。そして、定年前に家計状況を定期的に確認する習慣をつけておくことが大切です。現状が分かることで、見直すべきことも見えてきます。
 

収入と支出を収支表にまとめる

収入や支出を、収支表に洗い出してみましょう。収支表には、1年間分の収入と支出をまとめます。収支表を作成することで、以下のことが確認できます。

●収入の範囲内で生活ができているかどうか
●お金をかけ過ぎていることがないか
●利用していないサブスクなど、無駄な支出がないか
●将来必要となる支出の蓄えができているかどうか
●お金の使い方の傾向

「収入」は、手取り収入を把握します。「手取り収入」は会社員の場合、給与から社会保険料や所得税・住民税を引いた残りの、自由に使えるお金です。「支出」は費目ごとに分けて、毎月の支出や、年に数回の支出があるものを洗い出していきます。
 
収支表のサンプルは、図表1のようなものです。日本FP協会のホームページから、ダウンロードできます。
 
図表1

図表1

出典)日本FP協会 便利ツールで家計をチェック
 
お金の使い方の傾向を把握して、定年前には無駄な支出などの見直しや、大事にしていることにいくらまでお金をかけるかの検討を始めましょう。今は、家計管理がスマホで容易にできるアプリなどもありますので、アプリの使い方も勉強して活用してみてください。
 

資産や負債をバランスシートにまとめる

定年後に年金収入だけとなったときに、年金収入だけでは足りない分は、貯蓄からカバーする必要があります。そのため、定年前に資産や負債の状況を洗い出し、把握しておくことは大切です。また、定年後も最低でも年に1回は、資産や負債の状況の確認を継続するようにしましょう。
 
資産や負債の状況を把握するためには、家計のバランスシートを作成します。バランスシートにまとめることで、資産から負債を引いた純資産(本当の資産)も分かります。収支表のサンプルは、図表2のようなものです。こちらも、日本FP協会のホームページからダウンロードできます。
 
図表2

図表2

出典)日本FP協会 便利ツールで家計をチェック
 

2. 老後のライフイベントを確認する

厚生労働省の「簡易生命表(令和5年)」によれば、現在65歳の人の平均余命は男性が19.52年、女性が24.38年となっています。定年を65歳として、その後の人生は20年ほどあることが分かります。老後も長い人生のなかでは、さまざまなライフイベントが起こることも考えられます。
 
老後に特にお金がかかるライフイベントを例としてあげると、以下のようなものがあります。

●定期的な旅行など、趣味にかけるお金
●家のリフォームや建て替えにかけるお金
●車の買い替えにかけるお金
●施設に入居するのにかかるお金
●子どもの結婚などのお祝いにかけるお金
●親の介護にかけるお金

家庭によって起きる、もしくは起こしたいライフイベントは異なりますが、特にお金のかかるライフイベントを事前に検討しておくことは大事です。一般的に、定年後は現役時代より収入が下がりますので、老後生活費以外に貯蓄(現金化しやすい金融資産など)からカバーする費用を確認しておく必要があります。
 
ライフイベントを検討する際には、ライフイベント表を作成するのが有効です。ライフイベント表のサンプルは、図表3のようなものです。こちらも、日本FP協会のホームページからダウンロードできます。
 
図表3

図表3

出典)日本FP協会 便利ツールで家計をチェック
 

3. 老後の収支を計画する

現状の家計状況と将来のライフイベントが確認できたら、老後の収支を計画しましょう。また、老後の貯蓄推移も確認します。
 

収支表を使って収支の予算を立てる

定年以降は、働かなければ基本的な収入は年金となります。定年間近の人であれば、誕生月に日本年金機構から「ねんきん定期便」を受け取っているかと思われます。ねんきん定期便を確認すれば、65歳からもらえる年金額が、いくらぐらいになるのかが分かります。
 
年金収入だけで生活費がまかなえるかどうか確認するためにも、まずは「支出の予算化」を検討しましょう。現状の家計状況を確認した収支表を参考にして、定年後、どの費目にどれくらいのお金をかけるのか、予算化した支出一覧を作成します。
 
予算を立てた支出に対して、年金収入だけでカバーできないのであれば、以下の3つについて検討します。

●年金では足りない分をいつまで働き続けることでいくら補うか
●年金では足りない分をどう金融資産を取り崩して補うか
●支出を抑えることができる費目はないか

 

老後の金融資産の推移(貯蓄残高)を確認する

老後生活の収支や発生するライフイベントにかかる費用の予算を立てたら、それをキャッシュフロー表に落とし込んで、金融資産の推移(貯蓄残高)を確認します。キャッシュフロー表のサンプルは、図表4のようなものです。こちらも、日本FP協会のホームページからダウンロードできます。
 
図表4

図表4

出典)日本FP協会 便利ツールで家計をチェック
 
人生100年時代といわれていますが、今は「長生き」も家計にとってリスクのひとつとなることもあります。年金収入だけでは支出をカバーできない場合、金融資産を徐々に切り崩して年金の不足分を補う必要があります。しかし、金融資産が早い段階で枯渇してしまうと、生活が行き詰まってしまう場合もあります。
 
定年時に退職金がある場合は、老後の大事な金融資産の一部となります。退職金がいくらぐらいになるのか、定年前に確認しておきましょう。
 
また、金融資産を長持ちさせるためには、老後であっても一部資金を投資で運用し続けるのも有効です。ただし、リスク許容度や生活費への影響を十分に考慮する必要があります。そのうえで、運用について検討することが大事です。
 
キャッシュフロー表を作成しながら、少なくとも90歳ぐらいまでは金融資産が枯渇しないように、老後の収支を検討・計画できれば安心でしょう。
 

まとめ

定年後の老後の生活を安心して迎えられるように、本記事では定年前から検討・確認できる方法を提案してきました。実は、提案してきたことは「ライフプランニング」と呼ばれる「生活設計」の基本的な流れです。
 
ライフプランニングでは、さまざまなことに関するいろいろな視点からの検討が必要となってきます。自分一人では検討が難しい場合は、ファイナンシャルプランナーといった専門家に相談するのもよいでしょう。
 

出典

日本FP協会 便利ツールで家計をチェック
厚生労働省 令和5年簡易生命表の概況
 
執筆者:小山英斗
CFP(日本FP協会認定会員)

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